秋田オービス公訴棄却判決「あれは誤判だ」と三菱電機も言い続けるのか
私は「東京簡裁の道路交通法違反事件をぜんぶ傍聴してやろう!」と東京簡裁へ通い詰めている。同じビル内にある東京地裁、東京高裁ほか、他県の裁判所へも行く。この金曜は岐阜県の中津川簡裁へ行く予定だ。
3月11日(金)現在で、エクセルに入力済みの事件は387件。そのうち261件が道路交通法違反で、さらにそのうち129件が自動速度取締機、いわゆるオービスによるものだ。
「検察統計年報」で、交通法違反(「自動車の保管場所の確保等に関する法律」違反を含む)の04年の全国のデータを見ると、略式命令請求61万2337人、公判請求1万1946人、不起訴12万5487人。
公判請求の内訳は、地検が1万1537人、区検が409人。区検のうち東京区検が33人。
33人というのは、全国の区検でトップだ。2位はさいたま区検で14人、3位は神戸区検で10人。
3月14日に仙台地裁秋田支部で、原判決破棄、公訴棄却の逆転判決を受けた男性は、一審・秋田簡裁で罰金6万円の有罪判決を受けていたという。
「検察統計年報」で秋田区検を見ると、
略式命令請求 公判請求 不起訴
06年 2168人 1人 523人
05年 1822人 1人 389人
ただ、東京地検で聞いたところによると、この「公判請求」には「略式→正式」を含まないという。
今回の男性は、いったん略式に応じてから、正式裁判を請求したそうだ。
だから、男性は統計上は「略式命令請求」のほうに含まれるわけだね。
なーんてマニア以外にはどうでもいい話はさておき、仙台高裁秋田支部の判決である。
最高裁のホームページで、「裁判手続:刑事事件について→証拠調べ手続き」をクリックすると、こう明記されているのに出くわす。
刑事事件においては,「疑わしきは被告人の利益に」の原則が貫かれていますから,まず,検察官が,証拠によって公訴事実の存在を合理的な疑いを入れない程度にまで証明するための立証活動をしなければならないわけです。
検察官側の立証に続いて,反対当事者である被告人側の立証が行われます。この立証は,裁判官に対して,公訴事実の存在につき,検察官の立証が合理的な疑いを入れない程度にまでは証明されていない,と考えさせるだけで十分であり,それ以上に,公訴事実が存在しないことまで証明する必要はありません。
オービス裁判における検察立証は、ぜーんぶメーカー作成の書類とメーカー社員の口先だけの証言だ。客観的な裏付け・データは一切ない。
そんなの、「合理的な疑いを入れない程度にまで証明するための立証活動」とは到底いえない。
しかし、それでも有罪とされ続けてきたのが、オービス裁判なのだ。
という話もさておき、車の速度メータにたとえれば、今回の判決は、
「メータの針は、絶対マイナス側にしか振れない。プラス側には絶対振れない」
とメーカーが言うのに対し、
「プラス側に振れる可能性もある」
ということで、反則・非反則の手続き上のことで公訴棄却にしたわけだ。
こういうのは、追尾式のスピード違反事件ではよくある。
測定値が、反則行為(超過30㎞/h未満、高速道路等では超過40㎞/h未満)をちょっと超えるだけの事件は、公訴棄却にしやすいといえる。
まあ、全部機械任せ(したがって機械は無謬であることが絶対必要)なオービスと、人間の感覚や動作に頼る追尾式とでは、その重みはだいぶ違うけれども。
だが、私は思うのだ。
メータの針がどれくらい振れるか、というのは、測定センサー(本件ではレーダ)がどうこうの話にすぎない。
オービスは、速度メータにたとえるなら、デジタルメータだ。
私はメカのことはよくわからないが、速度メータがタイヤの回転から速度を拾うとしてだよ、
「タイヤの回転から拾ったのとは違う数字を、どこでどう拾ったのか、デジタルメータが表示しちゃう」
そういうことがどうもあるんじゃないかと、多数のオービス裁判を傍聴し、傍聴席で「う~ん」とうなり続けてきた私は、思うのだよぅ。
デジタルメータが、タイヤの回転から拾った速度を、間違いなく表示するのか。
他の何かを拾って表示する可能性は絶対にないのか。
そこもまた、客観的な裏付け・データは一切ない。
もしも、そのことを理由とした公訴棄却判決なら、オービス無謬(むびゅう)神話にとって壊滅的打撃だが、上記「針の振れ」なら、メーカー(本件では三菱電機か)は、
「あれは誤判だ。あの裁判では検察が出さなかったが、プラスに振れないことは確認されているのだ」
と言いやすいんじゃなかろうか…。
なんにせよ、たいへんな判決が出たもんだ。判決書きを早く読みたい。
※秋田魁新報「測定装置に疑義、公訴を棄却/速度違反控訴審、高裁秋田支部が判決」
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