仙台高裁秋田支部「客観的裏付けがない」と公訴棄却!!
ようやく少し時間ができたので「オービス裁判の手引」(仮題)をしこしこ書き始め、風呂に入ってPCに向かったら、いろんな方から同一内容のメールあり。ええっ!? ととっとんでもないことになりましたな!!
速度違反:オービスは不正確と簡裁判決破棄 仙台高裁秋田
乗用車で制限速度を32キロ超過したとして、道交法違反罪で秋田簡裁から罰金6万円の有罪判決を受けた秋田県男鹿市の自営業男性(40)の控訴審判決が14日、仙台高裁秋田支部であった。畑中英明裁判長は「自動速度取り締まり装置(オービス)が被告人の車両の速度を正確に測定していたとはいえない」などとして簡裁判決を破棄し、検察側の公訴を棄却した。
男性は04年8月、同県潟上市内の制限速度60キロの県道を92キロで走行したとするオービスの記録から県警の取り調べを受けたが、出頭を拒否し05年1月に逮捕された。簡裁判決後、男性は「オービスを知っており、通常80キロ程度で走行していた」と控訴していた。
判決で畑中裁判長は「(同装置の資料に)測定値にはマイナス誤差しか生じないことを意味する記載があるが、根拠となるデータが示されていない」と指摘。「被告人が90キロ未満で走行していたのではないかという疑いが残る」と述べた。
速度違反は一般道で超過速度30キロ未満の場合は反則金を納付すれば処分が終了するが、30キロ以上の場合は罰金などの刑事処分を受ける。 【馬場直子】
毎日新聞 2006年3月14日 20時42分 (最終更新時間 3月14日 21時54分) ※太字は今井
『別冊ベストカー 全国オービス&ネズミ捕りマップ完璧ガイド』を見ると、「潟上市内」のオービスは、寺澤オービス事件の三菱RS-2000(俗称・新Hシステム)によく似ている。ストロボ、アンテナ、カメラのレイアウトがちょと違うが、三菱電機の商品で間違いないだろう。
ちなみに、上掲記事の「(同装置の資料に)」という部分、2ちゃんねるの引用記事では「(同装置を製作した三菱電機の資料に)」となっている。投稿者がわざわざマニアックな改ざんをしたとも考えにくい。毎日新聞が三菱電機に配慮してあとから削ったんだろうか。
「無罪」ではなく「公訴棄却」だという。それはね、こういうわけだ。
1、超過30㎞/h未満の場合、反則通告をしてから(つまり反則金を払うチャンスを与えてから)でないと、刑事事件として扱えない(道路交通法130条)。
2、測定にプラス誤差があった(=超過30㎞/h未満だった)可能性がある。
3、そうすると本件は、反則通告なしに刑事事件として扱ったことになる。
4、公訴の手続きに違法があることになるので、公訴は棄却する。
ま、実質的には無罪と同じだ。
問題は、公訴棄却の理由である。
(同装置の資料に)測定値にはマイナス誤差しか生じないことを意味する記載があるが、根拠となるデータが示されていない。
朝日新聞の報道では、こうなっている。
プラス誤差がないという客観的な裏付けがない。
そぉーなのよ!
私の表現でいえば、写真に焼き付けられた測定値が、被告人車両の実測度よりプラスになること、つまり「プラス表示」なんだけども、オービス事件における検察立証は、
1、メーカーが作成した、オービスは間違いないという書類
2、メーカーが作成した、点検で正常だったという書類
3、メーカーの社員(全国の裁判所を、旅費日当、裁判所または被告人持ちで飛び回っている特定の社員)の、「我が社のオービスにプラス誤差はない」という証言
4、たまに、メーカーが自分たちで行った実験結果の書類
それだけなのだ。
「客観的な裏付け」なんてものは、私がもう口を酸っぱくして言ってきたように、一切ないのだ。
それでも有罪とされ続けてきたのが、オービス裁判なのだ!
じゃあ、畑中英明裁判長は、なんで公訴棄却としたのか。
ふり返れば、これまでの被告人・弁護人はだいたい、「プラス誤差はあり得る」ことを立証しようとしてきた、といえるだろうか。
だが、それはすべて、メーカー社員の「我が社の商品は優秀でして、そのへんも大丈夫です。これこれの機能になっております」という(当然、なんの客観的裏付けもない)証言に阻まれてきた。
仮に「プラス誤差の可能性はあり得る」ことがわかっても、「それが本件測定において起こったか」という大きなハードルがあった。
「客観的な裏付けがない」という点については、
「もしも、それを理由に無罪(または公訴棄却。以下同)とすれば、他のすべてのオービス事件も無罪になる。オービスの取り締まりは成り立たなくなる。そんな判決を裁判所が書けるはずがない」
と、被告人・弁護人の側は消極的だったようだ。
ところが今回、報道を読む限りでは、「客観的な裏付けがない」という、オービス裁判の根幹、フーテンの寅さんいわく「それを言っちゃっちゃぁオシマイよぉ」の論点を突っ込んだのだろうか。
でも、ただ突っ込んだだけでこんな判決が出るとは思えない。被告人、弁護人がいるなら弁護人、裁判官の個性が関係したんだろうと想像する。
相手が聞いてくれるはずがないと思っても、いちばん大事なことは、言っていくしかないんだなあ。と、報道を見ただけで興奮し、勝手に人生訓を導き出してしまう私なのであった(笑)。
さて、検察側はどうするのか。これが地裁・簡裁判決なら、高裁でひっくり返すのは簡単だろうが、本件は高裁判決だ。
まあね、東京航空計器のオービスⅢは、大阪高裁で無罪が確定しているけれども、その後の法廷でメーカー社員は「あれは誤判だ」とうそぶいている。
三菱電機も、その線でいくのか。
しかし! 今回の判決は「客観的な裏付けがない」を理由にしている。ズバリ本質を突いているのだ。
今後のどの裁判でも、客観的な裏付けなど出せっこないだろう。学者(博士)を呼べば、寺澤オービス事件のようになってしまう(大槻義彦教授のブログ参照)。
そして、「客観的な裏付けがない」のは、東京航空計器も同様だ!
現在、東京簡裁では複数件のオービス裁判が進行している。中津川簡裁でも。他の裁判所でも。
今回の仙台高裁秋田支部の判決は、どう影響するのか。
いやはや、とんでもないことになったよぅ!
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