悪質な違反のみを取り締まり…
相変わらず、PCがときどき固まる。PCとはこんなものか、と思ってる。だめ?
強制再起動して立ち上がるまでの暇つぶしに、先日ふと書棚から引っ張り出した『講座 日本の警察 第三巻 交通警察』(立花書房・92年10月20日初版1刷)をぱらぱらめくってる。
編者は、
河上和雄 弁護士、前最高検察庁公判部長
国松孝次 警察庁刑事局長
香城敏麿 大分地方裁判長
田宮 裕 立教大学教授
という分厚くて高価な、しかしわかりやすい本だ。
※ 肩書きは91年8月現在のものだという。
そのなかの、「交通指導取締りに関する法律上の諸問題」という章。
執筆者は、八代隆義・警察庁都市交通対策課長(91年8月当時)。
その「第三 実質的違法性をめぐる問題」の、「三 可罰的違法性」という項の2つの段落を、長いけど引用しよう。
文中に出てくる「②」とは、つまり、「最高速度違反(又は駐車違反)を抽象的危険犯又は形式犯としながらも、当該行為の違法性の微少な点をとらえ、いわゆる可罰的違法性なしとする主張」のことだ。
太字は私。
次に②の主張のように、道路交通法の各条は、わずかな違反でも処罰の対象となるのかという問題は、確かに頭の痛い問題である。紋切り型にいえば、「速度超過分が毎時一キロ・メートル毎時であっても速度違反であり、わずか一分間の駐車でも駐車違反であることに間違いはない」ということになるが、これではあまりにも現実離れした結果を招くこととなり、可罰的違法性の問題を持ち出して弁解するのも無理からぬものがある。しかしながら、道路交通法のような大量処理の行政法規において、その違反事実が構成要件に該当しながら、実質的違法性の判断において違法性の微少性ゆえに違法性の推定が破れるとすることは、画一的処理を損い、不適切である。これは、結局のところ違反の成否の問題としてではなく、当該違反行為を取り締まることの相当性、社会的妥当性の問題として処理せざるを得ないものと考えられる。
なるほどぉ、である。
なんで「大量」なのか、という点で引っかからずに読めば、なるほどぉ、である。
違法性、つまり悪質性が微少な違反を、「違反は違反だ!」として取り締まるのは、「相当性、社会的妥当性」を欠くのである。
だから…八代氏は続ける。
現実の問題としては、交通違反の取締り現場では、悪質な違反のみを取り締まり、軽微な違反は指導に止めているのが実情である。なぜならば、道路交通法違反は一〇〇パーセントこれを検挙できるわけではないので、軽微な違反については、取締りの公平性の観点からみても指導に止めるのが妥当であるし、また、軽微な違反は、仮にこれを検挙、送致しても、起訴段階において起訴便宜主義により起訴猶予処分となるであろうから、あえてこれを反則切符処理するのは妥当性を欠くと考えられるからである。このような事情から、軽微な違反はある程度まではこれを無視し、又は指導に止めており、これが緩衝帯の作用を果たし、現実の問題として、実際に検挙される事案では可罰的違法性を検討しなければならないようなケースは生じない。ただ、理論上のものとして、可罰的違法性ないし実質的違法性の問題を考えるならば、道路交通法違反の罪質の多くが形式犯ないし抽象的危険犯であることと併せ考えると、違法性自体を否定するような結論を導くことは避けるべきものと考える。
「ただ…」以降は、現在のところ私のアタマではちょっと理解できない。
んが、そこを除くと、すんごいこと言ってると思わない!?
つまり、こういうことでしょ。
悪質性が微少でも、法律上は違反。
でもそれじゃマズイので、悪質性が微少なものは検挙しない。
形は違反でも検挙しない、ということが「緩衝帯」になって、マズさをカバーしている。現在の制度は妥当なものとして成り立っている。
悪質な違反のみを取り締まってるので、「悪質性は微少だ」と争うケースは現実には生じない…。
やっぱ、そうなんだよねえ。
反則金は、取締りに不服がない(「悪質性は微少だ」といった主張もない)人だけが払える、任意の特別なペナルティ。
その納付率が毎年ほぼ100%ってことは、イコール、悪質な違反のみを取り締まってるのだ、ということになるんだよねえ。
「泣き寝入りが、ノルマ消化の取締り、取締りのための取締りを、交通商法を支えてるんだ」
という趣旨を、もう20年ほどになるのか、私は言い続けてきたわけだが、こういうのを改めて読むと、いやはや、なんとも感慨深いですぅ。
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ぁさて、ここにおいて、新しい駐禁取締りはどう位置づけられるか。
ずばり、「緩衝帯」をなくしちゃったわけだわねぇ。
そして、「悪質性は微少だ」と主張して「起訴猶予処分」になっても、なんと(現在警察庁が言ってるところによれば)車の持ち主が「放置違反金」を徴収をされてしまうことになったのだ!
「悪質性は微少だ」と主張するためには(たぶん)出頭して違反キップを切られなければならず、違反キップを切られれば違反歴となり、違反数がつく。
そんな主張はせずに、ステッカーをつけられても知らん顔してれば、「放置違反金」(不起訴になってもどうせ取られるカネ)を払うだけですむ。
「悪質性は微少だ」と主張する人(しかも実際微少なのでばっちり不起訴になる人)は、踏んだり蹴ったり、いちばん損をするのである。
争うケースは、限りなく皆無に近づくだろう。
なぜ、限りなく皆無なのか。
はい、お答えします。
それは、ガイドラインを策定する等して、悪質な違反のみを取り締まっておるからでございます。
こういう制度がスタートしたわけだが、
「許せない! 俺は正義のために“微少性”を主張して争う!」
という方、悲壮感を漂わせて決意しそうな方に、言っておきたい。
正義は関係ないのだ。
不服があれば争わせ、公正・妥当な法律運用をしていこうとする、そういう法制度に(いちおうタテマエとしては)日本はなってるわけで、当たり前のことを当たり前に、普通のことを普通に、粛々とやっていけばいいのだと、私は思いますよ。
正義がどうとか言って突っ張らかる人ほど、ぽっきり折れやすいってこともあるし。
普通がいちばん!
『なんでこれが交通違反なの!?―警察は教えない126の基礎知識』の最終項、Question126 もお読み頂ければ。
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