飲酒運転の同乗者を幇助犯とする運用
産経新聞06年9月2日の記事(■と●の部分は記事では実名)。
車ではね3キロ引きずり同僚死なす 飲酒の高校助手逮捕
≪「泡盛を20―30杯飲んだ≫
沖縄県警は、同僚の高校事務職員を車ではねて3キロ以上引きずって死なせたとして業務上過失致死の疑いで、同県嘉手納町水釜、県立浦添工業高校の実習助手、■■■■容疑者(46)を逮捕した。■■容疑者は飲酒運転しており、同乗していた高校教諭3人と、高校臨時教諭2人の計5人を道交法違反容疑(酒酔い運転幇助(ほうじょ))で書類送検した。
■■容疑者は「泡盛を20―30杯飲んだ。引きずった感触はなかった」と供述しているという。
調べでは、■■容疑者は8月25日午前0時半ごろ、沖縄県伊平屋村島尻の県道で、酒に酔って寝ていた同校事務職員、●●●●さん(28)に気付かずに車ではね、巻き込んだまま約3キロ引きずった疑い。高校教諭や臨時教諭の男女5人は■■容疑者の飲酒運転を承知の上で同乗した疑い。
■■容疑者らは●●さんを含めた県立高校関係者約10人と伊平屋村で旅行中だった。 (09/02 00:43)
巻き込んだまま約3kmも引きずれば、人間の身体はぼろぼろに挫滅するだろう。
「どんな凶悪殺人犯でもこうは殺さないだろう、という無惨な遺体を交通事故の現場では目にするのだ」
と現職、元職の警察官からよく聞く。警察官というのもたいへんな仕事だ。
その同乗者らに、沖縄県警は刑法62条の「幇助」(従犯)を適用したという。
どんなシチュエーションのどんな行為を「幇助」とするか、いろんな考え方(説)があるようだ。
沖縄の事件のディテールはわからないが、単に同乗しただけで「幇助」とする運用は、これまで聞いたことがなかった。
単に同乗しただけではない場合における運用は、これまであった。少し引っ張ってみる。
「飲酒運転のクルマに同乗して道案内すると幇助犯」とレスポンス(03年7月23日。下掲はその一部)。
岩手県警は22日、酒気帯び状態だった友人に自宅までの道案内を行ない、自宅までクルマで送らせていた20歳の男を道路交通法違反(酒気帯び運転幇助)の疑いで書類送検していたことを明らかにした。飲酒運転の幇助容疑で同乗者の罪も問われるケースは珍しく、岩手県内では過去に摘発例が無いとしている。
岩手県警・盛岡東署の調べによると、この男は今月3日、友人の男と一緒に盛岡市内の飲食店で酒を飲んだ後、この男が運転するクルマに同乗。飲酒運転を容認するとともに、自宅まで経路を教えるなどして運転を幇助した疑いが持たれている。
乗用車を運転していた44歳の男からは酒気帯び相当量のアルコール分を検出したため、警察では業務上過失致死と道路交通法違反(酒気帯び運転)容疑で男を逮捕した。その後の調べで飲酒場所などを問い質した際、男は「友人宅でビールなどを飲んだ」、「クルマで訪れたことを友人も承知していたが、構わずに酒を飲むことになった」と供述。警察では飲酒運転幇助の疑いもあるとして、この友人宅の家宅捜索を決定。11日午後から捜索を実際に実施し、ビールの空き瓶やコップなどを押収している。
香川県警が飲酒運転幇助容疑で、酒類の提供が行われた場所の強制捜査に踏みきるのは今回が初めて。「飲食店ではなく、個人が対象となったのは全国的にもまだまだ珍しいのではないか」と話している。
以下は、刑事ではなく民事の話。
「泥酔運転の民事責任は一緒に酒を飲んだ同僚にも及ぶ」ともレスポンス(06年8月1日。下掲は一部)。
男は危険運転致死傷罪で懲役7年の実刑判決を受け、現在服役中だが、この事故で死亡した20歳の女性の両親が「飲酒を行った後にクルマで帰ることを認識しながら、それを止めなかった」として、クルマを運転していた男の同僚(一緒に飲酒)と、当時勤務していた会社(社有車を事故時に使用)、そして恒常的な飲酒運転を把握していた男の妻に対して、連帯して約8100万円の賠償を行うように請求する民事訴訟を起こした。
これまでの弁論で、同僚は「クルマ運転していた男性の方が年齢が上であり、意見できなかった」と主張してきたが、7月28日の判決で東京地裁の佐久間邦夫裁判長は「男と長時間に渡って一緒に酒を飲み、男の様子から正常に運転できないことを認識できた」、「男がクルマを運転して帰宅することも予見可能で、飲酒運転を制止すべき注意義務があったにも関わらず、これを怠った」判断。責任があることを認めた。しかし、妻には制止の責任を認めず、結局は運転していた男、同僚、クルマを所有する会社に対して約5800万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
以下は大阪府警の調査。
「『少ない飲酒量なら大丈夫だし、時間も置いた』なんて甘い考えだと捕まるよ」ともレスポンス(02年12月6日。下掲はその一部)。
しかし、肝心の飲酒運転については全体の60%が「少ない量なら大丈夫」と回答し、飲酒量さえ抑えれば摘発対象にはなりえないと考えていることが明らかになった。また、「飲酒後に時間を置いてから運転すれば大丈夫」と誤認している人が意外に多いことも今回の調査でわかった。
02年6月1日から飲酒運転の罰則が大幅強化され、「同乗者も罰金30万円」というデマが飛び交っていた、その真っ直中の調査である。
「犯行を止めなかった」「止めずにそばにいた(同乗していた)」というケースもびしびし処罰していく運用へ、思いきって踏み出せば、飲酒運転・事故の防止に大いに影響するんじゃないかと思われる。
ただ、「知ってて止めなかった奴、当局へ通報しなかった奴、そばにいた奴も同罪だ! やっつけろ!」という考え方・運用が定着すれば(『1984年』がいう「プロレ階級」の支持を得れば)、次に国はどこへ踏み出すか…。
1984年 著者:George Orwell,ジョージ・オーウェル |
結局、こういうものは諸刃の剣。
その剣を、火付盗賊改方が持つのか、急ぎ働きの凶賊が持つのか、の違いなのかも…。
ちょっとマジメ風なことを、慣れないもんだから舌足らずに言ってみますた。
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