フォト
2017年9月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
無料ブログはココログ

« 酒気帯び検査の記録紙を毀棄すると… | トップページ | 来年度の駐禁民間委託とウリセンバー »

2006年11月27日 (月)

運転免許の行政処分とは

 11月27日付け朝日新聞の社会面トップに、
<<抜け穴で運転可能 免許取り消し処分 出頭拒めば 更新時まで「野放し」 NO飲酒運転 任意の「壁」 5年放置も>>
 という大見出し、小見出しの大きな記事が。
 ネットでは、 
<<免許取り消し、出頭拒めば「運転可能」 道交法に抜け穴>>
 として掲げられている。

 盗難車を飲酒運転してひき逃げした男(当時30歳)が、業務上過失致死(被害者は当時25歳。合掌)と、道路交通法の措置義務違反(ひき逃げ)と無免許で公判請求されたが、免許は有効だったと公判でわかり、検察は無免許について起訴を取り下げた。男は点数累積で免取り処分の基準に達しながら、処分を受けていないことがわかった…。
 という趣旨の事実関係が報じられている。

 こういう事件では、運転免許の照会結果が必ず書証として提出される。
 内容を確認せずに起訴したとすれば、あまりにずさん。
 …とはいえ、2ちゃんねるなどでは、
  ・点数が処分の基準に達した
  ・「意見の聴取」の手続きを経るなどして処分の量定が決まった
  ・処分が執行された
 この3つをまったく区別せず、「免取ケテーイ」とだけ騒ぐ傾向が見られる。
 「男」はその調子で「免取り食らいました」とか供述し、検察官もそれにのってしまったのだろうか。

 読者は、この記事を読んでどう感じるのだろう。
 私は、道路交通法違反を中心に500件以上の裁判を傍聴してきた。
 傍聴人の立場で偉そうに言わせてもらえば、「反社会性人格障害」とまではいかないまでも、犯罪に対するハードルが非常に低い人たちが、社会には間違いなく居るのだ、と痛感される。
 そういう人たちは、やったら必ず捕まるとは考えずに、ハードルを越える。
 どっちかといえば、「盗めるのに盗まないのは損だ」という意識のようにも思える。

 そして交通違反は、多くの善良な人々が日常的にハードルを越えているといえる。
 道路交通法は、きわめつけのザル法だ。
 元内閣法制局長官の言葉(←リンク先の下のほう)を、しみじみ味わってほしい。
 越えてもべつに何ともない、みんなが日常的に越えているハードルのなかに、越えてはならない、越えると非常にやばいハードルが、紛れている、そういう状況というべきだろう。

 そんななかで、運転免許の行政処分は、どう運用されているのか。
 以下は、2003年の暮れに『ドライバー』へ送信した原稿だ。若干、加除訂正した。  

 11月28日、桜田門の警視庁ビルへ「意見の聴取」を傍聴に行ってきた。
 「意見の聴取」とは、90日以上の免停および取り消し処分の基準に達した者(以下「処分者」という)に与えられる弁明の機会。かつて「聴聞」と呼ばれていたものだ。

 道路交通法104条では「公開」とされている。
 しかし傍聴する人は皆無ではないだろうか。
 私は10年ほど前、ある取り消し処分者といっしょに行ったことがあるが、
「傍聴はできない。補佐人としてなら入れてやる」
「何を言ってるんだ。法律には公開と明記されてるじゃないか」
 とさんざんモメたことがある。
 けれども最近、事故被害者・遺族が加害者への処罰・処分にまったくタッチできないことが社会問題となり、今回、ある遺族の方とその関係者が「意見の聴取」を傍聴することになったというので私も同行させてもらったのだ。

 聴取は30人ほどずつ3つの小部屋に分かれて行われた。
 私が入ったのは3番目の部屋。
 3~4人掛けの長イスが11脚、奥に向かって3列に並べられ、正面の長机に、こちらを向いて聴聞官(公安委員会から聴取を委任された警察官)が着席。横の別の長机にいる事務方が、
「平成×年×月×日、××付近道路において無免許で自動二輪車を運転。処分歴なし。本件19点」
 などと読み上げ、処分者は1人ずつ立って聴聞官の前の席(裁判の法廷でいえば証言席)に座り、いくつか簡単に質問されて弁明する、という手順だった。

 その日は金曜日。取り消し処分者ばかり集められ〝魔の金曜日〟と呼ばれる日だ。
 処分の前歴が0回だと15点、1回だと10点、2回なら5点で取り消しの基準に達する。
 前歴1回で酒気帯び0.25mg以上(13点)、前歴は0回だけども駐車違反などの点数が累積されて15点を超えた、という人が多かった。死亡事故でイッパツ15点の人もいた。

 ここでの弁明により180日免停に処分が軽減されることもある。講習を受ければ100日の停止ですむ。運転者にとっては取り消し処分とは大違いのはず。だが、
「何か弁明することはありますか」
「ありません……」
 という人が大半だった。
 1人が長イスから立って聴聞官の前に座り、元の席に戻るまで平均2分ほど。
「通知があったんでとりあえず来た」
「おとなしくしてれば懇切に情状を聞き出してくれ、処分を軽減してくれるのかな」
 という人がほとんどのように見えた。
 全員について終わると、聴聞官は退席。1時間ほどして各自に処分書が交付される(「意見の聴取」を経て決定された処分が執行される)ことになる。

 あとで、別の部屋で傍聴していた遺族の方から少し話を聞いた。
 加害者は取り消し処分を執行されたという。
 けれど、いったいどういうシステムなのかよくわからず、気持ちが晴れることは少しもなかったようだ。何より、処分執行まで加害者が運転できていたことに驚きを感じたようだった。

 私は「不起訴なのになぜ処分を強要されるんだ!?」といった人たちに向け、行政処分のことをずいぶん書いてきた。
 だが今回、そうじゃない一般の人、事故被害者・遺族の方々向けに、概要と問題点をわかりやすくまとめておく必要があるなと痛感した。「不起訴なのに…」という人たちにも、別の角度から改めてながめてみることは有意義だろう。

 行政処分は少なくとも4つの観点から見るべきと思う。

①処分の目的
 行政処分は、罰や制裁の類ではない。そっちは反則金や罰金などが担当する。
 行政処分とは、
「危険性の高い運転者を道路交通の場から排除することにより、将来における道路交通上の危険を防止することを目的とする」(警察庁交通局運転免許課長。東京法令『月刊交通』03年9月号)
 行政行為なのである。
 たとえば酒酔い運転は、事故を起こさなくても運転しただけで25点。
 死亡事故は運転者の過失が大きくても20点。事故点数は必ず違反点数に付されるので、一時不停止(2点)が原因なら22点ということになる。
 前歴0回なら22点は欠格期間1年の免許取り消し。
 25点は欠格期間2年だ。
 愛する家族を殺された者からすれば、
「人を殺して1年か。重く処罰されるべきはどっちなんだ!」
 と、到底納得できないだろう。
 しかし、人間にありがちな不注意(違反)が原因で事故を起こし、その結果が重大だったという人と、酒に酔った状態で故意にハンドルを握ってしまう人とでは、後者のほうが「将来の危険性」は高い。行政処分はそういう考え方に立つ制度なのである。

②全国一律の不公平
 同じ一時不停止でも、田んぼの真ん中の交差点で数百m先まで安全を確認して徐行で通過するのと、見通しが悪く通行量の多い交差点へかなりのスピードで突っ込むのとでは、危険性はまったく違う。
 ところが点数は違反名に付されるため、どっちも同じ2点だ。
 また、違反は日常的にあふれており、取り締まりを受けるのはそのごくごく一部でしかない。
 運よく、いやとくに運が悪くなくて捕まらなければ、どれだけ違反しても「無違反」の「優良運転者」とされる。
 さらには、無実の容疑で取締りを受け、晴れて不起訴になっても、警察は、
「取り締まりが行われた以上、違反は事実。検察の判断は関係ない」
 と行政処分を強要する。
 全国一律の点数をつけるのは「公平」だと警察は言うが、それは不公平・不公正を全国一律に押しつけるのが公平だということではないのか。

③処分執行までの期間
「不起訴になった。処分は撤回してくれ」
 と言う運転者を、警察はいつも、
「処分を受けてから裁判でも何でもやりなさい」
 と追い返す。
「危険性の高い運転者を排除するという目的からして、処分は迅速に執行されなければならない。処分が間違っていれば事後に救済するようになっている」
 と警察は言う。
 ところが、今回傍聴した「意見の聴取」では、大半の処分者の違反日が6月20日、21日、22日だった。
 免許を取り消さねばならないほど危険性が高い運転者への処分を、5カ月以上もたって行う?
 取り締まりから数日で点数は警察のコンピューターに入力され、処分の基準に達すればすぐにわかる。なのに「意見の聴取」の通知が運転者に届くのは早くても1カ月以上後になることが多い。
 「意見の聴取」の手続きがない30日、60日の免停処分も、早くても約20日後だ。
 事故の場合、過失の大きさや被害者の傷害の程度がわかるまで日数がかかることもあるだろうが、右の1カ月とか20日かとかいうのは違反についての話なのだ。
 「処分は迅速に」という警察の言い分は、不適切(かもしれない)処分を強要するための方便として出てくるだけ。処分は目的を見失っているというほかない。

④錬金術
 「危険性を改善する」ためにと、講習が用意され、受講すれば停止期間が大幅に短縮される。
 02年に30日免停を受けた人の87・45%(58万238人)、60日免停では70・46%(10万9337人)、90日以上では76・19%(9万4971人)が、その講習を受講している。
 講習料金はそれぞれ1万3800円、2万3000円、2万7600円。これに上記人数を掛けると、合計約131億円。
 この講習は、警察の天下り法人・交通安全協会に委託されている。
 実際の効果がどうだろうと、莫大なカネが確実に安協に流れ込む仕掛けになっているのだ。

 人間に不注意や不心得がつきものである以上、事故は必ず起こる。
 自らの行政行為が天下りの利益に直結している組織に、取り締まりや処分を行わせて違反・事故をなくそうとするのは、発想からして間違っているのではないかと私は思う。

 ほか、行政処分については『なんでこれが交通違反なの!?―警察は教えない126の基礎知識』に詳しく書いた。
 結局のところ行政処分は、警察が取締りを行った事実をもとに、警察が点数をつけ、警察が処分を執行し、生じたカネを警察の天下り先が独占するシステム、警察の独断、独善、利益独占のシステムといえる。
「悪い奴らをやっつけろ!」
 で制度をいじくっても、独善、独断、利益独占が強まるだけ、簡単にハードルを越える者たちへの効果は薄い、と私には思えるのだが。

  

 Banner_02_2 人気blogランキング ← こんなに長い記事書くなよとぷりぷりな方も、どうかクリックお願いしますよぅ♪

« 酒気帯び検査の記録紙を毀棄すると… | トップページ | 来年度の駐禁民間委託とウリセンバー »

行政処分」カテゴリの記事