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2007年1月20日 (土)

第2次Nシステム訴訟 訴状提出

 え~、ご報告を忘れておりましたが、「第2次Nシステム訴訟」は、1月17日(水)、つつがなく訴状提出の運びとなりました。

訴     状

2007年1月17日
東京地方裁判所民事部御中
原告本人兼原告11名訴訟代理人弁護士
櫻 井 光 政

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

損害賠償請求事件
 訴訟物の価額 1200万円
 貼用印紙額 5万6000円

請 求 の 趣 旨

 被告は原告ら各自に対し金100万円及びこれに対する本訴状送達の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。

請 求 の 原 因

第1 当事者
 原告らは自動車を保有しこれを運転する者である。原告らが保有する自動車及びその利用状況は別紙自動車運用状況一覧のとおりである。
 被告は自動車ナンバー自動読取装置(通称Nシステム、以下本システムを指すときはこの通称を用いる)というシステム稼動させ、全国各地の道路上に自ら設置した撮影端末及び各都道府県警察が設置した撮影端末とをラインで結び、全国900箇所以上の端末設置地点を通過する全自動車の登録番号(以下ナンバーという)を撮影、記録している。また、交通流速の計測などを行いドライバーへの目的地までの到達予定時間などの情報を提供することが目的の設備であるとされている旅行時間測定システム(通称Tシステム)というシステムを稼動させているが、これについてもNシステムと連動させて捜査に利用している。

第2 収集するデータの内容および収集方法
 1
 Nシステムでは、撮影端末設置地点を通過する自動車の全ナンバーを記録するが、画像は蓄積、記録されていないと説明されている。しかし、後述する理由から、現実には画像も保存されていると推測される。
  Tシステムは、原理的にはNシステムと全く同じ、車両検知装置と撮影装置及びコンピューターがセットになったシステムである。従ってその外観はNシステムとほとんど区別がつかない。Tシステムでは全通過車両の画像が現実に蓄積されている。
  NシステムとTシステムは相互にリンクし、情報を共有できるようになっていることが後に述べる情報流出の事故によって判明した。情報が共有できるということは、相互に同種の情報を収集しているということを意味する。ということは、Tシステムが行っている画像の保存はNシステムも行っているということであり、Nシステムが行っているナンバー情報の記録はTシステムも行っているということである。
  以上によれば、NシステムとTシステムとはそれぞれの設置目的は異なるとされてはいるが、相互に、設置箇所を通過する車両を全て無差別に撮影、記録し、且つ画像も保存する大ネットワークになっているというべきである。
  その情報収集の方法は、物理的な強制力を用いるものではないが、情報を収集する場所は明らかにされず、且つ個々のドライバーが撮影を拒むことができないものである。

第3 データの管理状況
1 
被告がこれまで公表しているところによれば、Nシステムによって収集されたデータは厳格に管理され且つ一定期間経過後は廃棄されているとのことであったが、現実にどのように管理されているのか、またデータ保存の期間がどの程度長期にわたるのかについては一切明らかにされたことがなかった。
 ところが2006年3月16日付の毎日新聞報道によって、1999年5月の中旬から下旬にかけての10日の間に愛媛県や香川県、徳島県の国道、高速道路を通過した自動車延べ10万台のナンバー、通過日時が、愛媛県警捜査1課の警部の私有パソコンからファイル交換ソフト「Winny」を介してネット上に流出したことが明らかになった。また、流出した情報からは、NシステムとTシステムとがリンクしており、必要に応じてNシステムの操作端末からTシステムの情報も取得できることも明らかになった。
 警察官が私用のパソコンに取り込んで持ち出せるようなデータ管理は常識的に見ておよそ厳格とは言えない。また、7年前のデータがそっくりそのまま残っていたことに鑑みれば、「一定期間経過後に廃棄している」旨の説明は虚偽であるというべきである。
 要するに、国は、Nシステム及びTシステムを利用して、各々の撮影端末が撮影して得た画像を保存し、自動車ナンバーのデータを保存しているが、その保存及び管理の方法はきわめてずさんであり、個々の捜査官が希望すれば簡単に入手でき、かつ、個人のパソコンにもダウンロードできる状態なのである。

第4 権利侵害
 1
 被告がかように無限定かつ広範に個人の情報を同意なく取得して管理すること、しかもこの管理が極めてずさんなものであることは、両者あいまって国民に保障されているプライバシーの権利を侵害するものである。
  本件原告らはいずれも日常的に特定の自動車を利用して頻繁にNシステム及びこれと連動するTシステム(以下Nシステム等という)の撮影端末によって撮影され、画像を含む情報を取得されているものであって、それぞれが有するプライバシーの権利を侵害されている。このプライバシーの権利は3つの権利からなる。
   その1は肖像権である。人が濫りにその容ぼうを撮影されない権利は比較的古くからプライバシー権の代表的なものと認識されてきたが、Nシステム等はまさに濫りに人の容ぼうを撮影するものであるから、Nシステム等は原告らの肖像権を侵害している。
   その2は自由に移動する権利である。何人も自由に移動する権利を有しているが、Nシステム等によって国の監視下に置かれることにより、自由な移動が事実上制限されることになる。従ってNシステム等は原告らの自由に移動する権利を侵害している。
   その3は自らの情報をコントロールする権利である。個人の情報はもともとその個人に属するものであり、特段の事由がない限りどの情報を開示し、どの情報を秘匿するかはその情報の主体である個人の選択に委ねられるべきものである。ところがNシステム等は撮影端末設置場所を通行する自動車の全てをいやおうなしに撮影し、記録を保存するものでありながら、情報の主体に対しては、情報を保存しているかどうか、また、いかなる情報を保存しているかについて一切開示せず、その主体による利用の機会すら与えない。従ってNシステム等は原告らが自ら情報をコントロールする権利を侵害するものである。
3 原告らはNシステム等によって日々撮影されることにより、多大な精神的苦痛を被っている。この苦痛は金銭には換算しがたいものであるが、あえて金銭的評価を与えるとすると、その額は1人当たり100万円を下らない。
 よって原告のそれぞれについて金100万円の慰謝料の支払いを求めるため本訴請求に及んだ。

証  拠  方  法

甲第1号証 Nシステムニュース
甲第2号証 新聞記事

付  属  書  類

1 訴状副本               1通
2 甲号証写し             各2通
3 訴訟委任状              11通

 第2次というからには、第1次があるわけで、その提訴は98年3月16日だった。
 そっちは最高裁で敗訴が確定している。
 が、01年2月6日言渡しの東京地裁判決(平成10年ワ5272号。西村則夫・内田博久・下澤良太裁判官)は、こう言っている。

 しかし他方、このような車両を用いた移動に関する情報が大量かつ緊密に集積されると、車両の運転者である個人の行動等を一定程度推認する手がかりとなり得ることは否定できない。また、仮に、Nシステムの端末が道路上の至る所に張りめぐらされ、そこから得られる大量の情報が集積、保存されるような事態が生じれば、運転者の行動や私生活の内容を相当程度詳細に推測し得る情報となり、原告らの主張するような国民の行動に対する監視の問題すら生じ得るという点で、Nシステムによって得られる情報が、目的や方法の如何を問わず収集の許される情報とはいえないことも明らかである。

 この判決は、Nシステムが日本全国約400カ所にあることを前提としたものだ。
 現在、900カ所を超え、Nと連動させられるTシステムも1000カ所を超える…。
 91年の判決が危惧したことが、すでに現実のものとなっていると言えるのではないか。
 愛媛県警から流出したNデータを見ると、そのことは背すじが寒くなるほど実感される。

 愛媛の流出データが原告側から証拠請求された場合、被告国(代表者法務大臣・長勢甚遠)は、それが警察のデータと認めるかどうか、興味深いよね。

 ところで、私個人としては、「Nをなくせ!」などと最初から言うつもりはない。
 ただ、具体的に誰がどう運用してるのか、犯罪捜査以外にどう利用されているのか、全く明らかにされておらず、目的外の恣意的な利用があってもわからないこと、そういう利用を防ぐ現実的な手立てがないらしいこと、そういったところに非常な不安を覚えるわけ。
 Nに限らず、監視装置は、諸刃の剣といえる。
 世のなか、たいがいのものは諸刃の剣だろ。
 民のためになる側の刃が鋭いことはけっこうだが、民のためにならない側の刃は、丸めていかねばならない。それは十分に、または一定程度可能なことと思える。可能じゃなくても、努力していかなきゃ。
 そうやって世のなかは、比較的良い状態に保たれていくべき…そんなもんでしょ。

 おまけ。笑える動画を見つけたよ。

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