「審理不尽」じゃなくて「立証不尽」では?
一夜明けて新聞報道を見る。
原判決破棄・差戻し、の理由(最高裁の言い分)を、各紙こう書いてるのね。
「高裁で検察官の立証が不十分であると考えるなら、オービスに速度のプラス誤差が生じないことを客観的に裏付けるための立証を検察官に促すなど、さらに審理を尽くした上で判断すべきだった」産経新聞
「2審はオービスの速度測定に誤差が生じる具体的な可能性について審理を尽くしておらず、事実を誤認した疑いがある」「オービスの正確さは1審で一応立証されており、不十分だと考えるなら、検察官に追加立証を求めるなどすべきだった」読売新聞
「審理を尽くさず事実を誤認した疑いがある」「プラス誤差は生じないことが一応立証されている」「検察官の立証がなお不十分だと考えるなら、追加立証の請求を促すなど審理を尽くすべきだった」朝日新聞
「2審は審理を尽くさずに事実を誤認した疑いがある」「1審の証拠でオービスの正確性は一応立証されている」「検察側の立証が不十分だと考えるなら、追加立証を促すなどして審理を尽くすべきだった」毎日新聞
「二審判決は審理を尽くしておらず、事実を誤認した疑いがある」秋田魁新報
たしかに最高裁はそんなふうに言ったのだが、このままだとたいへんな誤解を招くと思われ、私のほうで少し解説しとくです。
まず、オービスの正確性は「一応立証されている」ってとこ。
一審(秋田簡裁)、二審(仙台高裁秋田支部)における検察の「立証」は、メーカー(このケースは三菱電機)の取扱説明書などを出したこと、そしてオービスの点検を行った会社の社員に、点検では各部「良」だったと証言させたこと、それだけなのだ。
そんなもので「一応立証されている」って、あり?
最高裁が検察に期待する立証責任って、ゆるゆる!
だから検察も調子にのるのか、そういう立証で有罪にするのを「確立された採証法則」だと上告趣意書でのたまってる。
4コマ漫画なら、「ずこっ」とか言ってひっくり返っちゃうところ、だと私は思うのだが。
次に、「二審は審理を尽くさず事実を誤認した」という言い分。
これ、非常に面白い。
起訴前から被告人は、「測定値が正しいという、客観的な裏付けとなるデータを出してほしい」と言い続けていた。
つまり、「審理を尽くしてくれ」と、被告人のほうが言ってたわけだ。
被告人側の控訴趣意書を見ると、検察立証をめたくそ「促して」るといえる。
ところが検察は、どうしても裏付けデータを出さなかった。
そこで二審は、「もぅいーよ、公訴棄却(実質無罪)とするしかないね」としたわけだ。
被告人側がさんざん立証を促したのに、検察は立証を尽くさず(立証できず)、しょうがないから公訴棄却。非常にわかりやすい話だ。
それが、最高裁の手にかかると、二審の裁判官らが悪い(誤判をした)かのような形になるって、何なの?
審理不尽じゃなくて立証不尽…いや、オービスの正確性は立証不可なんだろうと、百何十件かのオービス裁判を傍聴してきて思わざるを得ない。
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