レンタカー会社の放置違反金
この記事(4月4日付け朝日新聞。太字は今井)、ひっじょぉ~に興味深い!
駐禁強化でレンタカー業界悲鳴
道路交通法の改正で駐車違反をした車の所有者に科せられることになった「放置違反金」をめぐり、愛知県レンタカー協会は4日、改正法施行の昨年6月から今年2月末までに、加盟90社が計386件、600万円余の違反金納付命令を受けたと発表した。車を借りた客が駐車違反の反則金を納めない例が相次いでいるためだ。
改正法では、駐車違反をした運転者が出頭しなかったり、反則金を納めなかったりした場合、車の所有者に放置違反金の納付が義務づけられる。レンタカーの場合、車の所有者はレンタカー会社になるため、利用者が反則金を納めないと都道府県の公安委員会から納付命令を出される。
この違反金について、愛知県レンタカー協会は他県の協会に先がけ、実態を調べてまとめた。命令を受けたうち、すでに146件、200万円余が納付され、反則金を肩代わりした形になっている。各社は利用者に同額の支払いを求めているが、再三の請求にも応じない52人には督促状を送付、それでも従わない場合は法的措置も検討するという。
同県レンタカー協会の加藤守男会長は「5000円で貸して1万円以上の違反金をレンタカー会社が支払うのは不合理だ。業界の死活問題に発展する可能性がある。利用者の責任をはっきりさせる意味でも強硬な姿勢でのぞむ必要がある」と話している。
386件で600万円余。
600万円ぴたりなら、1件平均は約1万5544円。
「反則金を肩代わりした形」というが、正確にはそうじゃない。
確認標章(ニュー駐禁ステッカー)を取り付けられて知らん顔し、レンタカー会社に放置違反金を払わせた客は、違反点数を免れる。ゴールド免許の客はゴールド免許のままでいられる。
一方、会社のほうは、ある車両が放置違反金の納付命令を度々受けると、その車両は「使用制限命令」を食らう。
したがって、客のほうが一方的に得であり、会社のほうが一方的に損なのだ。
たとえば、だよ、お客が、レンタルされた車を、夜、パーキングメータ(時間制限駐車区間)に、駐車しようとしたとする。
「ありゃ? 料金がメータに入らない。どゆこと? うーん、駐車しても安全だから白線で囲ってある場所で、料金を受け付けない、てことは、夜間は無料なんだな」
と思って2時間ほど駐車したとしよう。
これは、場所によってはバッチリ違反になる。
どんな標識があれば違反か違反でないか、よほどのマニアでないとわかりにくい場合が少なくない。
余談だが、そういうパーメを穴場と喜ぶ駐車監視員もいれば、喜ぶ者に(そういう規制のパーメに)不満を感じる駐車監視員もいるという。後者が淘汰されて辞めていくなら、それは哀しいと私は言ってるのだ。
そんなふうなことで、確認標章を貼られ、納得いかなくて、お客は交番か警察署へ出向いたとしよう。
そうするとお客は、普通は駐車違反で違反キップを切られる。
いわゆる青キップと反則金の納付書を交付される。
それで、だ、お客は納得いかなくて、反則金を納付せず、刑事手続きで争ったとしよう。
そんなものは、まず間違いなく、検察官により不起訴とされる。
ところが!!
不起訴は、車の持ち主が放置違反金の納付命令を免れる3つの条件に当たらないため、車の持ち主であるレンタカー会社へ、放置違反金の納付命令がいく。
ここ、「ンなアホな(笑)」と思う人もいるだろうが、道路交通法51条の4、4項はハッキリそう定めているのだ。以下も太字は今井。
前項の規定による報告を受けた公安委員会は、当該報告に係る車両を放置車両と認めるときは、当該車両の使用者に対し、放置違反金の納付を命ずることができる。ただし、第一項の規定により当該車両に標章が取り付けられた日の翌日から起算して三十日以内に、当該車両に係る違法駐車行為をした者が当該違法駐車行為について第百二十八条第一項の規定による反則金の納付をした場合又は当該違法駐車行為に係る事件について公訴を提起され、若しくは家庭裁判所の審判に付された場合は、この限りでない。
会社はお客に、
「お客さん、困ります。放置違反金の1万5000円、払ってください」
と言う。
あくまでお客が払わないので、会社は民事裁判を起こす?
そしたら、お客は当然、民事の法廷でこう主張するだろう。
「本件規制は、道路交通法施行令1条の2に違反すると思われ、かつ、実質的な違法性がないので、不起訴とされた。被告(=客つまり違反者)の責任は問えない、または問うのは相当でない、とされたのだ。そのような駐車を理由に被告が金銭の支払を求められるいわれはない!
原告(=レンタカー会社)は、それでもなお原告への放置違反金納付命令を維持する都道府県と争うべきであって、客を被告とするのはスジ違いだ!」
※ 30日以内に不起訴までイクってことは、普通はない。が、民事訴訟の第1回弁論が開かれる頃には、不起訴の決定が出てることもあるだろう、ということで読んでね。
そういうメンドウなお客については、レンタカー会社は泣く泣く放置違反金をかぶるのか?
あるいは、お客が刑事手続きで争ってる事案、不起訴になった事案については、レンタカー会社は都道府県(実質は警察行政)と真っ向から争うのか?
そんな問題を抱えた、ニュー駐禁取締りの制度なのだ。
そんな問題が顕出しないためには、ほぼすべての運転者が、
「迷惑性や規制の妥当性なんて考えてもみない。とにかく逃げられたらラッキー、それしか頭にない。メンドウなこと言われたら渋々カネ払うよ」
というバカ運転者であることと、ごく一部争われても、結果として警察行政に逆らわない判決しか書かない裁判官ばかり、という前提が必要になる…。
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