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2008年1月29日 (火)

殺人・殺人未遂で未決勾留中の守大助さんに面会してきた

 1月10日(木)午前9時半頃から約30分間、仙台拘置支所、「一般4号」の面会室で、1人に対する殺人と4人に対する殺人未遂とで一審、二審ともに無期懲役とされ、最高裁に上告してその判断待ちの、「北陵クリニック事件(仙台筋弛緩剤殺人事件)」の被告人、守大助さんに面会してきた。
 面会は、たしか1日1回、1回につきう3人までと制限されており、ご家族や支援者たちの予定を乱すと申し訳ないので、あらかじめ首都圏の会に連絡してから。

 仙台拘置支所の面会室は、獄(ごく)と娑婆(しゃば)とを隔てる分厚いアクリルガラスの、その真ん中に小さな穴がいくつも開いてるタイプではなく、アクリルガラスのいちばん下、立ち食いそばのカウンターみたいな板に突き当たる部分が、細かな穴が開いたステンレス様で、なんていうか、横に細長い四角い筒のようになってるあのタイプだった。

 守大介さんは、ハキハキした若者だった。
 約30分間での印象としては、明るい感じだった。その明るさは、無実の殺人で懲役10年を服役した福井雅樹さんに、どこか似ているなと私は感じた。面会室(福井さんのときは東京拘置所と府中刑務所)というシチュエーションからくる印象もあるんだろうけれども。

 面会中に私が一部メモした守大助さんの発言は、以下のとおり。
 細部まで正確じゃないので、そこはご容赦を。

 私は無実です! 絶対やってません!  高裁の審理は、何も聞かないで取調べ請求を却下でした。こんな裁判、ありですか。私は一言も発言できなかった。
 (長い勾留生活は)厳しいことは厳しいです。慣れたくはないんだけど、慣れてしまって。でも、それなりにきちんと生活してます。ただ、こういう監獄の生活は、冷暖房がないんですね。ここへきて、下ズボン(ももひき)をはくようになりましたよ。冬はまだ厚着で耐えられるんですが…。
 (退屈は)それはないです。事件のことを考えてしまうし、手紙を1日2通書けるし、常に緊張して一杯一杯です。
 (たっぷりあった検体を警察の鑑定で)全量消費って、そんなのおかしいでしょ! 輸血のとき血液のラベルを貼り間違っても、全量消費したらもうわからない!
 薬(マスキュラックス)の感受性ですけど、5人とも症状が違うのは、薬が少なくても作用したりしなかったりするんだって、5人に対してそれほど違うなら、そんな薬、厚労省が認めないでしょ! マスキュラックスはヤバイぞと、厚労省が発表しますよ。
 (いったんは自白してしまったことについては)オヤジが警察官だということ(警察を信頼していたこと)が頭に入ってましたね。(半田医師の)医療ミスは、たしかにあった。(自分がいったん自白しても)調べりゃわかるだろって。(当時つきあっていた自分の)彼女を逮捕するぞと言われて、彼女にも同じことを言ってんじゃないかと。やってないんだから、と。オヤジに言わせれば、それが甘いと。
 松山事件とか見て、やったから自白したんだろうと思ってました。自分がこうなって初めてわかりましたよ。楽になりたい(とにかく取調べから逃れたい)という気持ちが。
 (最初に取調べを受けたとき)半田医師を患者の親御さんが訴えてるんだと思ってました。あの患者さんのお父さんは医師、お母さんは看護婦でしたから。絶対訴えられるわねって、噂になってましたから。
 (一審の無期懲役判決を書いた畑中英明裁判長が、その後、仙台高裁・秋田支部の裁判長となりオービス事件の公訴棄却判決を書いたことは)知ってました。私の裁判のとき、畑中さんは無罪の心証を持ってる、と思ってました。ところが、両陪席が…。
 普通、裁判所の構成が変わるとき、1人ずつ変わるじゃないですか。ところが私の裁判が始まる前に、両陪席がいっしょに変わったんです。たしか、左陪席は東京地裁からきた人、右陪席は仙台高裁からきた人でしたか、そして私の裁判が終わると、たしか左は法務省へ、右は東京地裁へ移動しました。
 (ぜひ言いたいのは)裁判のおかしさですよ! 無実を訴える人間を…。鉄則を守ってほしい、(検察立証が)疑わしきは被告人の利益に、と。(自分は完全に無実なので)それにすがるわけじゃないですけど。
 ちょうど、オセロのような感じです。私は白のなのに、(警察の不可解かつ薬理効果と明白に矛盾する)鑑定とかで挟んで、ぜんぶを黒にひっくり返した、みたいな。人の一生がかかってるのに。ゲームじゃないんです!

 そのあたりで、刑務官から面会終了を告げられた。
 詳しいことは、首都圏の会のサイトに、守さんからのメッセージとしてアップされている。

 しかし…やっぱり世間は、というか世間以上に裁判官は、無実の者が殺人の容疑でちょっとでも自白するはずがなく、警察が無実の者を逮捕するはずがなく、無実なのにマスコミがあれほど犯人視するはずがなく、無実の者を検察が起訴するはずがなく、したがって被告人はそれなりに怪しく、それなりに怪しい以上は無期懲役でも(20数年か30数年か刑務所に閉じこめられても)仕方ない…くらいにしか思わないんだろうか。

 1月17日(日)、袴田巌さんを救う会のイベントで、田中森一さん(『田中森一/反転 闇社会の守護神と呼ばれて』)が、ウソの自白調書を取られない心構えは何かと問われて、こう答えていた。
「むこう(捜査官)も署名(取り)のプロだから。わしゃ、ウソでも(調書への署名を)書かす自信がある」
 そうして、被疑者をだますテクニック、裁判官をだますテクニック、被疑者が捜査官になびく心理を、がんがん語ってくれた…。

 それで磨かれるのは、裁判官が有罪を書きやすい自白調書を、だまして脅して取るテクニックだけ、それ以外の捜査能力はだんだんと低下していくんじゃないか。
 プロフェッショナルな犯罪者が、そこを突いて、自分がやった猟奇殺人の罪をある者に着せ、1人を殺して1人を国家に殺させるという完全犯罪をまんまと成功させ、暗くせせら笑う、次のターゲット(被害者)は誰だ…というマンガ原作を考えたのは、もう10何年、いや20年ほど前だっけ。なんかますますリアルになってくる…。

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