行政不服審査の「刷新」をなぜ言いだしたのか
ワタシ的には「おお~っ!」というニュースが、2月8日付け朝日新聞に。
以下はその一部。
ずさんな行政不服審査、刷新 今国会に法改正案
総務省は、国や自治体の処分に対し、国民が不服を申し立てる行政不服審査制度を大幅に改める方針を固めた。行政処分に関与した職員が審理にあたったり、20年以上も裁決しなかったりするなど、公正・迅速と言い難いケースがみられるためだ。同省は処分にかかわっていない職員に審理を担当させ、第三者機関への諮問手続きの導入を柱とする行政不服審査法改正案を今国会に提出し、成立から2年後をめどに新制度を導入したい考えだ。1962年の施行以来初の全面改正となる。
行政不服審査は訴訟より手続きが簡素なメリットがある半面、公正さや客観性、迅速さに欠ける問題点が指摘されてきた。総務省の調査では、国の機関に対する申し立てのうち05年度に裁決や決定を出したのは約1万6700件。このうち申立人の主張が認められたのは約2500件にとどまり、裁決・決定までに1年を超えたものが約2300件もあった。原子力安全・保安院が原発工事などに関する81年の申し立てにいまだに裁決を出さないなど、事実上たなざらしにされる例もある。
現在2種類ある申し立てのうち、審査請求では反論書の提出など申立人の主張をより詳しく聞き取る手続きが定められているが、異議申し立てではこうした手続きが規定されておらず、不公平で分かりにくいとの指摘があった。改正案では二つの手続きを一本化して「審査請求」とし、これらの手続きを整備する。
行政不服審査法に基づく「不服申立」には、「審査請求」と「異議申立」の2種類があった。処分庁と審査庁との関係によって、どっちか決まるわけだが、それを「一本化」するのは良いと思うし、実現できるだろう。
しかし、公正・迅速化となると、なにをいまさら? ほんとの狙いはどこにあるの? という気がする。
運転免許の行政処分、および駐禁レッカー(の手数料の督促処分?)についての不服申立を長く見続けてきた私からすれば、不服申立の手続きを設けておくことの意味は、
「処分を執行する前にアンタの言い分を聞く必要はない。事後救済の手続きが設けられてるんで、不服があるなら、処分を受けてから申し立てなさい」
と一方的に処分を執行するため、そして、
「一方的に処分するわけじゃない。あとでちゃんと審査するようになってるんですよ」
という体裁をつくるためのはず。
その基本をひっくり返すようなことを、行政側が自発的にするはずがない。
いや、べつに、良いとか悪いとかじゃなくて、行政とはそういうもんでしょ。行政機関は必要だけれど、民と行政とは利害が対立する関係にあるので、行政が民を害しないよう、行政の良い部分だけを引き出すよう、民が不断の努力をしていく、そういうもんでしょ。
この「刷新」は、「裁判の迅速化に関する法律」との兼ね合いもあり、原則2年以内に裁決するよと決め、とりあえず公正らしさもアピールしとこう、そういう話じゃないのかな。
「第三者機関への諮問手続きの導入」なんて、ニュースになるような話題の処分についてだけ、1年に(または10年に?)1件やる程度で終わるんじゃないかな。
あと、マニア的に憶測するなら、今後、行政処分を飛躍的に増やす予定があるので、簡易・迅速に処理できる手続きを(公正らしさを装って)設けておく、つーことなんじゃないかな。
被処分者の言い分を聞かずに処分を執行してしまえる(つまり、被疑者の言い分を聞かずに刑罰を科してしまう、に相当する)のは、行政側にとって非常に便利だ。
犯罪 → 非犯罪化
刑罰 → 行政罰
罰金 → 行政制裁金(現在の「放置違反金」はそれに近い)
という形で、とうとう、道路交通法違反および自動車運転過失致死傷を非犯罪化する…そっち方面へゴゴゴと動いてることは確かだろう、と私には思える。
※ 画像は、警察庁で開示を受けたもの。これでもこの年は「審理中の事件数」がだいぶ少ないんだよね。
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