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2008年2月29日 (金)

冤罪で笑う者、安眠する者

 マスコミ的には「筋弛緩剤点滴事件」と呼ばれる、「北陵クリニック事件」。
 被害患者らの死亡等が、「筋弛緩剤」マスキュラックスによるものだという根拠は、ある学者が独自に創った鑑定方法によれば(じつはその学者による説明とは矛盾するのだけれども)「筋弛緩剤」が原因だとされた、というだけにすぎず、世界のどの学者の見解とも相違しており、しかしたっぷりあった検体を警察は全量消費した(つまり証拠を隠滅された)ため、再鑑定ができず、それなのに警察は「筋弛緩剤」による殺傷事件だと記者発表したことから、「筋弛緩剤点滴事件」という呼称が与えられ、「じゃあ、誰かが筋弛緩剤を入れたはずだ(=犯人がいるはずだ)」→「犯人は誰だ」→「守大助を警察は逮捕した(=守大助はとんでもない奴だ=やっつけろ)」→「守大助はこんな悪い奴だ」…となったわけだ。
 実際には、被害患者らの死亡等は、北陵クリニックの医師による医療過誤といえるものがあり、当初、看護士らは、「(病院は医療過誤で)訴えられるわよね」と噂していたそうだ。
 北陵クリニックでの患者らの死亡等を、「殺人・殺人未遂事件」に仕立てた事件、だから「北陵クリニック事件」というわけだ。

 以下は、2月28日付け河北新報の記事。

守被告、最高裁に異議申し立て 仙台・筋弛緩剤点滴事件
 仙台市泉区の旧北陵クリニックで起きた筋弛緩(しかん)剤点滴事件で殺人罪などに問われ、最高裁が上告棄却を決定した元クリニック職員で准看護師守大助被告(36)と弁護団は28日、決定を不服として、最高裁に異議を申し立てた。
 最高裁決定への異議が認められるのは、決定後に被告の死亡が判明するなど明白な誤りがある場合に限られ、異議は棄却される公算が大きい。棄却されれば、無期懲役とした仙台高裁判決が確定する。
 異議申し立ての理由について、花島伸行主任弁護人は「(被害者の血液などから筋弛緩剤成分を検出したとする)鑑定の手法に科学的裏付けがない上、試料を全量消費した鑑定の証拠能力を認めた高裁判決は、刑事司法の適正手続きを保障した憲法に反する」と説明。憲法違反などの上告理由がないとした最高裁決定は誤りだとした。弁護団は異議棄却で判決が確定した場合、再審請求する。
 最高裁は決定理由の中で「筋弛緩剤の点滴投与による犯行と認めた仙台高裁判決に、法令違反や重大な事実誤認は見いだせない」とした。守被告側は鑑定結果は誤りだと主張していた。
 一方、被害者の一人で現在も重体が続いている大島綾子さん(18)=事件当時(11)=の母恵理子さんは28日、代理人の弁護士を通じてコメントを発表。「最高裁の判断は当然のことと受け止めています。長い裁判にようやく決着がついたとはいえ、私たちが望んだ判決とは程遠く、複雑な心境です。刑が確定する以上、罪の重大さを受け止めてほしいと思います」と心境を述べた。

 被害者らは何も知らず、警察&マスコミがあれだけ言うんだから、筋弛緩剤マスキュラックスが原因なのだ、守大助が犯人なのだと確信し、その確信をもとに、そんなことを言うのだろう。
 痴漢冤罪の、痴漢の被害女性が、犯人とされた男性(冤罪被害者)が本当に犯人かどうか、本当は半信半疑な面もあるのに、「警察が犯人と言うからには間違いないんだ」と確信し、痴漢被害にあった当時の詳細など覚えていないのに、警察のストーリーどおりの被害者調書に署名・押印する…のと似ている。
 冤罪は、無実の者に罰金や有期懲役や無期懲役や死刑を科すだけでなく、被害者・遺族をだまして冒涜し、真犯人(およびデッチ上げがバレないかヒヤヒヤしている者たち)を笑わせ、安眠させるものでもあるのだ。

 以下は、2月27日付け河北新報の記事。

筋弛緩剤点滴事件 賠償訴訟が結審、5月に判決 仙台地裁
 仙台市の筋弛緩(しかん)剤点滴事件で、被害者の1人で泉区の少女(18)と両親が、殺人罪などに問われた准看護師守大助被告(36)=上告=に約5000万円の損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が26日、仙台地裁であり、結審した。判決は5月27日。
 少女側は「点滴に筋弛緩剤が混入されたことに疑いはなく、守被告の犯行は否定できない。医学的・科学的立証も十分だ」と主張。守被告側は「筋弛緩剤を検出した鑑定は誤り。少女の症状は疾患によるものだ」と反論している。

 これが、ひとつの大きな希望だ。
 最高裁まで行って有罪とされた事件について、それは違うと、言える勇気が民事の裁判官にあるかどうか、言ってもどうせ、高裁でひっくり返されるかもと思いつつ言える勇気があるかどうか…。民事は刑事とは、違うといえば違う。ひとつの大きな希望だと、なんとか思いたい。

 警察、検察、裁判所には、無罪を必ず無罪とする能力はないんだと思う。
 そもそも、ちょっと前に法務大臣が正直に述べたように、日本には冤罪などないのだ。
 だって、国家からしてみれば、有罪になったものは有罪だから有罪になったのであり、無罪なら無罪で落着するのだから、冤罪など存在しないのだ。国家の辞書に冤罪の二文字はないのだ。
 存在しないものを防ぐ方法などない。
 ここは、国会議員で、「冤罪防止法」の提出を視野におき、まずは、「冤罪の原因究明及び再発防止委員会」とかつくるほかないんじゃないか。そして、「知的障害者に自白誘導 誤認逮捕で慰謝料 宇都宮地裁」「当時16歳の元少年に「再審無罪」 地裁所長襲撃 大阪」、こういう事件が続々と出てくるいまが、チャンスなんじゃないか。

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