手首のひじに近いほうをつかんだと証言しながら…
803号法廷は、この廊下のいちばん北のほう。ずんずん歩いていくと、周囲は暗くなり、なぜか左右に赤ちょうちんやスナックが。裁判員制度の関連の、工事かしらん。803号法廷はどこだっけ、中華店の女性従業員に尋ねたところ、そこを右に折れた先だという。あそう、ありがとう。…んが、ここって中華店の店内ではないか。そこをぐるっと回ったところですよ、と女性従業員。窓外に、なるほど、ぐるっと回る通路が…って、大きな池の周囲の、あの朽ち木の柵みたいなのを伝って行くのか? ま、いいや。外へ出ると、雪。おぉう、これも風流か。朽ち木の柵を伝って行くと、やっぱしねぇ、足を滑らせ、池へどぶん。でも、幸い池は浅く、片足ですんだ。なんのこれしき。秋の枯葉が積もり腐ったような地面は柔らかく、気持ちが良い…。
それから、もう忘れてしまったが、これじゃあ開廷時刻に間に合わないかも! となる事件があって、目が覚めた。3時間しか寝てないにょ! 3日連続、裁判所の夢。かつてこんなことはなかった。裁判中毒、いよいよヤバイぞ(笑)。
11時30分から、5月9日に第1回を傍聴した「住居侵入・ストカー行為等の規制等に関する法律違反」の判決。
12分ほど前に行くと、すでに法廷前に10人近く。11時25分には満席(20席)。
判決は、懲役1年、保護観察付き執行猶予3年。
裁判官は、執行猶予と保護観察の意味を長々説明し、事件の内容には一言も触れなかった。好奇の目を輝かせる傍聴人の前で、被告人(身柄、拘置所)の所行を晒したくなかったとか? もしそうだとすれば、傍聴人の存在は刑罰効果となる、ともいえるんじゃないか。ふぅん。
11時35分閉廷。直ちに傍聴席に背を向けそそくさと奥のドアへ去る被告人を、その関係者(母親?)らしき女性が、ずっと立って見送っていた…。
警視庁へ寄り、8件開示請求。
国土交通省の地下の、新しい食堂で、和定食A。500円。うーん、悪くないとは思うのだが、懐かしの第5食堂ほどの満足感はない。第5食堂に魅入られし者の、これから放浪の旅が始まるのだ、なんつって。
13時10分から、東京高裁・刑事11部(池田耕平裁判長)715号法廷で、「道路交通法違反」の判決。
被告人は、チョーお年寄り。被告人席から証言台の前へ、よろよろ伝っていく、という感じ。2006年10月に無免許運転で懲役5月、執行猶予3年の判決を受け、本件は2007年6月の無免許。原判決は懲役5月。控訴棄却、当審の訴訟費用不負担。
裁判官「歳も歳だし、体も体だから、つらいとは思いますが、2度目は、やはり罪を償ってもらえわねば、というのが裁判所の判断です」
刑務所内で寿命を全うすることになるんだろうか。
その判決が始まる前に、あらま! 『裁判中毒』の175ページに登場する、元裁判官の弁護士さんが。次の「詐欺」の弁護人なのだという。
13時13分閉廷。
しかし私は715号法廷を出て、13時30分から、向かいの717号法廷(高裁刑事7部、植村立郎裁判長)、「埼玉県迷惑防止条例違反」の控訴審第1回へ。
埼玉から東京への電車内において、埼玉で痴漢して東京に入って逮捕された事件かな。否認かな。と傍聴してみたところ、電車内の痴漢かどうか不明なものの、否認だった。
検察官が、埼玉県の同条例を証拠調べ請求。原審ではそんなもの当然わかってる前提で、証拠としては調べなかったので、と。弁護人は同意。
弁護人も証拠調べ請求。被害女性の供述の変遷について。それは原審で主張すべきことなのだが、弁護人のほうは、そんなもの当然わかってると思ったら判決では無視されたと、どうもそういうふうなことらしかった。
その取調請求に対する検察官の意見は、「異議はございません」。私は驚いた。そこは「不必要」と述べるのが決まりじゃないの?
植村裁判長は、検察官に異議がないことも理由に挙げ、続行となった。あの検察官、なんで「不必要っ」としなかったんだろう。腹に一物ある、見所アリの人物?
13時46分閉廷。
一服しに降りた1階で、さっきの弁護士さんにばったり。
未決算入のこと、高齢服役者の処遇のこと、裁判になる度に反省・悔悟を誓い、しかしくり返す者を、有罪にして刑務所へ送ればいいのかということ、そういう人たちに対し、エリート検察官・裁判官がいくら偉そうに反省・悔悟を強いてもダメだということ、じゃぁどうあるべきか、等々の話を、楽しく興味深くさせてもらいました。勉強になるな~。つか、「じゃぁどうあるべきか」について、意見が一致したのが、ね。その話はまた今度。
14時から東京地裁・刑事20部(齋藤千恵裁判官?)431号法廷で、「器物損壊」の新件。
被告人(身柄、拘置所)は63歳。外見は暴力団っぽいのだが(実際、過去に暴力団員だったという)、背が高く小顔で、格好いい。人定質問で生年月日を言うとき、あれ? この訛り(なまり)は…と思ったらそうだった、本籍は石川県だった。おぉ~。
要するに、酒に酔って勤務先(建築・解体関係?)の事務所のアクリル看板(電灯入り)を、観葉植物の幹を持って叩くなどして損壊したんだという。
監禁致傷等で前科9犯、うち3犯は本件と同種の建造物損壊等。2007年10月に建造物損壊(等?)で懲役6月、執行猶予3年の判決を受けての、本件は2008年3月の犯行。
私も石川県出身。身びいきで言うわけじゃないが、この被告人の法廷供述は、非常に、なんというか、損得抜きで誠実に真摯に、真情を吐露しているものと思えた。
ただ、弁護人が弁12号証まで出したのには、おどろいた。
14時22分、被告人質問の途中で、私はそっと退廷。
東京高裁410号法廷で、5月12日に第1回を傍聴した「脅迫・威力業務妨害」の判決。広い法廷に、傍聴人は私を含め7人だったかな。
14時28分、弁護人が来た。被告人が来ない。弁護人が外へ出て、戻って書記官に「今連絡したんだけど…とれない…」と。14時31分、弁護人の携帯がブブブと鳴ったような音が聞こえ、弁護人は「もしもし~、あ~はいはい」とまた外へ。すぐ戻り、書記官に「出廷しない…」と。やり取りからして、出頭する予定だったのに、急に来ないことになったらしい。
14時31分、3人の裁判官が登壇。
主文、本件控訴を棄却する。
聴き取れたところによると、控訴の趣意は、審理不尽、事実誤認だったようだ。脅迫の構成要件不該当、脅迫の結果の不発生、脅迫の故意の不存在、威力業務妨害の構成要件不該当、認識の不存在といったことを争ったらしいが、中川武隆裁判長は1つひとつおそろしく簡潔に斬り捨てた。「(被告人側は)白と解釈すべき主張するが、事実自体が黒であることは明らか、よって白と解釈できず黒である」というふうな論法と聞こえた。当たり前すぎて…みたいな。「ねたみ」という言葉が判決中に何度か出てきていた。
14時41分閉廷。
急ぎ、さっきの「器物損壊」へ。なぜか529号法廷と間違えて回り道してしまったが、14時43分、そっと431号法廷へ戻ると、まだ弁護人からの被告人質問の途中だった。長っ。
前述のとおり、この被告人は非常に好印象で、検察官2人(男女)が、例によっての、失礼ながらエリート坊ちゃん、嬢ちゃんが机の上で考えました、みたいなパターン化した突っ込みをするのが、哀れに思えた。
14時55分、私はまた途中で退廷。
廊下を走って、冒頭の夢に出てきた803号法廷(高裁刑事5部。中山隆夫裁判長)へ。4月21日に控訴審第2回を傍聴した「窃盗未遂」(電車内でのスリ未遂)の、被告人質問なのだ!
睡眠不足で、途中少し、気を失うように眠ってしまったものの、16時16分までの長い被告人質問のなかで、決定的だったのは、犯行時は冬で被告人はダウンジャケットを着ていたのに、ゴトー巡査は現行犯逮捕する際、被告人の手首のひじに近いほうを両手で掴んだと、ダウンジャケットのことに一切触れずに証言してたことだ。真実は、ゴトー巡査とウチダ警部補が、被告人はスリ犯だ! と固く見込み、よっしゃパクってやろうと追尾し、被告人がリュックを持ち替えるため身動きしたところを、慣れないゴトー巡査がカーッとなって「スリだ!」とやってしまった(被告人の手の甲の部分を強く掴んだ)、ということである可能性が大いにある。被告人の供述には、かなり説得力があったと思う。
しかし、解釈じゃなくてそもそも事実認定については、「無罪の可能性については徹底的に疑い抜き、有罪の可能性を徹底的に探す」という日本の刑事裁判の大原則、そして、「被告人は検挙されたそのときから、机上で(書類の上で)だけ物事を考えたがる検察官・裁判官がどう突っ込むか、何を必要とするかを完全に俯瞰、予測し、状況の細部を完全に記憶して、その細部と些かでも異なる部分がある調書には、どう脅され誘導されようが、絶対にサインしてはならない」という鉄則からすれば、逆転無罪の可能性は低いというべきなんじゃないか。
でもね、それを「ズルイ」と言ってばかりじゃ、現実問題ダメなわけだ。そういう原則、鉄則を当たり前のこととして、争わねば。そうやって争ったのが、三浦和義さんかも。
本日の傍聴はこれでオシマイ。
最初のストーカーの判決をいっしょに傍聴した、六本木「まどまど」のまどかママといっしょに地下鉄へ。
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