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2008年6月 7日 (土)

5対4で死刑です、死んでください

 あっ、記憶が新しいうちに書いておかねば。
 昨日、有酸素散歩の終わりに、いつもの公園のベンチで休憩し、ジャーナリスト山口正紀さんの、裁判員制度についての論考を少し読んだ。ま~、この人は、たくさんの事実を踏まえて論理的にわかりやすく書くねぇ。たいしたもんだ。
 読むうち、先日裁判所の地下で買った『裁判員制度の正体』を電車のなかで少し読んだときと同じ疑問が、頭をもたげてきた。
 どっちも最初のほうを少ししか読んでない段階での、疑問だから、最後まで読んでからにしろよって言われるかもしんないけど(笑)。

 疑問というのは、こうだ。
 たとえば殺人事件を、裁判官3人と裁判員6人で扱う場合、法廷で審理し、結審すると別室で、有罪か無罪か、有罪なら量刑はどうするか、評議するわけだ。で、評議の結果をもとに、判決書きを書くのも、法廷で言い渡すのも、それは裁判官(3人のうちの1人、裁判長)のはず。
 評議の結果をまとめるってのは、けっこうたいへんな作業かもしれない。刑事の判決は、まず言い渡し、判決書きは後日被告人に、というのが普通らしいけど、だからって言い渡しがずさんでいいはずがない。けっこうたいへんなはず、たぶん。
 それでだ、たとえばさ、被告人は「俺は殺してない。無実だ」と争っていて、
    裁判官2人+裁判員3人――有罪
    裁判官1人+裁判員3人――無罪
 となったとしようよ。その場合、判決は、
「4人は、合理的な疑いが確かにあるので無罪と言ったが、多数決で、あなたは殺人を犯したことになりました。多数決で決めることになってるので、しょうがないです。あきらめてください」
 って言うの? うっそ、マジ?

 携帯電話の時計を見ると、16時過ぎ。
 急ぎ帰宅し、汗に濡れた衣服を洗濯しつつ、最高裁に電話した。
 用件を告げると、すぐに広報にまわされ、広報はすぐに答えてくれた。さすが、裁判員制度を推進するお役所だけあって、対応が良い。

 答えは? 答えはねぇ、多数決の内容がどうだったかは「評議の秘密」に当たるので、明かすことはできず、判決は、評議の結果、決まった結論だけでイクんだそうだ。うん、そりゃそうだわね。
 でも、つまり、9人全員が有罪と認定したかのような形になるわけだ。
 判決は、そのために別期日をとって裁判員に負担をかけるのもアレなので、たぶん、評議の結論が出たその日に言い渡すことになるだろう、とも聞いた。
 以下、「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」より抜粋。太字は今井。

(裁判員の義務)
第九条  裁判員は、法令に従い公平誠実にその職務を行わなければならない。
2  裁判員は、第七十条第一項に規定する評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。
3  裁判員は、裁判の公正さに対する信頼を損なうおそれのある行為をしてはならない。
4  裁判員は、その品位を害するような行為をしてはならない。

評議の秘密
第七十条  構成裁判官及び裁判員が行う評議並びに構成裁判官のみが行う評議であって裁判員の傍聴が許されたものの経過並びにそれぞれの裁判官及び裁判員の意見並びにその多少の数(以下「評議の秘密」という。)については、これを漏らしてはならない。
2  前項の場合を除き、構成裁判官のみが行う評議については、裁判所法第七十五条第二項後段の規定に従う。

(裁判員等による秘密漏示罪
第百八条  裁判員又は補充裁判員が、評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2  裁判員又は補充裁判員の職にあった者が次の各号のいずれかに該当するときも、前項と同様とする。
一  職務上知り得た秘密(評議の秘密を除く。)を漏らしたとき。
二  評議の秘密のうち構成裁判官及び裁判員が行う評議又は構成裁判官のみが行う評議であって裁判員の傍聴が許されたもののそれぞれの裁判官若しくは裁判員の意見又はその多少の数を漏らしたとき。
三  財産上の利益その他の利益を得る目的で、評議の秘密(前号に規定するものを除く。)を漏らしたとき。
3  前項第三号の場合を除き、裁判員又は補充裁判員の職にあった者が、評議の秘密(同項第二号に規定するものを除く。)を漏らしたときは、五十万円以下の罰金に処する。
                         ――以下略――

「俺は無罪だと思ったんだ。だけどあの裁判員が、こういう理由で強行に有罪だと言い張ってねぇ。あの人はだいぶ年寄りで、いったん思い込んだらガチガチで動かないんだよね。国家を背負って治安を守るんだ! みたいに気合いが入っちゃって。ちょっと待ってよと俺は思ったけど、長引くと裁判員に負担をかけるからっていうんで、多数決になってさ、5対4だったんよねぇ。そのあとは量刑の評議さ。こっちは無罪だと思ってるのに、有罪と決まったんだから頭を切り換えて、無期懲役か死刑か決めましょうってなってさ…」
 と家族に悩みを打ち明けても、6月以下の懲役又は50万円の罰金なのだ。刑罰があるってことは、逮捕・勾留・家宅捜索がくっついてくる可能性があるってことだ。

 元裁判官氏が、
「裁判員制度は、知れば知るほど、国民は不安になるんですよ」
 と笑っていたが、ほんと、ぞぞーっと不安になりますた…。

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