“狂犬”裁判官がまた爆発
ようやく、とりあえずいま目の前にある締切り原稿が終わった、ので今日の傍聴メモを。 ※画像は厚労省の地下食堂の定食。500円ぐらいだっけ。
9時50分から東京地裁・刑事8部(川本清厳裁判官)716号法廷で、「脅迫」の判決。
ピンクの半袖ワイシャツに、オレンジ系のネクタイに、白系の綿パン(チノパンっていうの?)で、上半身の横幅がえらく広い被告人だった。
交際していた女性から別れ話を持ちかけられ、その理由を知りたいとの思いから、「俺はあんたを許さない」「今日からあんたとあんたの周りの破滅を祈るよ」「してもらったこと、いつか利息をつけて返すからよ」等々の、暗に本人・周囲に危害を及ぼすことを告げる電子メールを送信して閲読・領置させ…というふうな事件らしかった。ドアを叩くなどのストーカー的な行為にも及んでいたらしい。
判決は、懲役1年、執行猶予3年。9時54分閉廷。
次は7階の720号法廷で10時10分からだ。その前に、今週の東京簡裁の開廷予定をチェックに。今週はまだチェックしておらず、もしも午前中に何かあったら大変だよと。
おお~! 今週は「道路交通法違反」の新件が3件もあり、1件は今日11時15分からではないか!
数分でチェックを終え、2階から7階へ行くため、エレベータへ。
東京・霞が関のこの裁判所合同庁舎のエレベータは、北側と南側にそれぞれ、
地階~8階のが数基、
地階・1階←(途中通過)→8階以上のが数基、
互いに向かい合ってあるところ(720号法廷は南側)、南側の「地階~8階」へのエレベータは、1基(新しくなった)を残して、ずいぶん前から工事中で、残った(つまり新しい)1基は、きれいなのだけど、ムカつくほど動きが遅いのだ。4~8階の法廷へ行く人がどっと乗るから混む、という事情もあるが、そもそも「閉」ボタンを押してもすぐにはドアが閉まらないとか、あらゆる部分が、昔のエレベータに比べて遅く遅く出来上がっているのだ。ちなみに日立製。
だから私は、通りかかったらたまたまドアが開いた(または、もうすぐドアが開くことが明らかな)ときしか、利用しない。たとえば1階から南側の5階の法廷へ行くに当たり、北側のエレベータを利用しないときは、南側の「地階・1階←(途中通過)→8階以上」のエレベータで8階へ行き、非常階段で5階へ下りるとか、そんなふうにしてる。
でも、今日は10時10分まで十分に時間があるから、少々待つのもたまには良かろうと、待ったわけ。
私が2階南側のそのエレベータの前へ立ったとき、階数表示のランプは4階あたりに点灯してたかな。それから1階ずつ、各階につきたっぷりの時間をかけて止まりつつ8階へ行き、同様に1階ずつ止まって地下1階へ行き、2階へ上がってくる…。うわぁ、こぉれは、時間に余裕があるときでないと、利用できねーよ!
10時10分から、東京高裁・刑事2部(安廣文夫裁判長)720号法廷で、「道路交通法違反」の控訴審第1回。原審は八王子支部のやつだ。
法廷に入ると、もう審理が始まっていた。あれ? 時計を見ると10時11分! うわ、あのエレベータを9分ほど待ったことになるのか?
南側の各フロアのエレベータの前で、土産物とか軽食とか売ったら、絶対大金持ちになれる予感。ビジネスチャンスは、どこにでも転がってるのだなぁ(笑)。
審理は、途中からなんで(たぶん10時10分より少し早く始まってたんだろう)よくわからなかったが、どうも、測定機(日本無線の光電式JMA-181)を設置した警察官を、控訴審で証人尋問することになるような…。
スピード違反で測定値を否認しての争いなんて、そんなもの高裁にとっちゃ、1回結審、2週間後に控訴棄却判決で十分、のはずなのに、ここんとこ続けて3件、証拠調べのため、しかも検察側の証人調べのため続行となってる。うーん…。
10時22分閉廷。
高裁の今週の予定をチェックしたのち、11時から東京地裁・刑事6部(合田悦三裁判官)724号法廷で、「道路交通法違反」の判決。
これもビックリ! 被告人は、見た目50代 or more の、背中の丸い、腕の太いオジサン乃至お爺ちゃん。
裁判官 「主文、被告人を懲役6カ月に処する。こういう結論です」
つまり実刑である。配送業務に就いていながら、前夜から翌午前4時頃まで、ビールと大量の焼酎を飲酒し、その1時間後に仕事のため中型貨物の運転を開始。昼食時に焼酎2杯440ミリリットルを飲酒、20分後にバイクと衝突する物損事故を起こしたんだそうだ。アルコール中毒(依存症)かと思われる。
検査値は0.99ミリグラム。しかし、歩行能力、直立能力には格別の異常はなかったそうだ。検査がいい加減だった可能性がある。けど裁判的には、そんなことは認められない。検査値は甚だしく高く、悪質である、とせざるを得ない。
聴き取れたところによると、前科は同種罰金前科が1犯のみらしい。それで懲役6月の実刑って、従来と比べると、かなり重いよ!
で、ビックリはその言い渡し中に起こった。
被告人は証言台の前で、最初からちょっと震えてる風だったのだが、やがて、震えを通り越して揺れ始め、揺れを通り越して、突き上げられるようにガクンガクンと上下し始めた。もう立ってられない。弁護人が横へ来て、合田裁判官が壇上から声をかけ、椅子に座らせた。
11時08分閉廷。
11時15分から、東京簡裁・刑事2室2係(小川利行裁判官)728号法廷で、「道路交通法違反」の新件。
久々のオービス事件だった。首都高速・中央環状線・外回り、足立区2-39付近のオービスⅢによる、超過56キロ(測定値116キロ)。
ところが、争いは何もないのだった。最初に警察へ出頭したときから、争いはなかったらしい。しかし、略式に応じず、正式なほうの裁判を求め、公判請求されたのだという。なぜ? 私みたいに、公判廷で被告人を経験してみたかったから? いや、そうではないらしい。だったらなぜ?
どうやら、取調べに当たった警察・検察の対応がぞんざいで、不信感を持ち、おそらくは警察・検察が正式な裁判になるのを嫌がる風が見て取れ、それで、略式でも正式でも結果は変わらないことを確認し、正式を求めて公判廷まで来てしまったと、そういうことらしかった。
説明不足とか、警察・検察の対応にムカつき、争いなどぜんぜんないのに公判廷へ出てきてしまう、そういうケースがときどきある。警察・検察にムカっ腹を立て、憎悪しつつ略式で終えてるケースは、何倍、何十倍もあるんだろう。
バカげてる。つか警察、検察が、個々の国民の実体験をとおして憎悪されるって、治安的にも非常に良くないでしょ。スピード違反の被疑者にどう対応すべきか、私が講演しましょうか?
11時43分、被告人の最終陳述が終わり、
裁判官 「はい、じゃ、結審して…通常ですと1週間後に判決するんですけど、記録も少ないんで、若干休廷して、言い渡すことにします」
と小川裁判官。壇上でしばし記録をぺらぺらめくり、判決。求刑どおり罰金8万円、訴訟費用は不負担。妥当な訴訟指揮だと思う。
11時48分閉廷。
最近お気に入りの、厚生労働省(などが入ってる合同庁舎)の地下の食堂へ。あそこは、前と変わったよね? 本日は、冷やし稲庭うどんとミニ丼(牛丼)のセット、480円。うどんには煮た油揚げと刻み海苔とほうれん草のおひたしとカマボコ1切れが乗り、大満足。
13時ちょうどから、地裁・刑事13部(戸倉三郎裁判官。きれいな白髪)510号法廷で、「傷害、建造物侵入、横領、道路交通法違反」の判決。
13時ちょうどからって珍しいな、と思ったら、ほんとは13時10分からなのに書記官が間違えて13時00分という開廷表をつくっちゃったらしい。
被告人(在宅。保釈中?)は、ひょろっと痩せて細く、妙な感じ。
公訴事実は、4ヶ月間あまりの間の、①杉並区下高井戸の中央道での80キロ超過と、②長野県内の中央道・西宮線での76キロ超過と、③オリックス・レンタカーを返還せず約1カ月半にわたり勝手に乗り回した件(横領)と、④下北沢のポーカーゲーム店でトラブルになり、店の者に対し催涙スプレーをかけ、殴った件(傷害)と、⑤ポーカーゲーム店へ侵入した件(建造物侵入)と、⑥茨城県内の常磐道での45キロ超過、の計6件。
ポーカーゲーム店については、現時点に至るも、相手がイカサマを謝罪するのが先だとの主張を維持し、自分のほうからは謝罪してないのだという。
被告人質問等がどんな具合だったのか知らないが、戸倉裁判官はこんなことを言ってた。
裁判長 「実力以上の結果を求め、背伸びしては挫折を繰り返し、無軌道な生活に…」
前科はないそうで、判決は、懲役2年6月、未決20日算入、保護観察付き執行猶予4年、訴訟費用負担。
13時19分閉廷。
13時30分から、同じ法廷で「道路交通法違反」の新件。
被告人は50歳の会社役員。2005年に免許取消処分を受け、2007年に無免許で罰金20万円の前科あり、で2008年3月、ベンツを無免許&酒気帯び運転。以前だと、今度も罰金ですんでおかしくない。もしかして、2007年の酒気帯び厳罰化以降、わりと簡単に公判請求するようになったのか。いや、本件は酒気帯びと合体なので、なんとも言えないが…。
14時21分、被告人質問の途中で出て…。
14時30分から、地裁の別々の法廷で「名誉毀損」と「危険運転致傷」の各新件があり、どっちを傍聴しようか悩んだのだが、自分が何者かをよく考え、後者へ。
地裁・刑事5部(山口雅髙裁判官)531号法廷で「危険運転致傷」の新件。
2008年5月、12時45分頃、足立区の谷中で、中型貨物を運転して信号交差点を直進する際、80メートル手前で赤信号を認めたが、帰宅を急ぐあまり、停止せず60キロメートル毎時の速度で進行、交差点出口横断歩道を左から右へ横断中の被害者(35歳)を見つけて制動措置を講じたが間に合わず、自車前部を衝突させ、全治約3カ月の骨盤骨折等の傷害を負わせたのだという。
被告人は“全赤”の間に通過できると思った、と言うのだが、時速60キロで距離80メートル…無理があるのでは? 警察がつくり上げた調書や報告書、どこまで信じられるのか、という気がした。でも、日本の裁判は、警察がつくって検察が法廷へ出してきたものは絶対に正しい、との前提で進行する。
弁護人による被告人質問が、だらだらしてた。山口裁判官が、不機嫌さをむき出しに、口を挟んだ。
裁判官 「もうよろしいんじゃないですか? 次の質問にしてください」
弁護人は、次の質問へ行く前に、さっきの質問の答を被告人に言わせようとしたのか、同じ質問をしかけた。
すると、さすが傍聴人の間で“狂犬”の異名をとる山口裁判官、もっのすごい剣幕で食いついた。
裁判官 「いや次の質問を!!」
文字にすれば大したことないが、ま~、ものすっごかったよ!!
そのあと、被告人に対しても、さらに激しく食いついてた。爆発的激情…のあとはいつも、人が変わったように穏やかになるんだよね。この人は、どこかで一歩道を誤ったら被告人席に座るはずだった人物かも…とドキドキしながら思ったよう。
被害者の症状がどうとかで、続行…。
青信号で横断歩道を渡っていた被害者には、法的には何の落ち度もないわけだが、本件で突っ込んできたような車は、ある確率で必ずいるのだ。それを意識しない人は(つまり、たぶん、ほとんどすべての歩行者は)、法的には何の落ち度もなくても、ある確率で必ず、突然に死傷させられることになる…。ま、これはねぇ、いつも警戒注意してても、そのときだけ注意を怠ってしまうこともあるし、小さな子どもがどこまでそんな警戒注意をできるのかという問題もあるわけだが、少なくとも、「法的には何の落ち度もないのだから警戒注意など不要」と言う人がいるとすれば、その人は、凄い…。
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