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2008年9月17日 (水)

「生きて」の部分で初めて声に力が

9月16日(火) その2

 

 エレベータを降りて東京地裁・刑事17部(市川太志裁判官)710号法廷の前へ行くと、うわ! 長蛇の傍聴人たちが傍聴席へ入っていくところだった。でもま、2人とも最前列に座れた。
 以下、一部を簡単にご報告。

 

 15時から、9月11日に第1回を途中から傍聴した「承諾殺人」(“タスポ殺人”)の、第2回公判。
 報道によればこの事件、殺害は7月2日頃で、被告人が母親を殺したと110番通報したのは4日午前1時半頃、なのだそうだ。

 

 前回、意見を留保とした検察官の書証について、弁護人は全部同意。
 すぐに、証人尋問が始まった。
 証人は、被害者(=被告人の母親。83歳)の弟で、昭和6年生まれ(つまり77歳)と聞こえた。
 証人は、アパートの家賃収入で暮らしてるようで、被告人と被害者とが生活していた住居兼(?)タバコ店の大家でもあるんだそうだ。被告人はカネを貸してくれとも言わず、その困窮ぶりを証人は知らなかったんだそうだ。
弁護人 「事件の内容を聞いて、どう思いましたか?」
証人  「驚いたんですけど、残念だし、可愛そうだし、情けないし、そういうような」
弁護人 「可愛そう、とは?」
証人  「■■■■(被告人)は可愛そうですよ」
弁護人 「なぜ可愛そうと思うのですか?」
証人  「私の姉の娘でもあるし…憎むことはできないですよ、どう考えても」

 

 こんなことも言ってた。
証人  「5、6年前、自動販売機が倒れて、救急車呼んで、本人(被告人は)死ぬ状態だったんですよ。今もボルト、肋骨に入ってて。胸と腰と××(聴き取れず)が、ダメになっちゃったんですよ」
弁護人 「自動販売機の下敷きになったんですね?」
証人  「そうです」
 うわぁ、被告人の体型はそのせいだったんだろうか…。

 

 そして被告人質問。
 被告人の言葉が、最前列からでさえ非常に聞き取りにくかったことを差し引いても、裁判という儀式に必要なことは、ほとんど述べなかったというか、そういう状態ではなかったように思う。

 

 検察官(髪を切った? どこか大人っぽくなったように見えた)は、証人尋問でも被告人質問でも、えげつない尋問・質問を、やろうと思えばいくらでもできたろうに、しなかった。
 求刑は懲役4年。
 若い弁護人は執行猶予付きの判決を求めた。

 

 16時00分、結審し、最終陳述。
 被告人が証言台の前に立った。
被告人 「(か細いか細い声で) ほんとうに……………………」
 市川裁判官がじっと聞き入る。
被告人 「(か細いか細い声で) これから……………………」
 何かをしたいと思う、旨言ったようだったが、まったく聞き取れなかった。
 裁判官も聞き取れなかったようで、「ちょっとごめんなさい」と再度尋ねた。
 被告人は何か述べたが、やはり聞き取れなかった。

 

 被告人が被告人席へ戻り、裁判官が言った。
裁判官 「その場でもいいですから、言いたいこと、言っていいですよ、考えます?」
 こういう場で最後に何を述べたかは、被告人のその後の人生に、少なからず残る可能性がある、それなりのものを残してあげたい、というふうなことを裁判官は思ったんじゃなかろうか。

 

 しかし被告人は無言。表情に動きはない。
 弁護人が席を立ち、被告人の前に屈んで、何か話しかけた。16時04分。
裁判官 「被告人がこの法廷で話すのは、最後の機会になります。立って言いにくかったら、そのままでもいいですよ」
 沈黙の時間が流れ、被告人は、どうしていいかわからないふうに立った。そしてまた、どうしていいかわからないふうに座った。裁判官は待った。
 被告人が口を開いた。こう聞き取れた。
被告人 「…これから、母のために、思って、十分反省し……生きていこうと思っております」
 「生きて」の部分で、顔を上げ、初めて声に力を込めた、ように聞こえた。
 第1回公判のとき私は、「人を殺した者の世界へイッてしまった」ような印象を受けたが、「生きて」の部分に、なんだか涙が出そうになった…。
 16時05分閉廷。

 

 9月16日の、光電式のネズミ捕り裁判についての記事を、ふとした気まぐれで、コメントを受け付ける、にした。その裁判の被告人が補足のコメントをつけてくれてる。

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