タスポ殺人――人を殺してしまった者の世界へ
9月11日(木)
大失敗! 7月10日に控訴審の第1回を、8月7日に第2回(警察官を証人尋問)を傍聴した「道路交通法違反」(レーダ式50キロ超過)、の第3回が10時からあったのに、手帳に書き漏らして…。
11時から東京高裁・刑事2部(安廣文夫裁判長)720号法廷で、7月15日に控訴審の第1回を、8月21日に第2回を傍聴した「道路交通法違反」(光電式。超過40数キロ)の第3回。
よくわかんないんだけど、たぶん、もう十分に控訴を棄却できる状態になったということなのかな、結審して次回(9月25日10時50分)判決。11時11分閉廷。
じつは11時05分から、地裁・刑事17部(市川大志裁判官)710号法廷で、珍しい罪名、「承諾殺人」の新件があった。
傍聴券交付ではないけど、たぶんこれは、30分くらい前に行ってないと傍聴できないだろう、しかし私の専門は「道路交通法違反」だもの(byみつを)、と諦めたわけ。
でも、同じ7階なので、念のため710号法廷を覗いてみた。
被告人の姿が、斜め後ろから見えた。茶パツをポニーテールにした、細い女性だった。30代くらいかな。いったいどんな「承諾」をしたんだろ…。
そして、案の定、満席。広いほうの法廷なのに。
帰ろうとしたとき、見知りの職員氏が710号から出てきた。いっしょに幹廊下へ出ながら、ちょと話したところ、休廷だという。え? まだ10分ちょいしか経ってないのに? ふり返ると、阿曽山大噴火さんが、どうしても見たい別件があるんだろう、急ぎ出てきて去った。
これも職員氏に聞いたんだったか忘れたが、11時50分まで休廷だという。
へぇ~! そしたら、出たまま戻らない傍聴人が少なからずいるはず。10分ちょいしか経ってないのに、なぜ30分以上も休廷なのか、興味が湧いた。じゃあ、傍聴してみよう。
1階で、簡裁刑事、高裁刑事、地裁刑事と民事の開廷表をざっとチェック。
11時23分頃、720号法廷へ行くと、最前列中央付近が空いてた。ラッキー!
50分まで、だいぶ時間がある。休廷前の10分ちょいで、いくらなんでも人定質問は終わってるはず。被告人の生年月日など、左隣の若い女性に尋ねようかな。でも、恥ずかしいよぅ。
で、傍聴ノートに、ここまでの経緯(いきさつ)を書いてたら、その女性が、さらに左隣の男性2人と話してた。いっしょに傍聴に来た、クラスメートらしい。女性が、こんなふうなことを言った。
「(傍聴に)来る前に、サイバンボーチョーチュードクだっけ、本を読んだの…」
ええ~っ!! こっ、これはチャンス。私がその本の著者ですと話しかけ、人定事項を尋ねた。3人は、とくに女性のほうが、すんごく驚いてた。そりゃそうだよね。あはは。
被告人は昭和24年生まれだという。59歳か。ドアの覗き窓からは30代くらいに見えたのに。住所はあり(つまり不定でない)。職業はタバコ屋。罪状認否で公訴事実を認めたが、なんだかしゃべれなくなり、弁護人と話し合うため休廷になったんだという。へぇ~、そうだったんだ、ありがとう!
ちなみに3人は、法学部の学生だそうで、傍聴した内容をあれこれ書くための小ノート(先生から配布されたのかな)を見せてくれた。写真を貼る欄もあった。たしかに裁判所へ行ったことの証拠を付けさせるのか。いいな~、私もそういうの欲しいよぅ(笑)。
などと勾留もとえ交流するうち11時47分、被告人が入廷。
身柄(拘置所)。なんと言っていいのか、はっきりした顔立ちで、病的な痩せ方で、70歳くらいに見えた。人を殺してしまった者の世界へ、行ってしまってる…そんな印象を受けた。
11時48分、市川大志裁判官が登壇し、審理再開。
弁護人がまず述べた、実母を殺害したことについて明確な記憶はないが、公訴事実については争わないと。
手続きは冒頭陳述へと進んだ。つまり、罪状認否の段階でストップしてたわけだ。人定事項は学生さんたちから聞けたし、私からすれば、ほとんど最初から傍聴できたのと変わらない状態になった。
冒陳の内容は、おおむねこんな感じだった。
1998年に煙草屋を始め、2002年頃から更年期障害となり、2008年6月頃から、自宅前の解体工事の騒音に不安を覚えるようになり、同年7月1日からのタスポ導入により売り上げが半減するのではないかと不安になり、自殺しようと思うようになった。が、被告人がいなければ食事も1人でできない老齢の母親を残して死ねない…。
タスポ導入後、店に常時いて、自分のタスポカードをお客のために使ったりしていたが、苦痛になり、生活が苦しくなり、閉店しようと思うに至った。閉店したいと大家に言ったが、反対された。もう死ぬしかないね、お前といっしょなら死ねる、お前にばっかり苦労をかけてすまないね…。
犯行当日、まず、飼い猫の首を絞めたうえ、風呂の水に沈めて殺した。楽に死にたいと、睡眠薬や殺鼠剤を飲んだ。風呂場へ行き、着衣のままの母親を浴槽に入れ、水を溜め、母親の頭を沈めて殺した。自分は刃物で手首を切ったが死にきれず、110番通報した…。
うわぁ、なんてこった。こういうのを傍聴するのは苦しい…。
細々と、かろうじて成り立っていた生活を、タスポが破壊し…もちろん、それゆえにみなが死を選ぶわけではないとはいえ、タスポが死へと後押しした、とはいえるんじゃないだろうか。
うちの近所の酒店は、タスポ導入でタバコの売り上げが2割に減った(2割減ったのではなく、2割に減った)と嘆いてた。
タバコの害がどうこうは、それはそれとして、タスポのおかげで生活が苦しくなった零細煙草店は、全国にそうとうあるんじゃないか。コップから水があふれて自殺や殺人へ踏み出すとすれば、なんとかあふれずにとどまっていた状態に、タスポはどぼどぼっと水を注いだ…でもまだまだあふれない、あるいは、あと1滴であふれる…そんなことが全国であるんじゃないか。一方、タスポのおかげで大もうけした連中もいるんだろうか。
とりあえずこれ、“タスポ殺人”と呼んでおく。
検察官請求の書証について、弁護人は意見を留保し、続行。11時55分閉廷。
今日は裁判所の地下で、A定食(親子煮)460円。
13時20分から地裁533号法廷で、第1回を見落とした「公然わいせつ」の判決がある。公園や電車内で陰茎を露出したのか、ハプニングバーか何かなのか、内容だけチェックしておきたい。
しかし13時30分から地裁719号法廷で、8月27日に第1回を傍聴した「強制わいせつ」の審理がある。色情系は人気があるし、719号法廷は傍聴席20席。15分くらい前に行っておかないと座れなくなるおそれがある。
運良く礼田計さんに会い、「公然わいせつ」のチェックをお願いして…。
13時18分頃、719号法廷へ入ると、第1回とは違う弁護士が弁護人席に。あれ? 20分から「有印私文書偽造・同行使」の判決があるのだった。←開廷表をよく見とけよ。
被告人が、30分からと間違えたそうで数分遅れ、判決言い渡し。懲役1年6月、執行猶予4年、交通事件原票の偽造部分を没収。
え? 事件原票って、交通違反なのか。
なんと、免許不携帯で捕まり、行政処分を免れるため、他人の氏名を署名したんだという。そ、そんな! 免許不携帯は違反点数がなく、行政処分には何ら影響しないのに!
私に相談してくれよ。って現場じゃそりゃムリか…。そういえば以前も、交通違反に関係する昔からのデマを真に受け、息子を殺してしまった「殺人」があったなぁ…。
そもそも交通違反・取締りについての無知やデマや迷信からくるトラブルは少なくない。嗚呼、しっかり仕事しなければ、と思ったス。
13時32分頃から、「強制わいせつ」の審理。
謝罪および示談交渉のための被害者との接触は、結局できなかったと弁護人。その経緯を踏まえて5分ほど被告人質問をやり、論告・弁論。
求刑は懲役2年。前科・前歴なし、妻の監督も期待できるので、執行猶予がつくだろう。13時47分閉廷。
帰るため玄関を出ようとしたら、午前の光電式の被告人とばったり。非常に興味深い資料(書証じゃないっスよ。笑)を見せてもらい、地下のコンビニで一部コピーさせてもらった。ありがとね。あとで当ブログでにアップしよう。
礼田計さんからメールあり。13時20分からの「公然わいせつ」は、電車内で女子高生に陰茎を見せたというもので、同種および痴漢の前科が3犯あり、判決は懲役4月だったそうだ。ありがとね。
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