腹は八分目、欲も八分目
暗い廃工場のような建物の中。
犯罪組織の男が1人、上腹部の高さの、長い白い塀のような構造物の、そのへり(上辺)に、どこか上のほうから照射される光の文字を、確定する作業をしている。大量の麻薬を取引するための、符丁か何からしい。
その男の右斜め後ろ、建物内の制御室のような部屋に、女が1人いて、確定された文字を遠く読みとり、密かにキーボードに打ち込んでる。
組織の男に気づかれたら、間違いなく殺される。なのに、女の後ろには、また別の、背広の男がいて、拳銃を女に突きつけている。入力を強要している。逃げられない。
やがて女は気づく。自分がいる制御室のようなその部屋は、まぶしいほどに蛍光灯が点いている。組織の男がふり返れば、たちまち見つかってしまうではないか! 顔を隠しても、キーボードを打つ手が見えてしまう。
女は白いキーボードの左右にそっと手を添え、下げる。そのとき、コードが動いて微かな音が。やばいっ! 女は頭を抱えてうずくまる。
背後の背広の男が、拳銃を手に、作業を続けろと責める。女は声をたてられず、うずくまったまま、頭を抱えた右手を、「ダメ、見つかった!」というふうに振る。
組織の男は、武器を持ち、物陰に身を隠したようだ。仲間を呼んだに違いない。
背広の男は、単身で彼らと戦うはずだ。女は背広の男に、自分にも拳銃をくれと言う。だが、拳銃は1丁しかない。あっても、女には渡さないだろう。
背広の男は制御室から走り出していく。1人残された女は、背広の男と反対方向へ逃げだす。
外は雨だ。夜の、冷たい雨。
自転車置き場のような、古い木造の建築物の裏側を、俺は走って逃げる。正門から出て、用水路の両側にある広い道路を越えると、そこに警察署がある。警察署へ逃げ込もう。
組織の男の仲間が、建物の屋上からライフル銃で狙撃してくる。雨を切り裂き、足下に着弾する。うわぁっ! 俺がパニックに陥ってるせいか、銃声は聞こえない。水たまりに水しぶきが見えるだけだ。
ときどきわざと転げたりしながら、俺は必死に走る。警察署の玄関は狙撃手から丸見えなので、裏口から駆け込む。俺は、よく通る声で叫ぶ。
「麻薬取引の連中が銃撃戦をやってます!」
「どこで!」
「■■小学校です!」
そう、あれは廃工場ではなく、建て替え前の小学校なのだ。
俺のしっかりした口調と緊迫感に、みなが注目する。私服、制服の警察官たちがドッと集まってくる。出動だ! 俺もあとに続く。
見知りの警察官が、俺に声をかけてきた、ニヤリと笑って。
「ほんとなら、10人(しか出動しない)ってことはないんだよ」
そのニヤニヤ笑いの意味に、俺はハッと気づく。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 統合失調症の妄想とかは、私もずいぶん相手にしてきてる。これはそんなんじゃないっすからね!」
警察官は、いっしょにパトカーへ向かいながら、さらに言う。
「心がひと煮立ちしたあとなんか、危ないんだよ」
ひと煮立ち…。私は、小さな手鍋の中で何かの煮汁がわっと吹き上がるのを思い浮かべる。
え…? 話の最初の頃、私は女だった…なぜ? そう気づくと、あの恐怖の体験が急に遠くなっていった。
わ、私は、狂ったのか? 人の心は、脳は、こうやって“境”を超えてしまうのか? 私も超えてしまったのか
うわぁ~~~っ![]()
そうして、目が覚めた。
覚めると、これは警察に対する業務妨害になるのか? と気になった。虚偽の事柄をあたかも事実であるかに申告し、警察官10人を出動させ、もって本来の業務を妨害した…と。
申告人が精神病の場合、どう運用するんだろう。判例はあるんだろうか。もう眠れなくなった。
時計を見ると、午前6時前。寝たのは3時半頃なのに。
嗚呼、これじゃあ、裁判所へ行けない。ムリに行けば、死んじゃうかも。
今日は地裁で、毒蛇の判決と、池袋のナンパ男を刺し殺すとかいう業務妨害の新件と、否認かもしれない迷惑防止条例の審理と、道路交通法違反の新件と、「ファイヤー」を名乗って放火予告をしたとかいう業務妨害の新件が、ダブることなく、うまい具合に続けてあるけど、嗚呼、ここはすっぱりあきらめよう。
じつは私、裁判傍聴は交通違反・事故に集中し(つまり初心に返り)、空いた時間の傍聴は、“裁判は窃盗に始まり窃盗に終わる”との格言に従い(って私が勝手に言ってるんだけど)、窃盗だけに絞ってしまおうかと、悩んでいるのだ。
だぁって、あれもこれと好奇心を広げたら、きりがない。パンクしてしまう。
多くの裁判傍聴から導かれる教訓は、目先の欲望等のままにムリを重ねれば、きっと破滅するってこと。腹は八分目(はちぶめ)、欲も八分目、分をわきまえて地道に行け、である。
夏辺りからだっけ、ちょっと裁判所へ通い過ぎたよ。あの夢は、ずるずるムリを重ねようとする私を立ち止まらせるための、守護霊の配意なのかもしれない、そう受け止めておこう。
すっぱりあきらめて空を見れば、良い天気。少し寝るです…。
「腹八分」(はらはちぶ)。日本ならでは素晴らしい教訓だと思う。日本には、グロバリぜーションとか資本主義とか、似合わないんじゃない?
貝原益軒の書にならうなら、「珍美(ちんび)の裁判に対するとも、八九分にてやむべし。十分に飽き満つるは後の禍(わざわい)なり」。犯罪が「珍美」ってのは語弊があるけど。
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コメント
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ぬわにぃっ!?
君は見るからに怪しいから、かもしれん。じゃあ、私が…。いや、食堂利用はダメと報道されてたんだっけ? なら善良・聡明な紳士風の私もダメじゃん。
今回の事件について、佐木隆三さんの見解が今日の朝日新聞朝刊に載ってる。佐木さんの、犯人像の推測、私は肯ける気がするよ。
投稿: 今井亮一 | 2008年11月20日 (木) 17時42分
今日も5号館に入れませんでした…
投稿: 名前 | 2008年11月20日 (木) 17時20分