罰則付きで国民を強制動員すること自体が目的
ところで…。
裁判員制度実りある改革に 仙台高裁長官会見
仙台高裁長官に11月25日付で就任した千葉勝美氏(62)=写真=が1日、高裁で記者会見し「司法制度改革の大きな柱になる裁判員制度が来年5月に始まる。国民と裁判所の距離をできるだけ縮め、改革を実りあるものにしていきたい」と抱負を語った。
と12月2日付け河北新報、の一部。
裁判員制度は、「司法制度改革の大きな柱」なんだという。
「改革」というからには、何か良さげなものなんだろう。
ただ、誰にとって良いのか。国民にとってか、国家にとってか、もっとべつの何かにとってか、判然としない。けど、ま、国民の多くが望んでないことは、当局の調査によってもハッキリしてるんだから、これは国家にとって良い「改革」なんだろう。
ま、それはそれとして、改革の「実り」とは何か。
「国民と裁判所の距離をできるだけ縮め」ることは、「実り」そのものなのか、それとも「実り」のひとつなのか、あるいは「実り」への道筋として位置付けられるのか。
「国民と裁判所の距離をできるだけ縮め」る…。
物理的な距離を縮めるなら、渋谷簡裁とか、新宿簡裁とか、かつて統廃合でなくした簡裁を復活させるという手もあるが、これは物理的な距離のことを言ってるんじゃないだろう。
心理的な距離を縮めたいなら、何よりもまず、土日(祝日を含む)開廷でもって、普通の生活者による出頭や傍聴を容易にすることだよね。
あと、「この証拠関係じゃどう見たって無罪でしょ」ってものを粛々と無罪にしていけば、国民と裁判所の心理的な距離は、大いに縮まるだろう。
裁判官に、「あれは無罪だと私は思っていたが、書いたのは有罪判決だった」と、もっと語ってもらうとか…。
しかし、そんな方向へは全く進まず、国が始めたのは「裁判員制度」。罰則付きで国民を強制動員する、大がかりな制度なのである。
毎度言うけど、裁判員制度の「目的」は、「裁判が身近になり、国民の皆さんの司法に対する理解と信頼が深まること」なのである。
「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」(通称裁判員法)の第1条は、こうなってる。太字は今井。
(趣旨)
第一条 この法律は、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することにかんがみ、裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)及び刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の特則その他の必要な事項を定めるものとする。
だから、千葉勝美・仙台高裁長官がいう「国民と裁判所の距離をできるだけ縮め」るとは、「実り」そのものであると、判決風にいえば、解するのが相当である。
しかし、ちょ待てぇよ、そぉんなことのために、罰則付きで国民を強制動員する、こぉんな大がかりな制度を。こりゃ絶対おかしっス。狂ってるとしか思えないんですけどぉ~!
やっぱ、罰則付きで国民を強制動員すること、そのようなシステムを「国民参加」の名のもと、新たに打ち立てること自体が、国家にとっての「実り」?
◆ 裁判員制度はいらない!大運動 ◆
11月28日、最高裁からの通知(裁判員候補者名簿搭載通知)が一斉に発送された。その通知が続々と国民へ届いてる、と報じる朝日新聞の記事を読んで、ありゃりゃん? となった。
私は戦後生まれだから昔のことは知らないが、徴兵の召集令状(通称赤紙。あかがみ)が届いたときも、新聞はこんなふうに、つまり、人や立場によっていろんな事情や感じ方はあるけれども、しかしみんな粛々と国民の義務を果たそうとしてる、みたいな報じ方をしたんだろうか、と。
あとで、戦中生まれの人に聞いたら、当時、赤紙が届いたことは報じちゃいけなかったそうだ。誰が選ばれたか、家族などには言ってもいいけど、大っぴらにするのは禁止だったそうだ。あらま、今回の最高裁からの通知と同じだ~。
いくら刑事裁判は崩壊してるっていっても、だからってこんなバカげた制度を国が始めようとするとき、もう始まるって決まったんだから頑張って良くしていこうみたいな、その色に、全マスコミが染まってるって…前の戦争のときもこんなふうだったの?
『冤罪File』(定価380円。安っ!)を、裁判所への往復の電車で、あっという間にぜんぶ読み終えた。
「特急あずさ窃盗冤罪事件」を読んでびっくり! 2005年10月18日、一審無罪の判決を言い渡したのは、東京簡裁・刑事1室2係、浅見牧夫裁判官だっていうじゃないか!
私は2004年から2006年にかけて、浅見裁判官の裁判を13件、傍聴してる。当時は東京区検のオービス公判請求が多くて、13件のうち11件はオービス事件だ。
首都高・湾岸線東行きのオービスⅢLkの否認事件で浅見裁判官は、じつはオービスが怪しいことに気づいたようで、現場を検証をしたいと言い出した。実現はしなかったものの、そんなことを自発的に言い出すこと自体、ほとんど前代未聞。どっひゃ~ん!! と仰天したものだ。
そうか、あの浅見裁判官が、『冤罪File』収載のその窃盗事件で、なんと電車内で現場検証をやって、無罪を言い渡していたとは、へぇ~! 当時の私の傍聴は、今と違って、ほんとに「道路交通法違反」専門だったので、こんな窃盗事件の審理が826号法廷で行われてたとは、ぜんぜん知らなかった。
で、その一審無罪をひっくり返し、否認してるからと実刑(懲役1年2月、未決60日算入)としたのが、東京高裁・刑事7部の植村立郎裁判長と、荒川英明裁判官(右陪席)、伊東顕裁判官(左陪席)だという。
記事によれば、被告人は前歴なしだそうで、ならば相場的には執行猶予が当たり前。にもかかわらず実刑とされたのは、否認だからというだけでなく、一審無罪への見せしめの意味も多分に込められてたんじゃなかろうか。
うわぁ、荒川裁判官、そんな合議に加わってたんだ、可哀想に。
浅見裁判官は、当ブログでも書いたように(『冤罪File』の当該記事にも書かれてる)、その後、八丈島簡裁へ移動になった。
漏れ聞くところによると、八丈島簡裁の勤務はだいぶ人気だそうで、あの飄々(ひょうひょう)とした感じの浅見裁判官は、自ら望んで幸運にも八丈島へ行けたのかな、と私は想像していたが、その人事には、たかが窃盗で実況見分までやって無罪(=のちに高裁により200%ぶっつぶされる判決)を言い渡したことが、もしかしたら関係してたのか…。
ま~、『冤罪File』は面白いわ。これで380円は安すぎっ! これがどんどん売れれば、「司法に対する国民の理解」は大いに深まるんじゃない?
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読んだよ、ありがとね~。
投稿: 今井亮一 | 2008年12月 7日 (日) 23時36分
明日発売の週刊新潮12月11日号に
“こんなものやめろ「裁判員制度」7つの大罪”
http://www.shinchosha.co.jp/magazines/nakaduri/441/
投稿: 名前 | 2008年12月 3日 (水) 23時05分