駐禁取締りは純粋なカネ集め
原稿締切りが17日だと、16日の夜に気づき、17日(金)は裁判所へ行かなかった。簡裁で15時からの「器物損壊」、傍聴したかったのに…。
その原稿が終わり、古いニュースを読んでるとこ。
車3台を公売し滞納金強制徴収 放置違反で県警
駐車違反による放置違反金を支払わず滞納し続けたとして、県警駐車対策課は9日、尾張旭市のアルバイト男性(60)と、名古屋市西区の人材派遣業男性(38)の軽乗用車計3台を差し押さえ、公売で約85万8000円で売却する強制徴収を行った、と発表した。
発表によると、アルバイト男性は2006年11月から08年10月にかけて計38回、人材派遣業男性は06年6月から08年11月にかけて48回の駐車違反をした。警察の指導も無視し続け、「車を持って行け」「絶対に払わない」と反発するなど悪質と判断、それぞれの車を売却して放置違反金に充てることにした。
車3台の競争入札は8日、名古屋市昭和区の放置駐車対策センターで行われ、いずれも見積もり価格より約6万円から15万円高い金額で売却された。
強制徴収は2006年施行の改正道交法で設けられた制度。これまでに約400人から、預金や給与、生命保険などを差し押さえ、約2990万円を徴収している。同課では「今後も悪質な滞納者は徹底的に処分する」としている。
(2009年4月10日 読売新聞)
無視し続けて「車を持って行け」「絶対に払わない」だなんて、取締りによっぽど腹が立ってたのかなぁ…と推察される。
実際、ニュー駐禁取締りにものすんごくムカついてる人は多い。この本に、「ドライバーや通行人から投げかけられた数々の言葉」が載ってもいる.
でもねぇ、それら腹立ちは“誤った幻想”に基づいてるんじゃないか。
善良な運転者諸氏は、違反の悪質、危険、迷惑性とか、子どもやお年寄りの送迎のための、あるいは公衆トイレへ寄るための数分の駐車にすぎないとか、そういったことで、取締りが妥当かどうか、納得いくかどうか、考えがちなんだろうけど、ニュー駐禁取締りにそんなことは一切カンケーないのだ。
ニュー駐禁取締りは、純粋なカネ集め事業なのだ。
これは、皮肉で言ってるとか、そういうんじゃない。
2003年12月6日付け毎日新聞の報道、の一部をまた引用しとこう。
小泉純一郎首相が指示した国から地方への補助金一兆円の削減を実現するため、駐車違反の反則金(年三百億円程度)を国から地方に移管し、二〇〇四年度の補助金削減実績に算入することが六日分かった。政府は年明けの通常国会に道路交通法など関係法改正案を提出、成立を前提に補助金削減実績に計上する。制度として反則金が地方自治体の財源となるのは〇六年度からの見通しだ。
「反則金」は駐車違反以外からも徴収でき、国庫に入ることに決まってる。だから、地方の財源にするカネに「反則金」の名称を用いることはできず、「放置違反金」となり、「見通し」のとおり2006年6月1日からスタートしたわけ。
これは、国から地方への補助金を1兆円も削減するのと引き替えに、独自財源として地方に与えられた、駐禁取締りの形をとった純粋なカネ集め事業なのだ。
違反の迷惑性とか、酌むべき情状とか、そんなこと言ってたら、カネはスムーズに集まらない。タイヤと路面にチョークで印を付けて15分なり30分なり待つとか、そんな悠長なことはしてられない。
だから、外形的に違反だったら直ちに取り締まるようにし(つまり訓練を積めば誰でも取締りができるようにし)、じゃんじゃん取り締まる(=カネを稼ぐ)よう民間委託もしたのである。
駐車監視員は、そのシステムの末端の、シンプルなロボットというべき立場であり、駐車監視員に怒りをぶつけても、まったく空回りだ。駐車監視員がつらくて心を病んでも、システム自体は痛くもかゆくもない。シンプルなロボットの替わりは、いくらでも居るんだから。
なわけなので、運転者の側としては、迷惑駐車をしないのは、それはもう当局がどうこうには関係のない、運転者に課された当然の責務としたうえで、路上駐車をするに当たっては、うまくずるく、駐禁ステッカー(放置車両確認標章)を貼られないよう、貼る直前までには車へ戻るよう、しのぐべし、立ち回るべし…という社会になったのだ。
ただね、当局が自分らのカネ稼ぎに都合が良いよう法律を勝手につくり、正しいことをやってるかのように装って、莫大なカネを汚く稼ぎ、こっちはうまくずるく立ち回る(真相を知らない人は、ひたすら腹を立て、警察などを憎む)…というのでは、社会全体のなんつーか荒廃が深まるっつーか、深いところで社会全体がじわぁっと悪くなるんじゃないか。たとえば、絶対正義のヒーロー(そんなの悪魔に決まってる)の登場を熱望し、登場したら熱狂するとか、そうしたことも心にとどめておくべきと思う.
この本、ちょうど半分くらい読んだとこ。
まぁね、「なるほど、パーメの料金未納のあのことはあえて書かないんだな」とかあるけど、そういうのを超えて面白い。私としては、とくに“駐禁詐欺”ともいうべきエピソード、面白かったよぅ。
著者は本物の元駐車監視員で間違いなかろうと思う。
雑誌で対談をやりたいょ。
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コメント
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御本、面白いですよぅ。反対車線から叫びながら命がけで横断してくる運転者ってのも、すごかったですねぇ。
奥付に、「…にわたる勤務の総決算」とあったので、てっきりもう退職されたのだと思ってました。
駐車監視員には“使えないオッサン”もけっこういると聞いてます。松木さんは若くて有能で、心が折れてないので、会社としては手放したくないんでしょうね。
しかし、あんな本を出してブログまで設け、会社や警察の意見は2分してるんじゃないですか? ま、いずれ誰かがそんなことをやるだろう、この者のやり方なら好都合だ、みたいな感じなのかな現在のところは…と想像してます。
もしも対談が実現したら、罵りあいの大喧嘩になったりして? 楽しみですね~
投稿: 今井亮一 | 2009年4月19日 (日) 12時40分
またまた私のデビュー作である
『となりの駐車監視員』を紹介していただき、
まことにありがとうございます。
今井先生に「面白い」と評価していただき大変
光栄です。
私は、現在銀座とは別のエリアで現役の
駐車監視員を続行しております。
雑誌で対談していただける日を楽しみにしております。
投稿: 松木和哉 | 2009年4月18日 (土) 23時02分