この無罪、もしもしょぼい公然わいせつでなかったら
6月26日(金)
13時30分~14時30分、東京簡裁・刑事1室1係(虎井寧夫裁判官)、「公然わいせつ」。
第1回公判は4月24日、第2回は5月8日、第3回は6月5日、第4回は6月19日。そしてとうとう今日が判決。
今日は地裁の開廷が少ない。「わいせつ」の文字に引き寄せられ、学生諸君が集まってくるんじゃないか。この判決をもしも傍聴できなかったら、もう人格崩壊…今度こそ悪魔に変身するかも…。
だもんで朝5時から裁判所の門前で…つーのはウソだけどさ、12時50分に826号法廷の前へ行った。
だぁ~れもいなかった。
けど、1階の喫煙所で一服、なんてできっこない。法廷の前で、来週の傍聴予定を組みながら、待った。
13時を過ぎた頃か、見慣れない男性3人、女性2人が来た。
女性の1人は「P.R.O」の文字のある入館証をぶら下げてる。検察庁の職員かな。なんだ?
※追記: 2番目の文字が1番目の文字にヒゲが生えたような形だったので「P.R.O」と読んだのだが、よくよく見れば、「R」じゃないぞ! 聞くは一時の恥、検察職員に教えてもらった、これは「P.P.O」、パブリック・プロシキュータ・オフィスの頭文字なのだと。
13時15分、法廷の施錠が解かれた。
入ってびっくり。傍聴席の右側、検察官席の側の7席ぐらいにだったか、背もたれに「関係者席」とプリントされた白い紙が。ええっ? なに?
鞄を席に置き、いったんドアの外へ出てマニア氏と少し話し、戻って「関係者席」を数えると、6席になっていた。あれ? 減らした? ま、いいや。
13時20分過ぎ頃、「関係者」と思しき男女(さっきの計5人を含んでいたはず)が7席を埋めた。一般傍聴人もぽつりぽつりと来て、10席が埋まった。
残り3席も、その後埋まった。
13時25分、弁護人が来た。検察官が席から立って弁護人のほうへ行き、苦笑しつつ何やら小声で話した。
13時28分、裁判所の職員が「関係者席」の紙を外した。わしゃくしゃわしゃくしゃ。
13時29分、被告人(身柄、拘置所)が入廷。髪ぼさぼさで、若干むくんだような虚ろなような。何かの薬が効いているのか。そんな印象。
13時30分、裁判官が登壇。起立、礼。
被告人は証言台の前へ出ると、勝手に座ってしまった。裁判官は、そのままさらっと軽々と述べた。
裁判官 「主文、被告人は無罪」
ええ~~~っ むっ、無罪っ!!!
じつは私は、有罪だろうかなぁ、と思っていたのだ。
ここ数年は加速度的にいろんな罪名の事件を傍聴するようになったものの、それ以前の20年くらいは交通違反ばかり傍聴しており、刑法第39条にはあまり関心がなかった。
最近ちらっと傍聴した、そっち方面が争点になる裁判を見て、また報道等を見て、
「ほんとに喪失でも、若干耗弱と認められる程度。極端な話、左右の足を交互に出して歩いてれば責任能力あり、なのかな」
というぐらいの認識でいたのね、私は。
でもって本件被告人は、たいへん知的で、会話は完全に成り立ち、歩道上で全裸になることが良くないとしっかり分かってるわけで、だから、まぁ、有罪だろう、しかし、統合失調症に罹患してることは明らかと思われ、そのへん、どういう論法で折り合いをつけるんだろう、罰金(求刑10万円)は、いくらにするんだろう…。
それで、どうしても傍聴したかったのだ。
虎井裁判官の判決理由は、私の傍聴ノートで5ページになる。被告人がいつ頃からどんな妄想、幻聴にどう支配されていたのか、よくわかった。
裁判官 「妄想型統合失調症に罹患していたことは明らか…。是非善悪の弁別能力、およびこれに従う能力がなかったことが明らか…」
と無罪にしたのである。
裁判官 「(被告人に) 分かりましたかね、だいたい。被告人は病識がないから分かりにくいかもしれないけど。若いんですから早く病気を治してもらって、早く社会に復帰してください」
14時01分閉廷。
被告人は現行犯逮捕されたときから第1回公判まで、妄想のことも電波の声のことも言わず、「趣味で全裸になった」「ストレスで脱いだ」と供述していた。妄想の暴力団の影におびえ、警察と暴力団は関係していると思っており、被告人にとっての「真実」を言えなかったのだ。言ったら殺されると思い込んでいた。
それじゃあ、警察が立件、送致し、検察が起訴するのは仕方ない。
まぁね、同種前科前歴が全くなく、アルコールや薬物の影響下にもない知的な若者が、寒い3月の未明になんで、誰もいない歩道上で全裸で四つん這いになるのか、不思議っちゃ不思議だけども、被疑者は妄想の話を故意にしないんだから、こうなってしまうのは、現実的にはムリもないところかな、という気がする。
しかし被告人は、暴力団の影は電波の声の主による騙しではないかと(それも妄想なのだが)気づくようになり、公判廷で「真実」を言い始めた。立会(りっかい)検察官は困ったろう。
過去の冤罪事件を見ると、検察組織は、いったん起訴した以上は、途中で無罪が相当と分かっても、有罪を求めて押すのが決まりのようで、あるいは、こういうケースは法律的に有罪が相当と検察庁では考えているのか、立会検察官は(たぶん上司の指示で)公訴を維持し、有罪を求めた。
そして裁判官は、明快に明解に無罪とした…。
検察官は、無罪判決を食らうと組織内で責められ、たいへんだとか聞くけど、でも、この事件は仕方ない(立会検察官に責任はない)んじゃないの?
ところで、と私は思った…。
これがもしも、未明の誰もいない歩道で全裸になったという「公然わいせつ」じゃなく、死傷被害者が複数の残虐な、テレビ・新聞が連日がんがん報道しまくった、地裁の「殺人」の裁判だったら、どうだったか…。
少なくとも“世間”は、無罪と聞いたら、発狂するほど激怒し…。
無罪になった被告人は、いったん拘置所へ戻され、そのあとどうなるのか。
「医療観察制度」が適用されるのかな、と私はぼんやり思っていたが、よく見れば同制度は「殺人,放火等の重大な他害行為を行った人」を対象としてる。
じゃあ、本件被告人はどうなるのか。「措置入院」か「医療保護入院」かな、とは思うんだけど、詳しく知らない。調べてみなければ、そのうち。ってあんたの「そのうち」はアテになんないからな~(笑)。
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