怒りの矛先は加害者へ
月![]()
日(水)
「明日は来ないっ」と昨日宣言してたのだが、傍聴ノートをよく見れば、気になる「自動車運転過失致死傷」と、その30分前に1フロア違いの法廷で「道路交通法違反」の、いずれも女性被告人の控訴審判決があるではないか。
高裁だし、広い法廷だし、いくらこの時期でも2件続けての傍聴は可能だろう。もしも2件目がぎっしり満席で傍聴できなかったら、いよいよ人格崩壊してしまいそうで怖いが…ええぃ、出かけてしまえ…。
電車で傍聴ノートを再確認して、気づいた。1件目の道交法違反は、13時30分ではなく14時30分から、2件目の自過死傷は14時ではなく15時からだった。嗚呼…。
13時20分頃の裁判所は、わりと空いてた。1階正面玄関側の開廷表には数人しかおらず(それでも埋まっていたが)、東玄関側の開廷表は無人。どうしちゃったんだ!? って感じ。
13時30分から地裁で、強盗と銃刀法だかの新件があったが、そういうのはどうせ窮屈だろうと、簡裁へ。
13時25分から東京簡裁728号法廷(磯和幸隆裁判官)で「住居侵入、窃盗」の判決。
バーの中に研さん裁判官が3人いた。3人とも顔立ちは違うが、メタルフレームのメガネの、見るからにきちんと知的な感じのおじさんたち。俺もだけど。←ウソつけっ![]()
被告人は、わりと若めで例のジャージ。身柄(拘置所)。ピシッと立つ姿勢が、服役経験アリを思わせる。
裁判官 「被告人を懲役1年10月に処する。主文は以上です」
身柄なのに未決算入がない…あれ?
仮釈放中の犯行(空き巣狙い2件)であり、残りの刑期を現在服役中なので、未決算入はないのだという。へぇ、そうなんだ、知らなかった。勉強になりました。
続いて13時30分から「窃盗」の新件。
未成年の頃から主にスナックのホステスをやっており、16歳のときスナックで知り合い20年くらいの付き合いのある恩人女性のところへ度々遊びに行くようになり、ある日、小遣い銭欲しさに、タンスの引き出しから指輪(時価5万円相当)を窃取。2日後に2万円で質入れ…。
追起訴されており(被害者は別人)、続行。13時43分閉廷。
次は14時30分から東京高裁410号法廷で道交法の判決。えらく時間が余ってしまった。再び1階の開廷表を見ると、15時から自過死傷の判決がある東京高裁506号法廷に、14時から「盗品等有償譲受け」の判決が入ってた。その罪名は傍聴したことがない…。
14時から506号法廷(中山隆夫裁判長)で「盗品等有償譲受け」の控訴審判決。
まずは主文。控訴棄却。油圧ショベル4台が盗品と知って買ったのかどうか、争点は要するに知情性。
長い長い判決理由だった。こんな部分もあった。
裁判長 「2年2カ月を要した期日間手続きを含む原審で…整理手続きですべての要証事実を検討することは期待されていない…裁判員が入った法廷で…実体的真実の発見という刑事訴訟法第1条の…」
いろんな人物や法人が登場する、ぜんぜん知らない事件について、法律論も交えての長い長い判決理由…。傍聴ノートに「14:30、長いな~、検察官寝ちゃったか? 俺も寝たよ~」との文字がある。
そう、14時30分からの410号法廷の道交法を、私はすっかり忘れてしまったのである。間違えて1時間も早く裁判所へ来て、目当ての2件のうち1件を逃すとは![]()
しょーがない、今日一番大事なのは15時からの自過死傷、15時までこの法廷に居続けようと、廊下の冷水器へ水を飲みに行くこともせず、506号法廷に居続けたわけ。
ところが、盗品等が14時43分に終わり、いったん出るよう職員に言われてしまった。
出てドアのところに立ったら、列の後ろにつくよう言われた。列? 自過死傷を傍聴するための列が小廊下にできていて、その後ろにつけと言うのだ。
ま、列といってもまだ5人だったので、眉をしかめながらも従ったが、これがもしも何十人かの列だったら、へたすると損害賠償の裁判に発展するんじゃないか。
すなわち、これを傍聴するために、外へ出たいのを我慢して傍聴席に居続けたのだ、入れ替え制との告知があれば、傍聴席に居らず早々と外に並んでいたのだ、あらかじめの告知もなしに、裁判所側のその場その場の勝手によって…この精神的損害は10万円を下らない、というふうな。
傍聴人に対する裁判所のこういう姿勢は、裁判員制度に照らすと非常に問題だと思う。こんなブログでごちゃごちゃ言ってないで、そろそろ或る手を打とうか…。
15時から506号法廷で「自動車運転過失致死傷」の判決。
夫の介護になどによる過労から居眠り運転をし、集団下校の小学生の列に突っ込み、1名を死亡させ4名に重軽傷を負わせた、という事件だ。報道されてる。原審はさいたま地裁、求刑禁錮4年のところ禁錮3年4月。
控訴趣意書の論旨は量刑不当。原判決は、結果の重大性や被害者・遺族の被害感情に過度に影響を受けたもので、重きに失する、執行猶予を付すべきだ…と。
主文は控訴棄却。
判決理由の中心は、運転者の側にどんなに同情すべき点があるとしても、車は一瞬で凶器になり得るのであり、車を運転する以上「こういう事情だったので」は通用しない…ということと私は受け止めた。それはそのとおりだと思う。
15時09分、言渡しを終えて裁判長が言った。
裁判長 「被告人、前へ出てください。被害者のご家族も、あなたの境遇を理解していないわけではない。しかし、その怒りの矛先を遺族はあなたへ向けるしかない。それをあなたが受け止めるしかない。(夫の)介護はあなたが適任。しかしそれはあなたの側の事情。それでも(実刑を)と思うのはごくごく自然と思います」
怒りの矛先を被告人へ向けるしかない? 嗚呼、これでは…と私は思った。
車の凶器性は、便利性、快適性等に比べればほとんどまったく周知されていないというべきだし、人間はもともと不注意な生き物。居眠りもすればカーラジオや伝票へ脇見してハンドル操作を誤ることだってある。
そうやって誤ったとき、たちまち5人もの小学生が死傷するという通学環境が、とくにどうとも言われず普通にある日本…そこにこそ問題があるのではないか。
こういう事故は、ある確率でこれからも起こり続けるだろう。起こったら、怒りの矛先を加害者へ向け、厳しく処罰して終わる…。
それでいいはずがないことは、裁判官もわかってるんじゃないか。多くの裁判をとおしての、社会への提言が、裁判官にはたくさんあるんじゃないか。それをとりあえず聞く手続きさえないとすれば、大きな社会的損失ではないのか。
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コメント
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お疲れ様です。私も被告人経験があるので、その疲れ、よく分かる気がします。
ラジオの聴取者が20人と、すぐ後ろの傍聴席に生身の人間がぎっしり20人とは、だいぶ違うでしょ~。
バーの中に、普段より6人も多く居ましたっけ。
向かって右手奥に3人いたのは、19日に728号法廷でお見かけした研さん裁判官ですよ。そのうち裁判官席に座り、1人で訴訟を指揮、担当の裁判官が脇の席で、あるいは傍聴席で見てチェックする、ということになります。
東京簡裁で研さんをやった者は東京簡裁で勤務する、という決まりはなく、どこの簡裁へ行くか分からないそうです。
廷吏(裁判所の事務職員)は、法廷にいたりいなかったりします。
ともあれ、次は地裁ですね。
地裁では、簡裁のとき以上に、もっとずっと早くから行列ができるでしょう。一般傍聴人はどうも簡裁を軽んじる傾向があるようで。
傍聴券については、どうも、好奇心を刺激しそうな罪名だから、あるいは社会的に重要な事件だから傍聴券、ということはないように思われます。
傍聴券交付になるのは、関係者や支援者がかなり詰めかけそうだとか、被告人が国民の大半が知る人気タレントだとか、起訴後もワイドショーが連日取り上げてるとか、チョー有名な凶悪犯罪だとか、そういうもののように思われます。
投稿: 今井亮一 | 2009年8月21日 (金) 22時19分
こんばんは、今井さん。
お疲れさまです、わし(w
今日だけはとりあえず今井さんよりわしの方がお疲れだと思います(^^;)
なんか今日の826号法廷はいつもより柵の内側の人が多くて・・・なんか余計な人が6人ぐらい入ってましたよね?
なぜか検察官が二人いましたし。
とにかく緊張しまくりでした。
けどよくよく考えてみたら、わしは毎週ぽっちゃり系ラジオを放送していて、リスナーは20人近くかそれ以上います。
傍聴人も20人なわけですから、柵の内側の人が今日はいつもよりちょっと多かったですけど、いつもこのぐらいの人数相手にしゃべっているではないか・・・と考えるとちょっと気が楽になりました。
今度は20席なのか40席なのかわかりませんけど、ラジオでは40人以上リスナーがいるときもあったので、なんのこれしき!って感じで落ち着いていきたいと思います。
今度サインくださいね!
「交通違反一筋27年!!主文、被告は無罪」
でお願いしまっす!(^^)
投稿: ぽっちゃりパフェ (るん) | 2009年8月20日 (木) 23時09分