警察官と被告人、どっちがウソつき?
月日(金) その
15時から東京簡裁826号法廷で、8月26日に第1回を傍聴した「道路交通法違反」(酒気帯び0.63mg)の第2回。
被告人の違反を現認したという西新井署地域課の巡査部長、の証人尋問。
前回、被告人の調書には要旨、
「飲酒し、千鳥足になるほど酔っているのがわかったので、バイク(100cc)にまたがり足で蹴って帰ることにした。エンジンはかけたが、アイドリング状態、駆動がかかってない状態だった。ヘッドライトは自動的に点灯する。ヘルメットはかぶった。メーターパネルにあごをつけるようにして、たぶん10キロくらいの速度で、路面を足で蹴りながら進んでいくと、右折の際、転倒してしまった…」
とあるらしかった。
運転の定義は、
「道路において、車両又は路面電車(以下「車両等」という。)をその本来の用い方に従つて用いることをいう」(道路交通法第2条第1項第17号)
であり、被告人のそういう行為が「運転」に当たるのかどうか、そこが問題になるのかと私は思った。
足で蹴って、せいぜい歩く程度で、というなら、バイクにまたがったのは体とバイクを支えるため、バイクを押す行為にすぎない、という考え方もあり得るとしても、10キロくらいだと、どうだろう、下り坂をエンジンを切って惰性で下るのは「運転」に当たるという判例もあったっけ…と思った。
ところが、現認警察官の約55分間の証言を総合すると、こんな感じか。
「深夜1時過ぎ、自転車で1人、パトロールの途中、交差点を渡ろうとすると、バイクが普通に走ってきた。中央寄りを走っており、速度は15~20キロくらいだったので、右折するのだろうと思い、自分は急いでいないので、バイクが通過するのを待った。するとバイクは右折時に転倒した。進行方向から90度回転した位置でバイクは倒れ、運転者の右足がバイクの下になった。人命救助のため近寄って声をかけたとき、運転者の酒臭に気づき、応援を呼んだ」
「運転」に当たるかどうか、ではなく、完全に運転していたというのである。しかも、見間違いの可能性がないほど、普通に運転していたというのである。
被告人と現認警察官の言い分が(事実が)、真っ向から違ってる。
こうなると、残念なことだが、どっちかがはっきりウソと認識したうえでウソを言ってる可能性がある。
そうだとして、ウソをつく理由、どういう理由がどっちにどれくらいあるのか。
一般的には、
「被告人には刑責や行政処分を逃れたいという動機がある。一方、警察官は、職を賭してまで見も知らぬ者を罪に陥れるはずがない」
を絶対の大前提として、被告人の言い分を疑って疑って疑い抜き、警察官の言い分については信用できそうな部分を何とか探しに探し…となるのだが、1室1係、虎井寧夫裁判官は、たぶんそんな一般的な認定はしないはず。
さぁ、どうなるのか…。
ちなみに、私のこれまでの取材や経験からすると、警察官はあからさまなウソを平気で堂々と言い切ることがある。珍しくない。しかも、各部を整合させるのが上手だったりする。裁判所をナメてるというか仲間だと思ってる、という面もあるのだろう。
一方、運転者のウソは、重要な部分があいまいだったり妄想じみてたり、すぐウソとわかる。というか、途中で面倒になり、「どうせ勝てねぇから」とか言い訳し、崩れてしまいやすい。法廷へ出てまでウソを押し通そうするのは、よっぽどの変人であり、変人らしさが見える。そんなことが言えるかと思う。
次回は、とりあえず被告人質問。
弁護人がどれだけ時間をかけて被告人の説明を聞いてるか、被告人は拙著『改訂新版 なんでこれが交通違反なの!?』のQ120や、参考記事「裁判官が悪いと言う前に」なんかをしっかり読んでくれてるか、そのへんが(被告人の言い分がウソでない場合は)ひとつ分かれ目になるんじゃないか、「運転」の解釈はまた別として。
だが、次回期日は連休明け。すでに同時刻に「公然わいせつ」(珍しい否認)の第2回と、「公然わいせつ幇助」の判決が入ってる。もっといくつも入る可能性がある。困るんだよねぇ、主任傍聴人のスケジュールも聞いてくれないと。
それが15時57分閉廷。地裁522号法廷ではまだ証拠調べをやってただろうに、もうころっと忘れてしまい…。
裁判所内で2件、用を足し、警視庁へ。
8件の開示を受け、再雇用関係の2件の文書を開示請求。
「三菱RS-2000K型」は、文書がないという。そもそもそんなもの設置されてないという。
「けぃは、Kではなく型ではないですか?」
はぁ? えっ? あ~っ? 日下部敏検察官はRS-2000型を、まず「にせんけぃ」と発語し、「けぃ」は型ですよとの意味で、「けぃ…かた」と言い直し、それを聞いて私が、
「RS-2000K型 どわぁ~っ 最新型だっ」
と勝手に大興奮しちゃったわけ? ごめんなさい~。
帰りの電車で、今年2月~7月の「所属別確認標章取付件数」を読む。ほほ~、今年4月から駐禁取締りの民間委託が島嶼部を除く全域に拡がり、かつ制度スタートから3年を経て、明らかな変化が見て取れるね~。うわ~。
交通違反は面白くてしょーがないっス。
ま、考えてみれば、そうした情報がテレビ・新聞で普通に報じられ、多くの人が知ってたら、こんな面白さは味わえないという以前に、私は交通違反専門の「交通ジャーナリスト」として飯を食えてない。
そういうのが長年染みついて、報道された事件は傍聴意欲が萎えるってことになるんだろうか。
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コメント
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へぇ~ 左陪席が席を外しても尋問を続行って、そんなことがあるんですねぇ、驚きです
主任書記官…。首席書記官とか、いろいろあって、裁判じゃないこともいろいろやってるんですね。
http://www.courts.go.jp/fukuoka/about_tiho/iinkai/pdf/giji_gaiyo20.pdf
刑事の書記官は、公判前整理手続きがあると負担が大きく、裁判官と同じ知識が必要な場合もあって大変だ、と聞いたことがあります。
豪華キャスト、いいですねぇ。秦野さんのびっくりわくわくぶりが目に浮かぶようです。
投稿: 今井亮一 | 2009年9月20日 (日) 09時09分
アッ!今井亮一様、前のバカコメントを,訂正致します。…かちんと,こないで…「カチン民族系??ミャンマー人が原告さんの・難民の認定をしない処分取消訴訟・人証調べ」の期日、今年09月11日でなく、09月10日の、誤りでした….私って,なんとミスの多い人間なのでしょう…反省致します!.このミスを機会に、他人のミスを、ことさら,あげつらうこと,絶対にやめたいです。
※最後になりますが[09月10日の,「ミャンマー人・難民の認定をしない処分取消訴訟・当事者尋問」では、私以外は、豪華メンバー・豪華キャストの方々が,結集されました。
A:[裁判所側]→a岩井伸晃裁判長さん(元内閣法制局参事官)b三輪方大・主任・右陪席さん(=元鹿児島地裁名瀬支部裁判官・あのNHKテレビドラマの「ジャッジ・主人公」モデル裁判官さん)c新宮智之左陪席・判事補さん(=前・厚生労働省勤務)
B:[原告代理人側]カルデノンのり子様問題に、心血を注がれた,渡邊彰悟先生ほか1名.
C:[国・被告指定代理人側]→行政訴訟で,よく見かけ,好印象の,フクミツ代理人等,数名.
D:[法廷通訳人]→元NHK国際局・ビルマ班勤務、田辺寿夫先生。
投稿: 秦野真弓 | 2009年9月13日 (日) 21時31分
[主任傍聴人]という,今井様の表現は凄く,ナイスですね!
さて,[裁判所というかいしゃ]では、[主任]という、概念が、一般社会と少し違って興味深いです
例1:今年9月11日の、東京地裁民事2部での[ミャンマー人・難民の認定をしない処分取消訴訟・人証調べ時]に,左陪席の新宮智之判事補さんが、何らかの事情で(→緊急の用事か?御手洗いか?忘れ物かな?)約6分間、裁判官席を離れ、どこかへ行ってしまった時も、ずっと、当事者尋問は続行されてました。どうやら、岩井伸晃・裁判長さんと、三輪方大・主任裁判官(右陪席)の、お二人が、裁判官席におられたなら(緊急時は)1人抜けても[審理続行]できるようです。
例2:裁判所書記官さんが、二等書記官に昇進した場合→うそ!撤回します
例2:裁判所書記官さんが[主任書記官]に昇進された場合、部内では[管理職]として扱われ、かなり広域な、転勤もあるし、労働組合員をも,やめるそうです。※JRで[主任運転士]に昇格しても、別に管理職ではないし、勿論、労働組合員です。
このように,[裁判所という,かいしゃ内]で使う用語は一般社会と少し違います
今井亮一様が、御提唱されているように、メディアでも、早期に[被告人と被告は全く違うこと]正確に報道されること、私もまた、望んでいます。
投稿: 秦野真弓 | 2009年9月13日 (日) 17時35分