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2012年10月27日 (土)

重過失捜査罪、危険判決投獄罪

 来週、「東電OL殺人事件」の再審が公判廷へ出てくる。事件記録符号は「お」。そんなの見たことないっ。
 簡裁の再審は「ほ」。それは4件傍聴した…って傍聴マニア以外には全く興味のない話ですょね、とほほ。ま、傍聴券の枚数はメルマガ次号で。

 「東電OL殺人事件」は、無罪を書くのに慎重な裁判所が慎重に慎重に審理して、一審は無罪だったのだ。検察が隠していた証拠が明らかにならなくても、優に無罪だったのだ。
 ところが、晴れて無罪となったゴビンダさんの勾留を決定した裁判長が、あろうことか控訴審の裁判長も担当し、さくっと有罪にひっくり返しちゃったのだ。最高裁が追認して有罪が確定。再審請求に対し、検察は七転八倒、抵抗し続けた…。

 こうした冤罪を防ぐにはどうしたらいいのか。以下は『ドライバー』2010年1月20号に書いた原稿…。

     pen  pen  pen

 高級スポーツカーで彼女とドライブ。家へ送った、まではよかったが、彼女が不注意で勢いよく助手席のドアを開け、ガンッとブロック塀に。
「あっちゃ~!! なんてことしてくれるんだ。ききっ、器物損壊罪で告訴してやるっ!!」
 とわめく人はいないか(笑)。

 仮に告訴しても、彼女は処罰されないはずだ。なぜなら、刑法第38条1項が「罪を犯す意思がない行為は、罰しない」と定めているから。犯意(故意)がなく誤って(過失で)やっちゃったものは処罰しないことになっているのだ。

 だが、38条1項には但し書きがくっついている。
ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない
 特別の規定。運転者に身近なものとしては「自動車運転過失致死傷罪」がある。
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する」(刑法第211条第2項前段)

 なんで交通事故は過失でも処罰されるのか。それはね、車は一瞬の不注意で凶器になり得る危険なものであり、運転者は当然に高度な注意義務を負うからだ。絶対に注意を怠ってはならず、だから、死傷事故を起こす意志がなくても処罰されるのである。

 一方、単なる不注意を超えたケースもある。たとえばアルコールの影響により正常な運転が困難な状態と承知で運転したとか。あるいは、信号をうっかり見落としたんじゃなく、赤信号と承知のうえで、かつ、そうとうのスピードで交差点へ突っ込んだとか。
 そういうのは過失とは到底いえず、「危険運転致死傷罪」(刑法第208条の2)になる。罰則の上限は懲役20年。重い。
 ここまでは、考え方としてはわかるでしょ。

 さて、話は富山の冤罪事件へ飛ぶ。大きく報道されたんでご記憶の方も多いだろう。私は2つの集まりで、その冤罪被害者・柳原浩さんの話を直に聞き、『「ごめん」で済むなら警察はいらない―冤罪の「真犯人は誰なのか?』(柳原浩編・桂書房)を読んだ。事件の概要は以下のとおり。
 富山で2002年の1月に強姦事件が、3月に強姦未遂事件が発生。警察は4月、柳原さん(当時34歳、タクシー運転手)を犯人として逮捕。当然、柳原さんは否認した。だが、警察は強烈な脅しで自白を強要。検察も無実の訴えに耳を貸さず、なんと弁護人まで、柳原さんが頼んでもないのに親族により合計250万円の被害弁償をさせてしまった。裁判官は冤罪を見抜こうとせず、同年11月、有罪(懲役3年、未決算入130日)とした。柳原さんは絶望し、家族からも見捨てられたと警察により思い込まされ、控訴せず服役。「自分は無実だ」と思っていては長い刑務所生活が耐えられないので「気持ちを殺した」という。そして05年1月に仮出所。

 ところが06年8月、鳥取で強制わいせつ罪で逮捕された男が、富山の強姦と強姦未遂も自分がやったと自白! 富山県警は男を逮捕せざるを得なくなり、07年1月、「謝罪会見」を行った。検察は再審を請求し、同年10月、ようやく柳原さんは無罪とされた。

 まったく身に覚えがない事件の詳細を、どうやって「自白」できたのか。柳原さんは言う。
「被害者宅へ案内しろと言われるんです。でも、2軒とも知らない。すると、乗せられた車が止まり、『どの家か指をさせ』と。郊外で、指をさせる家は1軒しかない。そこが被害者宅だったんです。2軒目もそうでした。署へ戻って図を紙に書けと言われる。見た後だから書ける。でも、奥の様子はわからない。すると『肩の力を抜け』と言われ、警察官が後ろへきて私の右手を持ち、私の手で奥の様子を書かせるんです。強姦のほうの家の図面は、紙に最初から鉛筆で書いてありました。『鉛筆をボールペンでなぞれ』と……」

 じつは柳原さんにはアリバイがあった。犯行時、1人住まいの家からお姉さんに電話していたのだ。その通話記録を警察は取っていた。しかし無視した。
 物証もなかった。被害者は2人とも金属の鎖のようなもので縛られたと供述していたが、柳原さん宅をいくら捜索しても荷造りに使う普通のビニールひもしか見つからなかった。そこで警察はどうしたか。なんと、唖然呆然、そのビニールひもを二重にしてところどころ結び目をつけ「被害者2人はこれを鎖と勘違いした」と言い抜けたのである!
 2つの犯行現場には足跡が残されていた。靴のサイズは28cm。柳原さんは24・5cm。じつは警察は、DNA鑑定のために唾液や口腔内の粘膜を採取している……。

 この「捜査」には、少なくとも重大な過失があることは明らかじゃない?
 そこで、私は思うのだ。捜査官や裁判官は、逮捕したり刑務所へ送ったり、強い権力を持っている。当然に、不注意で無実の者を逮捕、処罰しないよう高度な注意義務を負う。だから、「自動車運転過失致死傷罪」みたいに、「重過失捜査罪」「重過失判決罪」があってもいいんじゃないかと。

 でも、柳原さんのケースは本当に「過失」なのか。故意があったように思える。
 もちろん、人間のやることは、あとになれば「故意にやったに違いない」と思えても、そのときは一生懸命で気づかなかった、ということはある。
 しかしだよ、まったく知らない犯行現場を詳細に「自白」できたことは何を意味するのか。アリバイとか鎖とか靴とかDNA鑑定とか、柳原さんの潔白を示す数々の客観的証拠をすべて無視したことは、何を意味するのか。

 そう考えると、これは過失とは到底いえない。「危険運転致死傷罪」みたいに「危険捜査罪」「危険判決投獄罪」があるべきじゃないのか。
 「故意はなかった」といくら主張してもダメ。だって殺人事件は、被告人が「殺すつもりはなかった」とどんなに言い張っても、頑丈かつ鋭利な刃物で身体の枢要部を複数回刺せば、殺人の故意が認められるのだ。柳原さんの事件も、十分に故意を認定できるはず。

 じつは柳原さんが逮捕された02年4月というのは、富山県警の元本部長と元刑事部長が、覚せい剤事件のもみ消しで、富山地裁で有罪判決(懲役1年、執行猶予4年)の判決を受けたという、特別な時期だったんだね。そんな時期に誤認逮捕だったとは発表できず、でっち上げへ突っ走ってしまった可能性は大いにある。
 処罰規定を増やすことは慎重でなければならないが、バカげた冤罪をなくすためには「重過失捜査罪」「危険判決投獄罪」という考え方が必要だと思うんだけどね。

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コメント

ドイツ・ニュルンベルク地裁にて,刑事裁判→傍聴してきました
◎ドイツの刑事裁判→[最高裁広報誌・司法の窓77号・24頁・小畑和彦判事補の研修報告]にありますように,原則として被告人への身体拘束ありません
◎そのかわり,判決宣告時・黒服の[裁判官+弁護人+検察官]→一斉に規律するなど,厳粛
◎でも、ニュルンベルク地裁にて,裁判官が被告人に執行猶予言い渡し 、被告人と御家族→喜んで退出した後→裁判官・黒服脱ぎ、リラックス。なんと当該裁判官・ボテムはジーパン!そして傍聴席の私に近づき,何か話しかけました。私・大学に行った経験なく→外国語わからず,残念
◎尚[成田-ドイツ間]日本人ほとんどいない、格安外資系航空会社→利用
東京地裁労働部係属→[トルコ航空から解雇された、日本人客室乗務員提起、地位確認訴訟・人証調べ傍聴]思いだしました
◎引用:対トルコ航空様・地位確認・労働裁判→http://blog.goo.ne.jp/jfca/e/ce34fb3b2e520ea78c312d71b353ebfb

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