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2014年5月31日 (土)

原判決破棄なら全部算入(通算)

 東京高裁を見てきた限り、一審判決から高裁判決まで、だいたい3カ月くらいのことが多いかな。
 でもって、高裁(控訴審)の判決は、ずっと勾留中の被告人に対し、たとえば次のように言い渡される。

裁判長 「主文、本件控訴を棄却する。当審における未決勾留日数中20日(にじゅうにち)を原判決の刑に算入する」

 控訴審の審理に必要な期間をだいたい2~3カ月としてるようだ。

 以下は、裁判所のサイトにある最高裁判例(昭和24年[1949年]10月13日、強盗、住居侵入)の、判決要旨。旧漢字を適宜改めて。

 未決勾留は、その名の示すごとく未だ有罪、無罪の決定しない者に対し審理の必要上為される刑事訴訟手続上の自由の拘束であつてもとより刑罰の執行ではない。従つて、その目的も、拘束の場所も、その処理も、その効果も刑罰の執行と異なるものであるただ自由拘束の一点において自由刑の執行と類似するところがあるが故に刑法第二一条は、裁判所に対し諸般の事情参酌してその勾留日数の全部又は一部を本刑に算入することを許容するに過ぎない。そしてその法理は新憲法下においても毫も変更を認めることはできない。もとより無用、不等の未決勾留を許すべきでないこと勿論であるが、さりとて、訴訟の審理上必要な未決勾留日数を常に本刑に通算すべき法律上及び実際上の理由も存しない。

 それでだ、原判決破棄の場合は、ぜんぜん違う。
 たとえば2014年5月27日に言い渡された「現住建造物等放火」の判決。

裁判長 「主文、原判決を破棄する。被告人を懲役3年2月(さんねんにげつ)に処する。原審における未決勾留日数中110日をその刑に算入する」

 原判決は、東京地裁・立川支部、2013年12月12日、懲役3年6月、未決110日算入。
 ちなみに「現住建造物等放火」の法定刑は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」(刑法第108条)。本件の求刑は、その下限である懲役5年。原判決は、そこを酌量減軽(同第66条)をして懲役3年6月(さんねんろくげつ)に下げ、控訴審はそれを破棄して3年2月にまで下げたのだ。

 原判決から約5カ月半も勾留されてるのに、控訴審判決の主文に、控訴審における未決算入について言及がない。控訴審の分は算入されないのか、ひどいじゃん?

 いや、そうじゃなくて、そこは法律で定められてるんである。以下は刑事訴訟法

第四百九十五条  上訴の提起期間中の未決勾留の日数は、上訴申立後の未決勾留の日数を除き、全部これを本刑に通算する。
○2  上訴申立後の未決勾留の日数は、左の場合には、全部これを本刑に通算する。
 検察官が上訴を申し立てたとき。
 検察官以外の者が上訴を申し立てた場合においてその上訴審において原判決が破棄されたとき
○3  前二項の規定による通算については、未決勾留の一日を刑期の一日又は金額の四千円に折算する。
○4  上訴裁判所が原判決を破棄した後の未決勾留は、上訴中の未決勾留日数に準じて、これを通算する。

 第1項により、控訴申立までの未決勾留日数は自動的に算入(通算)される。
 かつ、破棄判決だったので、第2項第2号により、控訴申立から控訴審判決までの未決勾留日数が、ぜぇ~んぶ算入される(=服役期間から引かれる)んである。これを法定算入(法定通算)という。

 だから、原審分の110日に加え、控訴後の約5カ月半が、懲役3年2月から引かれるんである。こりゃでかいょね。

 検察官が控訴し、棄却となることもマレにある。
 その場合、たとえば懲役4年なら4年は変わらないが、控訴審における未決勾留日数が丸々算入され、被告人とすれば「儲かった!」つーことになるわけ。

 また、原判決に法律上の誤りがあって、「原判決を破棄する」となるんだけども、控訴審で言い渡された刑が、原判決の刑と同じってこともマレにある。
 同じでも、破棄判決なので未決勾留日数が丸々算入(通算)され…。

 未決算入日数のことはマスコミ報道ではアンタッチャブル、タブーなのだが、これから服役する被告人にしてみれば、大きな要素なのだ。

  

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