万引き病の女性が続々と法廷へ出てくる理由
以下は9月20日付けの江川紹子さんのさんの記事、の一部だ。
【塀の中の摂食障害】刑罰か治療かの二項対立を越えて~塀の外での支援で新たな人生を歩み始める
8月某日。東京地裁の法廷に、車いすの女性被告人がいた。見るからに異常なやせ方だ。黒のパンツスーツからのぞく足首は、明らかに私の手首より細い。頬は窪み、頬骨が突き出している。顔に生気がなく、唇にも色がない。口角は下がり、前屈みの姿勢もあいまって、30代初めという実年齢よりはるかに老けて見える。
万引きで罪に問われるのは4度目だ。最初は書面による略式裁判で罰金刑。初めて正式裁判を受けた時は、懲役に執行猶予がついたが、次には実刑に。その一審判決を不服として控訴し、保釈で自由の身でいる間に、コンビニでおにぎりなど409円相当を万引きし、また捕まった。
拘置所収監中にどんどんやせて、とうとう命に関わる状態に。救急車で病院に運ばれて、入院。刑務官に車いすを押されて裁判に出廷できる程度には回復したが、摂食障害の症状は依然として重い。
その「窃盗」を俺も追いかけていた。おにぎり2個、ジュース1本、販売価格合計409円を控訴中に万引したほうの、控訴審判決が10月3日にあった。傍聴した。
被告人は車椅子。もとは美人系かとも想像されるのだが、骸骨のように痩せ、右の鼻腔にチューブを入れていた。チューブは車椅子の後ろの物入れ部につながり、物入れ部は重そうに垂れ下がっていた。
同じ法廷で続けて、メルマガ第1960号「大物音楽プロデューサーの覚せい剤事件!」でレポートした「覚せい剤取締法違反」の審理(第2回公判)が始まった。弁護人の立証が終わり、結審、直ちに判決となった。
急ぎ東京簡裁の法廷へ移動し、「窃盗」の新件を傍聴。被告人は25歳の細い女性で、こっちも車椅子で、ばりばり摂食障害の万引き病、いわゆるクレプトマニアだった。
病的な万引きの女性たちが続々と法廷へ出てくる。どうなっているのか。
病気じゃない、単に考えが甘くて手癖が悪いだけの人たちは、微罪処分、不起訴、略式による罰金刑、そのあたりでもうヤメるのだろう。
病気の人たちはヤメられず、公判請求されて執行猶予付き懲役刑、次は実刑、また実刑…。そうして我が日本国は、基本的に万引き病を認めない。治療よりは刑務所へ落とすことを優先したがる。だから、万引き病の女性たちが続々と法廷へ出てくる、かつ万引き被害が起こり続けるってことになるんじゃないかな。
男性の万引き病もあるが少ない。「窃盗」で続々と法廷へくる男性は、働かずにホームレスとなってその日の食べ物や酒を万引きし、あるいは漫画喫茶の宿泊代金を得るため換金目的で書籍等を万引きするパターンが多いかな。
午後は、マニア氏から教わり、有名写真家の「覚せい剤取締法違反」の新件を傍聴した。初めて薬物を使ったのは、中南米へ麻薬組織の取材に行ったときなんだそうだ。直ちに判決。
それが終わって、被告人氏名が女性の「窃盗」へ途中から行ってみた。セクシー美人というか、万引き常習。摂食障害とかいう話は出ず、被告人の供述や表情等から『万引き女子』と似たものが感じられた。
見所があった。誠実に弁護すればそういう主張になるんだろうけど、どうせ通るはずのない主張、それを弁護人がやったもんだから…。俺のメルマガはそんなシーンを見逃さずレポートするので、弁護士さんたちにけっこう読まれている、のかもしれない。
この本、裁判所の地下の至誠堂書店で買い、裁判所への往復の電車内で読み進めてるんだが、凄すぎる。内容もさることながら、その知的で、ある意味ハードボイルドな書きぶりに俺は「うわぁ!」なものを感じ取る。
画像上は、究極の居酒屋「昭和」へ行くため法務省の前を歩いていたときに見つけたポスター。画像下は、「昭和」で最初に食べた酒肴2品。にしんのマリネと野菜の煮物。各チケット1枚=110円相当。うまかった~。
その帰り、電車内で『万引き女子』を読むうち一瞬居眠りしてしまい、大変なことになった! おかげで意外なことが分かったというか、メルマガ次号の編集後記で。
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