糖尿病で運転中に意識消失
「糖尿病で運転中に意識失う、危険運転致死容疑で逮捕」と11月18日付けTBSニュース。
事件数で約7500件の裁判を傍聴してくると、ニュースを見て「あぁ、その種の裁判を傍聴したことがあるょ」となることが多い。
糖尿病で運転中に意識喪失の裁判については、メルマガ第1479号「無自覚性の低血糖症による危険運転致傷」で第1回と第2回公判を、第1549号「裁判官なんてどうせロボット、いなくていい?」でその判決をレポートした。
被告人は69歳。「1型糖尿病」で「無自覚性低血糖症」に陥るおそれあり。意識消失を2回経験しており、医師から車の運転は止められていた。しかし仕事のため運転を続けた末…。
豊島区内の目白通りを運転中、どうも様子がおかしくなった。が、もう少し先で休もうと運転を続け、意識消失! 歩道へ突っ込み、信号待ちしていた21歳女性に衝突したという事件だ。女性のケガは加療約10日間。そこが救いだった。
以下、第1479号から被告人質問の部分を拾ってみよう。少し加筆等する。
弁護人 「1型の糖尿病、体が糖分を分解することができなくて、インシュリンを打たなければならない…食べた糖分に比べてインシュリンを打ち過ぎるとどうなりますか?」
被告人 「頭がぼけーっとなります」
弁護人 「低血糖になると」
被告人 「はい」弁護人 「朝ご飯を食べる前にインシュリンを打って、奥さんはクリーニング屋(と聞こえた)の相手をしていて、ご飯が遅れた…それで意識を失ったことがあると…お酒に関連して意識を失ったことは?」
被告人 「サッカーで北朝鮮に勝って、喜び、酒飲みすぎて、インシュリン、2度打った…朝起きなかったので女房が救急車呼んで…」その後、インスリン注射は食事の後に打つようにし、医師に報告したところ…。
被告人 「それはいいですねって」
本件当日、朝食後にインスリンを打ち、昼食は「きゅうりとレタスのサラダ、冷や奴」だったので、普段は「15単位」のところ「8単位」を打った。すると…。
弁護人 「今回、(事故現場の)200m手前に目白警察署が…そのとき…」
被告人 「なんか疲れてが出てるっていうか、昼は食事も少なかったし、休もう休もう…休むとこがなかった…その先にもう1軒、お客さんあるから、チトセバシのところで(路側に)寄せようと思って」昼食は糖分がほぼなかったので、インスリン(弁護人いわくインシュリン。どっちでもいいです)を打ち過ぎの状態になったわけだ。
そうして突然、意識を失った!
以下は「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」の第3条第2項。
「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。」
第3条ってのは、従来の危険運転の適用範囲を広げたもので、“おそれあり危険運転”と言っていいかな。「制令」とは同法施行令第3条のことで、その第4号にこうある。
「自動車の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する低血糖症」
低血糖の影響により「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」との認識が、意識を失う直前にあったかどうか、そこがこの裁判の争点なわけだ。
被告人質問を聞く限り、被告人は血糖値を適宜調節しており、ヤバイとの認識はなかったように聞こえる。
しかし…。
要するに検面調書(検察官面前調書)に、目白署の前辺りで低血糖と認識した、という趣旨のことが録取されているのだった。裁判的にはこれでもうアウトだ。被告人 「(取調べの検察官は)目白署の書類、見てたんです。検察のケの字も聞かない、私のことは…(聞き取れず)…ないっ! 何も言えません」
意味がよくとれないのだが、とにかく、それまで気力なくぼそぼそと述べていた被告人が、そこだけ怒ったように力を込めるのだった。よっぽどムカつくことがあったのか。
だがその後は、気を失う前の認識と、衝突後に警察官から言われて得た認識とがごっちゃになったり…。
刑事裁判では通常、どの時点での認識か、時点を特定せずにどんどん質問をぶつけるのだ。やがて被告人は、疲れてめんどくさくなったのか、血糖値が下がって頭が働かなくなったのか、「分からない」「覚えてない」の連発になってしまった。
裁判が必要とすることは、一般生活者の理解や常識とは違う。時点の特定のこともあるし、またたとえば、読んだ小説のあらすじではなく、文字は明朝体だったかゴシック体だったか執拗に問われる、みたいな。
そんな被告人質問に長々さらされて、疲れたろうね~。
求刑は懲役10月。判決は懲役10月、執行猶予3年だった。
※ 画像は警視庁本部(いわば東京都警察本部)の、皇居に面した正面玄関の外側。この細長い立派なやつは、いつ設けられたんだろ。公安委員会はパブリック・セイフティ・コミッションっていうんだ、へ~。 ※当ブログ容量オーバーが判明。画像は削除。
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