微罪処分とは
警察が捕まえて検察へ送る → 検察が起訴する → 裁判所が有罪とする。
その流れの中で、刑事訴訟法の第246条ただし書、及び第193条第1項の規定により検察へ送らないことを微罪処分という。
要するに、被害が軽微で被疑者がまぁ善良で、被害者が処罰を望まない等々の事情のあるものが微罪処分とされ、検察へ送致されず、つまり警察止まりで終わるわけだ。警察は検察へ報告はするけれども。
以下、第193条は第4項まであるうちの第1項のみ。太字は私。
第百九十三条 検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、その捜査に関し、必要な一般的指示をすることができる。この場合における指示は、捜査を適正にし、その他公訴の遂行を全うするために必要な事項に関する一般的な準則を定めることによつて行うものとする。
第二百四十六条 司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。
10月にだっけ警察庁で、「平成28年の犯罪」という分厚いやつをたっぷりコピーしてきた。その中に微罪処分のデータがあった。 「罪種別 身柄措置別 送致別 検挙人員」という表で、「現行犯逮捕」「緊急逮捕」「通常逮捕」「身柄不拘束」に分かれている。
「現行犯逮捕」と「身柄不拘束」についてだけ微罪処分の数字がある。たとえば広島県の通達を見ると、「緊急逮捕」と「通常逮捕」では微罪処分を行わないんだそうだ。 ※画像はその通達にある書式。
メルマガ第2006号の編集後記では「現行犯逮捕」の分も載せたが、ここではそれよりずっと数の多い「身柄不拘束」だけを一部紹介する。
「刑法犯」の「身柄不拘束」の検挙人員は14万9528人。うち微罪処分は6万7200人、約44.9% だからつまり、逮捕なしで検挙された人のうち半分近くは微罪処分で終わっているわけだね。
罪種別に見ると、「刑法犯」の「身柄不拘束」で微罪処分がもっとも多いのは「非侵入盗」。7万5734人のうち4万0428人、約53.4%だ。
「非侵入盗」の中でも「万引き」は、5万6769人のうち3万0773人、54.2%となっている。
次に多いのは「暴行」で、1万8747人のうち1万2148人、約64.8%。
3番目に多いのは「占有離脱物横領」で1万8447人中9428人、約51.1%。
万引きで執行猶予中に万引きをやったお爺ちゃんがいた。普通は起訴されて実刑判決を食らい、前刑の執行猶予を取り消されてダブルで服役することになる。が、かなりの高齢で病的万引きだったせいもあるのか、警察は微罪処分で終わらせようとした。助かったね~。
ところがそのお爺ちゃん、微罪処分が何だか知らなかったんだろう、微罪処分手続書に他人の氏名等を書いてしまった。成りすましがバレて「窃盗、有印私文書偽造・同行使」で起訴された、という事件を最近傍聴した。
当然さくさく実刑判決かと思いきや、なんとあの吉田勝栄裁判官は…! 今月中にメルマガでレポートしようと思う。
ちなみに、微罪処分についてこういうデータをネットに書いてるのは、もしかして私だけ? よし、他人が興味を示さない奥深いところへ、私はどんどん踏み込んでいこう、うむ。
ただ、ある種のお店等では、微罪処分の話はお姉ちゃんの興味をひくかも。昔々の私の少ない経験によれば、彼氏または元彼が勾留中だとか服役中だとかいうことがままあるので。
この2冊も是非読みたい!
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