フォト
2019年10月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ

« 新聞のネット記事の「更新」で新発見! | トップページ | 同じパターンの事故が起こり続けるわけ »

2018年10月23日 (火)

酒酔い運転の「大丈夫バイアス」

 以下は10月22日付け朝日新聞、の一部。

4人死亡事故、飲酒運転130キロで追突か 男性聴取へ
 青森県つがる市の国道101号で9月、車4台が絡み4人が死亡した事故で、4台のうち1台の乗用車が飲酒運転の上に時速約130キロで暴走し、他の車に次々にぶつかったとみられることが、捜査関係者への取材でわかった。県警は自動車運転死傷処罰法違反(危険運転致死傷)の疑いで、この乗用車を運転していた30代男性から事情を聴く。
        (中略)
 最初に追突した乗用車には30代の男性3人が乗っていた。関係者によると、3人は小中学校の同級生で、前日から運転者の自宅でバーベキューをして飲酒。さらに酒を飲もうと別の場所に移動する際に事故を起こしたという。運転者を含む2人が胸などを骨折する重傷、残りの同乗者1人は軽傷を負った。同乗者は朝日新聞の取材に「酔っていて覚えていない」と話した。

 この種の事件の裁判を私は何件か傍聴している。 
Img_1427 2008年のあの事件については、運転者本人の裁判と、同乗者2人の裁判を傍聴した。世間が思う悪質さとは異次元のレベル。運転者は懲役16年、同乗者は2人とも懲役2年とされたが、そんなことに何の意味があるのか、と思った。

 飲酒運転者への車両提供罪と要求依頼同乗罪を初めて適用された事件も、発生は2008年だった。
 その裁判について当時の『ラジオライフ』でレポートした。若干筆を入れて以下に再掲しよう。

 さらりと長い茶パツの、面長の女性(35歳)が、被告人席にひとりぽつんと座っていた。服装は上から下まで真っ黒。3人が死亡した事件の被告人として、喪に服しているのか。
 けれどよく見れば、襟元が大きく開いた膝丈のワンピースらしき服には、何やら目立つヒラヒラが。その下は、網目模様のストッキング、足首にストラップが付いたヒール。どれも真っ黒ではあるが、それって「シックに決めてパーティへ♪」の格好なのでは?

 この裁判を私は第2回公判から傍聴した。事件名が、1日に何件もある「道路交通法違反」のため、第1回公判をつい見逃してしまったのだ。
 だが、ただの道交法違反ではなかった!

 2007年9月19日、飲酒運転者への罰則が大幅強化。同時に“周辺者”の処罰規定が道路交通法に新設された。
 すなわち、①飲酒運転者への車両提供、②飲酒運転の車への要求・依頼しての同乗、③これから運転をする者への酒類提供、その3つが新たに処罰の対象とされたのである。最高刑は懲役5年。重い。
 今回の「道路交通法違反」は①と②の罪による、全国初の裁判なのだった。

 事件の内容は、すでに大きく報道されていた。東京都江戸川区内のアパートで2008年1月の夜、被告人は隣室の男性N(35歳)方で一緒に飲酒した。
 その後、自分の車をNに運転させ、被告人の子3人とNの子2人を乗せ、定員オーバーの合計7人でファミレスへ行き、さらに飲酒した。
 翌日未明、泥酔して猛スピードで運転したNはカーブを曲がりきれず街路樹に激突。Nと、被告人の長女(15歳)と次男(8歳)の3人が死亡。ほかは重軽傷…。

 ほぼ満席の傍聴人の前で、被告人質問が始まった。

弁護人 「前回(の裁判で)、あなたは『車で行こうよ』とは言ってないと、運転を依頼したこともないということでしたね?」

 N宅で酒を飲んでいるとき、「サイゼ(ファミレスのサイゼリア)へ行こう」という話になり、子どもが「チャリで行こう」と言ったが、被告人は「寒いからヤだよ。行くならタクシーで」と言い、最終的にNが被告人の車(日産グロリア)を運転して行くことになったというのだ。

被告人 「『車で行こうよ』と言葉では言ってないですけど、事実上依頼した事になるって(捜査段階で)言われました」
弁護人 「サイゼリアへ自分も乗って行くつもりだった、そこはお互い了解していたんだろうと?」
被告人 「はい」
弁護人 「そのことをもって依頼した事になるのは、よろしいか?」

  そう、「要求依頼同乗」は黙示の場合でも成立するとされている。
 しかし警察官は、習性とでもいうか、明示の要求依頼をしたと調書に取りたがる。

弁護人 「『車で行こうよ』と言ったと調書に書かれて、それは違うという話はしましたか?」
被告人 「しました」
弁護人 「訂正を求めましたか?」
被告人 「でも、結局はこういうことでしょって言われて…」
弁護人 「調書全体を読み聞かせてもらって、そのとき訂正は?」
被告人 「それまで直してくれなかったから、もう出来上がっちゃったし仕方ないかなって…」
弁護人 「調書には署名しないことができるって知ってましたか」
被告人 「知りませんでした」

 この点について、検察官は苛立った調子でこう責めた。

検察官 「調書に署名・指印するってどういう意味があるか、分かりますか!? それは常識的に知ってる事じゃないんですか。あなた、警察が書いたら何でも署名するんですか!?」

 あ~、またこれだ。調書でのこういうやり取りはしょっちゅうある。
 調書に署名・指印したら、そこに書かれたことが事実と違っていてももうオシマイ、とは一般人は知らないこと、警察は調書の訂正にはなかなか応じないことを、若いエリート検察官は知らないのだ。調書絶対信仰は根深い。

 Nが運転したグロリアは、ずばり被告人の所有とは言えないようだった。

被告人 「最初はNが欲しいって言って買って(カネを払ったのもN)、なかなか名義を変えてくれなくて、車検のとき、じゃ車検代は私が出すからって、私の100%所有になりました」

 しかしNはその後も自由にグロリアを運転し、いつも給油して返していたのだという。
 始まってから45分ほどで被告人質問が終わり、これで証拠調べは終了。
 検察官が論告・求刑を行った。

検察官 「Nは(サイゼリアで)次々と生ビールや焼酎のフルーツ割を飲酒し、血液中のアルコールは2.7ミリグラムもの酒酔い状態だった…」

 ええっ! 呼気1リットル中0.15ミリグラムまたは血液1ミリリットル中0.3ミリグラムのアルコールを保有していれば酒気帯び運転とされる。血液中2.7ミリグラムは基準の9倍だ!
 『図解交通資料集』(立花書房)に「飲酒酩酊度の区分表」がある。血液中2.5~3.5ミリグラムは「第三度(麻酔期・泥酔」とされ、「運動や知覚の中枢のほか、大脳や脊髄の反射機能は完全にマヒし、無意識無感覚の状態となり、水をかけても、針で刺しても全く感じなくなる…」とある。それを超えると「所かまわず倒れ、昏睡状態になり…大小便は垂れ流し…」だそうだ。

 Nの検査値はもう運転など到底できる状態ではなかったのだ。なのに運転し、毎時30キロ制限の道路を毎時80キロ近い速度で飛ばしたのだ、それもグロリアという大きな重い乗用車で。うわぁ! である。

 求刑は懲役3年。続いて弁護人が弁論。

弁護人 「車の名義は被告人だが、共同で支配していたとも言える。単独で所有する者が自由意志で車を提供したのとは大いに違う。被告人は悔やんでも悔やみきれない日々を過ごしている。残された長男に母親の存在は不可欠で、執行猶予の判決を…」

 最後に、被告人が証言台の前に立って最終陳述。

被告人 「私の軽はずみな行動がこんな事件を起こしてしまい、ほんとに申し訳ないと…」

 被告人の後ろ姿は、背が高くて足がすらりときれいだった。
 3週間後、判決が言い渡された。この日は報道のテレビカメラが入った。

裁判官 「主文。被告人を懲役3年に処する。この裁判が確定した日から5年間、その執行を猶予する。その猶予の期間中、被告人を保護観察に付する」

 懲役3年は執行猶予を付けられる上限だ。それを超えると猶予は付けられない。そして猶予期間は1~5年と決まっている。5年は最長。かつ保護観察付き。だからこれは、猶予付きでは一番重い、実刑ギリギリの判決と言える。
 この日の被告人は、膝丈のワンピースの下に、網目模様のレギンスだった。そんな服装に違和感を覚えるのは、私がオヤジだからであり、被告人の反省や悔悟にウソはないのだろう、とは思うのだが。

 あとになれば「悔やんでも悔やみきれない」ことを、つい調子に乗って、あるいは特に考えずやってしまう、それが人間ってものなのだろうと思う。
 どうすればいいのか。他人の事件・事故のニュースを見て、自分の行動を戒める?
 いやそれは期待できない。

検察官 「飲酒運転による悲惨な事故が度々ニュースになっている。あなたは見たことがないのですか」
被告人 「見ました」
検察官 「じゃあなぜ今回の飲酒運転を!」
被告人 「自分は大丈夫と思いました。結局(ニュースは)他人事だったというか…」

 これがまぁお決まりのパターンだ。
 正常性バイアスに似た「大丈夫バイアス」か。

 ←8月23日10時20分現在、週間INが170で1位~。 

« 新聞のネット記事の「更新」で新発見! | トップページ | 同じパターンの事故が起こり続けるわけ »

交通事故」カテゴリの記事

報道にコメント」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 新聞のネット記事の「更新」で新発見! | トップページ | 同じパターンの事故が起こり続けるわけ »