放置違反金、滞納処分と報道宣伝
交通違反の不出頭者をまとめて何人逮捕しました、と同様、放置違反金の滞納処分をしました、という報道も年に何回か必ず見かける。
以下は10月19日付け読売新聞の一部。
違反金滞納なら…漫画やフィギュアも差し押さえ
京都府警は今年から、駐車違反の放置違反金の滞納者に対する差し押さえの対象を比較的、安価な漫画本やフィギュアなどにも拡大した。オークションサイトに出品して滞納金の回収に充てる。こうした物品まで差し押さえるのは全国でも珍しいといい、府警では「逃げ得は絶対に許さない」としている。
放置違反金の滞納額は、昨年度までの累積で全国で約37億3000万円。京都府内でも約9100万円に上る。これまでは給与や車などを差し押さえていた。今年はすでに昨年の10倍以上、101件(12日現在)の差し押さえを実施し、競売サイトに出品するなどして換金している。
競売での落札額は計約10万円にとどまるが、愛着のある物品を手放すのを嫌って差し押さえ前に支払うケースも多く、約300万円の回収につながっている。
19日は京都市伏見区の集合住宅の一室を府警交通指導課員が訪問。住人の30歳代女性は約3年にわたって府警の納付命令や督促を計19回無視し、放置違反金と延滞金計3万8200円を滞納しており、ゲーム機などを差し押さえることを伝えると、知人に金を借りて支払ったという。
「フィギュアも」というところがインパクトがあって良い記者発表だと思う。京都府警さん、二重丸です。警察庁の評価も高いはず。
この方面のネタを私が書くとどうなるか。2013年9月に『ドライバー』に書いた原稿を、若干筆入れして以下に。 面白いよっ。だって本人がチョー面白がって書いてるもん。
交通警察官向けのマニア雑誌『月刊交通』(東京法令出版)。その6月号に、駐車取り締まりについての特集が載っている。
新しいペナルティ「放置違反金」(以下違反金)の未納額が100億円を超え「順次、消滅時効を迎えている状況」にあるので、気合いを入れて頑張りましょう! という特集なのだ。どうです、わくわくするでしょ(笑)。まずは現状について基本的なデータをいくつかご紹介しよう。
2012年6月1日時点で、駐車取り締まりの民間委託をやっているのは全国387警察署の管内。
ちなみに警察署の総数は、これは今、警察庁に電話してみた。今年4月1日現在、全国に1173署だそうだ。交番は6248カ所、駐在所は6614カ所。駐在所のほうが多いとは、へぇ~。クイズ番組にいいんじゃないですかね。民間委託の入札に参加したい業者は、あらかじめ公安員会に登録する。新制度のスタートは2006年6月。「新しい仕事でイッパツ儲けよう」と、いろんな業者が登録した。2006年の登録数は1470件。
しかし警察は、当初は1年間だった契約をだんだんと3年、5年へ変え始めた。小さな業者は参入しにくくなった。登録はめきめき減り、2011年はたった371件に。入札をクリアした契約業者は、2012年10月1日現在60社にすぎない。
60社の内訳は「警備業」が40、「ビル管理業」が13、「特殊民法法人」が2、「その他」が8…。
全国展開の大手警備業者が全国で多数の契約を取っているのが現状のようだ。
ちなみに警備業法は警察庁所管の法律。警備業者は警察庁傘下ってことになるのだ。そんな業者に「駐車監視員」(以下監視員)として雇われるためには「資格者証」の交付を受ける必要がある。高額の講習を受けたり、3万数千円かかる。
制度スタートの前年、1万41人が資格者となった。更新がなく生涯有効なこともあり「新しい資格をいっちょ取っておくか」って人が多かったのだろう。じつは私も資格者証を持っている。きゃっ。
その後、年ごとの交付数はぐんぐん減り、2011年末現在の累計は2万6079人だ。
それでも多すぎるくらい多い。現在、実際に監視員として稼働してるのはたった2014人とは、これもクイズのネタになりませんかね。さてさて、興味深いのは「放置違反金の未収対策」という記事だ。警察庁交通局の課長補佐氏がこう書いている。
「収納未済件数は、平成23年度末の累計で約80万件、金額にすると約107億円にのぼり……徴収権が時効を迎えたため不納欠損したものは、平成23年度末で約5万8000件、金額にして約8億円になる」
一定期間がすぎると債権(金を徴収する権利)は消滅する。消滅時効という。放置違反金(以下違反金)の消滅時効は5年だ。
違反金の誕生は2006年6月。5年後は2011年(平成23年)5月末。この間、消滅時効はない。
つまり、消滅時効による不納欠損が生じ始めてから11カ月間の不能欠損が8億円ってこと。今後、必死になって徴収しなければ、不納欠損はどんどん累積していく。もちろん警察は、預金を差し押さえたりして強制徴収ができる。それを「滞納処分」という。だが、課長補佐氏は続けてこう書いてる。
「平成24年中の滞納処分の実施数は、前年よりも1353件増加しているものの、全体で1万7088件にとどまり、未収件数に比べると遙かに少ない」
収入未済の累計が約80万件に対し、2011年中の滞納処分は約2%。マジやばいのである。
じゃあ、どうするか。滞納処分を効率的に実施することはもちろん大事だが……。「それ以上に、滞納処分を積極的に広報し、他の滞納者に警鐘を鳴らすなどの効果を最大限に引き出す方策や、滞納処分に至る前段階で、いかに任意納付を促すことができるかがポイントとなる」
警察庁は今年の道交法改定で、銀行や郵便局だけでなく24時間営業のコンビニでも違反金を払えるようにした。
「任意納付の機会が拡大されることにより、任意納付の大幅な増加が期待できる」
なるほど~。
さらに、「催告状」や「最終催告状」の封筒を赤や黄色にして注意を喚起している警察もあるそうだ。
もうひと工夫を加え、「財産の差押えについて」という赤紙を同封している警察もあるという。納付しなければ「財産を差し押さえる」こととなる、その際、「財産調査をした上、事前連絡することなく実施」すると告知。差し押さえの対象は「不動産、自動車、銀行貯金等、給与等、その他財産」だと記載して。これはだいぶ効果的だそうな。
やっぱり滞納処分は手間がかかる。自発的に払うよう仕向けるのがベストだよね。ところで、歩行が不自由なお年寄りなどに交付され、標識による禁止場所に駐車しても違反とされない「除外標章」、その不正使用がけっこうあるんだという。
特集記事の1本は、それをどう検挙したかという愛知県警のレポートだ。有名な繁華街、名古屋市中区錦3丁目、通称「錦三」に、怪しい除外標章を掲示したクルマが3台あった。調べると偽造だった。「張込み、尾行捜査等を深夜に及ぶまで継続して実施した結果」、運転者3人を特定できた。
だが、「偽造有印公文書行使」で立件するためには、偽造であるとの確実な認識が必要となる。知らなかったと言い訳されては困る。そこで……。「仮に偽造性を否認されても被疑者に言い逃れをさせない方法として、被疑者の行為が駐車監視員の確認事務(※駐禁ステッカーの取り付け)の妨害に当たる行為だとして……検察庁との協議を重ね、偽造の認識の有無を必要としない偽計業務妨害罪にて強制捜査で臨むこととした」
難しいケースは検察庁と協議して、確実に有罪にできるやり方をとるのだ。
3人を逮捕すると、案の定、「拾ったもので偽造とは知らなかった」と弁解。しかし偽計業務妨害罪でばっちり送検。3人とも罰金30万円とされたそうだ。大阪府警のレポートも載っている。「車検拒否制度」により無車検・無保険となったクルマを運転した13人を逮捕。同時に、13人分合計415件、625万6000円の違反金を徴収したなどと。
そして結びにこうある。「テレビ、新聞等のマスコミに大きく報道され、放置違反金の滞納や除外標章の不正使用について社会の警鐘を鳴らし、滞納していた放置違反金を自主的に納付する者も現れる等大きな反響を得た」
悪質なケースをガツンと逮捕し、高額の違反金を強制徴収し、大きく報道させる。その宣伝効果で、違反金の未納や新たな犯罪を抑止する、そういう作戦なんだね。
私としては、そもそも駐禁規制の対象を悪質な迷惑駐車だけとし、「このルールはみんな守らねば」との認識を社会が共有するようになるのがいちばんいいと思う。
でもそれだと大量に取り締まれず〝収益事業〟として成り立たない。うーん、警察もつらいよ。私もつらいです。 ←お前は関係ないだろっ(笑)。
放置違反金の納付命令の件数は、「約束が違うじゃーん!」と地方自治体が泣きたくなるほど減少している。交通取締り全体も減少し、交通安全協会は火の車、という原稿は間もなく発売となる『ラジオライフ』に書いた。
運転免許の更新時講習等のテキスト『交通の教則』はタイトルが変更され、なんと…! という話はメルマガ最新号、第2167号の編集後記に書いた。
ところで諸君、大変なニュースがある。
究極の居酒屋「昭和」が、嗚呼、諸行無常、11月30日で閉店、終了となる。昭和という時代が終わるのである。
11月30日までの間、ひんぱんに「昭和」へ通いたいが、しかし単行本原稿があり…。単行本はいつでも書ける、「昭和」は今しかない、と言っては編集長氏からぼっこぼこ叱られる。ほらね、私もつらいのですよ。
画像3点は10月18日の「昭和」の酒肴だ。
画像上は、煮物と、フライドチキン。画像下はサンマ焼き。いずれもチケット1枚。画像中は、まぐろ刺身とシメサバ、の食べかけ。これはチケット2枚。チケットは10枚綴りで1200円。消費税なし。こんな店がなくなる、日本国にとって大きな損失と言わざるを得ない。諸行無常と分かっちゃいるが、でも悲しい。
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
でしょでしょ、画像あっての記事と私も思います。
投稿: 今井亮一 | 2018年10月21日 (日) 10時12分
きじの内容より、つまみ画像がきになります。
投稿: はるな | 2018年10月21日 (日) 09時52分