88歳爺ちゃんの万引き、統治者に都合の良い勘違いへ導く報道
烏賀陽弘道さんのTweetで知った、昨年10月9日付けの徳島新聞の以下の記事を。■は私。
88歳無職の男、スーパーで卵1パックを盗み懲役1年の実刑/徳島地裁
徳島地裁は8日、徳島市■■■■、無職の男(88)に窃盗罪で懲役1年(求刑同1年6月)の判決を下した。7月30日午後4時45分ごろ、徳島市下助任町1のスーパーで卵1パック(販売価格245円)を盗んだ。
なんちゅう短報。読者にいったい何を伝えたいのだろう(笑)。
裁判傍聴マニア、裁判傍聴師として以下コメントしてみよう。
万引きは、イッパツで懲役の実刑とはならない。
微罪処分、起訴猶予をそれぞれ1回乃至複数回 → 略式で罰金20万円か30万円 → 罰金40万円か50万円 → 公判請求(正式な裁判への起訴)をされて執行猶予付き懲役刑 → 懲役刑の実刑、というふうに階段をのぼっていく、通常は。
以下、万引き以外に前科・前歴がないものとして考えてみる。
卵1パック(販売価格245円)の万引きで、初めての公判請求で求刑1年6月ってことは普通ない。
本件は、執行猶予付きかどうか、懲役前科があったのだろう、とストレートには推認される。
前刑の執行猶予が取り消されてダブルで服役、かつ初めての服役であれば、懲役10月か8月まで下げておかしくない。
88歳なのに懲役1年までしか下げなかったってことは、服役前科があるのかも。
昔から手癖が悪くて万引きをくり返してきたなら、求刑1年6月、判決1年ってこたぁない。だいぶ高齢になってから万引きをくり返したのかなぁ、とまぁ大雑把には推認される。
だとすれば、なぜ?
加齢に伴う脳の萎縮により、自己コントロール能力に問題が生じた、のかもしれない。
孤立、孤独の境遇で、万引きで得たドキドキ感、達成感が、衰えた脳に焼き付き、病みつきになってしまったのかもしれない。
しかし、そういうことは考えず、外形的な事実(前科・前歴も含む)により量刑相場の階段をのぼらせる、それが刑事司法だ。
そして記者クラブメディアにとって、前科・前歴はタブーらしい。
何も知らない読者、裁判傍聴マニアじゃない読者は、「卵1パックで刑務所行きかぁ!」とだけ印象するだろう。
でもそれは、国家の治安的には好ましい勘違いといえる。万引きを軽く考えている多くの国民らが、勘違いでびびってくれたら、素晴らしいじゃないか。
上掲徳島新聞の記事は、その勘違いを導くためだけの報道、といえるんじゃないか。
私はなぜそんなことに気づいたのか、じつはそのへんを今月下旬に発売となる『ラジオライフ』に書いたのだ、可搬式オービスにからむ話として。
可搬式オービスや、「反則金払わず逮捕」と読める報道など、私はそっちが専門だから見破る。万引きについても分かる。だが、専門外のジャンルでは、私もだいぶ勘違いへ導かれてるんじゃなかろうか、という話。
画像は、最近ドラッグストアで買った、いわば携帯式小型人力扇風機だ。198円+税。音はうるさいし両手がふさがるが、けっこう強力だ。この夏、だいぶ流行るかもねっ。
今回の爺ちゃん、死なずに刑務所を出れば、また万引きをやるんじゃないかと私は見る。でも大丈夫、そのときはまた刑務所へぶち込みますから?
« 闇バイト、連絡とったら刑務所行きが確定 | トップページ | マジでヤバイ記事だったらしい件 »
「刑事/窃盗」カテゴリの記事
- 最高裁、約55分前に満員御礼とは!(2021.09.07)
- 行ってきました前橋簡裁!(2020.10.19)
- 88歳爺ちゃんの万引き、統治者に都合の良い勘違いへ導く報道(2020.06.15)
- 懲役4月、司法の良心!(2020.04.05)
- 昭和のあのトップモデルがまた法廷へ出てきた!(2020.01.21)
コメント