ワルのコミュニティとは縁を切れ!
「(わ)」は地裁の公判請求事件の、事件記録符号だ。普通はたとえばこう記される。
令和4年(わ)第123号
ところが東京地裁は、私が想像するに、かつて1万事件を軽く超える時期があって、どなたかが思いつき、おっそれイイネとなったんじゃないか、事件記録符号の前に漢字を1文字加える。
刑法犯には「刑」、特別法犯と条例違反には「特」、合議事件には「合」の1文字を。
令和4年刑(わ)第123号
令和4年特(わ)第123号
令和4年合(わ)第123号
2月15日、私としては初めて「令和5年刑(わ)」を見つけた。第23号、「公務執行妨害、傷害」だった。
念のため言っておくと、第1号~第22号がすべてすでに公判期日があった、とは限らない。
被告人が在宅の事件は、身柄の事件より第1回公判が遅かったりする。
東京簡裁については1月27日、初めて「令和5年(ろ)」を見つけた。第6号、「住居侵入、窃盗」だった。
高裁に「令和5年(う)」はまだ見えない。
そんな2月15日(水)、午前10時から東京地裁で「住民基本台帳法違反」を、マニア氏から期日を教わり傍聴した。
「杉並区職員が個人情報を漏えい…暴力団関係者「戦慄の悪用目的」」と11月8日付けFRIDAY、この事件の第1回公判だ。
公訴事実では、漏れたのは住所の情報だけらしい。
あらゆる個人情報が紐付けられたマイナ情報も、いずれ必ず漏れ、悪用されるだろう。
だから、やたら名寄せをやっちゃいけない、のだが、日本はやたらヤルだろう。
日本には「行政無謬(むびゅう)の原則」というのがある。漏洩など起こるはずがないことを前提に進めることができるのだ。
などと思いつつ、甲9号証の要旨告知の途中で私はそっと出た。なぜ?
10時30分から別の法廷で、絶対見逃せない「覚せい剤取締法違反」の審理があったのだ。
こっちの被告人は、大谷翔平選手ともなんというかちょっとつながりのある若者で…。
要するに、2021年に還付金詐欺の出し子をやらされ、さくっと実刑判決(懲役2年、未決50日算入)を受けた。
保釈されてから建築関係で、死に物狂いで働いた。2022年の控訴審の被告人質問でこんな話が出てきた。
被告人 「日勤、夜勤、休みなく働いてます…(週に)日勤7、夜勤3」
弁護人 「良くないことがありましたか?」 ←なんて質問だ(笑)。
被告人 「3月…屋根から、ちょっと落ちまして、一戸建ての2階の、施工した写真を撮影してるとき、ちょっと無理して働きすぎたかと…」
弁護人 「ケガは」
被告人 「頭蓋骨3カ所と、左手首を骨折…頭蓋骨、血はひいて、でも骨はくっついてない…1週間入院、1週間自宅療養…左手は完治しないまま仕事に…」
必死の頑張りに打たれたか、雇用主は大金を前借りさせてくれた。
なんと600万円ぐらいを被害弁償。被害者から宥恕(ゆうじょ。ひろい心での許し)を得た。
2022年6月2日、東京高裁の判決はこうだった。
裁判長 「主文、原判決を破棄する。被告人を懲役3年に処する。原審における未決勾留日数中50日をその刑に算入する。この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する」
傍聴席には、奥さんに連れられて幼い女の子がいた。被告人の娘だ。
パパの立場など知らず無邪気にふるまう笑顔が可愛くて、ほんと天使のようだった。
ところが!
それから約2カ月後、覚醒剤で捕まってしまった。
無茶な働き方を続け、「疲れをとるため」使用したというが、そうじゃないだろ、と私は思う。
還付金詐欺の件も、なんというか悪い奴の“混入率”の高いコミュニティにいた、そういうことだろ、と。
今回の求刑は懲役1年6月、の実刑。
弁護人は「特に酌量すべき点はあり、再度の執行猶予を」と述べたが、ぜんぜん熱が入らず、いちおう言うだけ言った、だけのように私は傍聴席で感じた。
次回判決。懲役8月まで下げてくれたら最高、実刑は免れないだろう。
懲役3年、未決50日算入の“弁当”を持って、パパは遠いところへ行くのだ。戻る頃、娘は小学生かも。
前刑の裁判から傍聴してきて、この若者が悪い奴とは到底思えない。ワルのコミュニティとすっぱり縁を切れなかった、そこが…。たかが傍聴人の私だが、残念で悔しくてならない。
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