検察官席と弁護人席の言い伝え
「「正嗣(まさし)、愛してる」最愛の息子に刺されながら、父親は最期に伝えた…父親を刺殺した28歳の男が抱える生きづらさの背景」と10月28日付けTBS NEWS DIG。元は北海道放送のニュースかと思われる。
6分割の5番目にある2つの写真。右はそのスクリーンショットだ。
上のほうの写真に「検察は自首は成立しないと反論」とある。
下のほうの写真に「弁護側は障害が犯行に関与したとして情状酌量を求めた」とある。
上下とも、写る人物は若者だ。下のほうの写真の1人は、私が言うところの「眉隠しヘア」だ。
眉隠しヘアはときどきいる。目隠しヘアもたまにいる、法廷の、バー(傍聴席の前の柵)の向こう側に、だ。
前髪に隠れておどおど生きるのか君は、と思う私に前髪はない。 ←もっといろいろないだろ(笑)
上の写真の、木製の長机の前に、黒いベンチがある。
通常(※)、そのベンチには被告人が、被告人が身柄の場合は同行の官(刑務官または警察官)も座る。 ※裁判員裁判では、被告人は弁護人の隣に、官はそのやや斜め後ろに座る。
下の写真、黒いベンチはなく、木製の長机の上に、有斐閣の六法全書が立て置きされている。
ああいうふうに置くのは、通常は検察官だ。
教科書を学校に置いて帰宅するのを「置き勉」というらしい。私が知る限り検察官の六法全書は「置き六」だ。
北海道放送またはTBSは、なぜ間違ったのか。
傍聴席側から見て左側が検察官、右側が弁護人、という“言い伝え”を信じていたから、かも。
リアル裁判所では、右左、左右、どちらの法廷もある。地裁も、高裁も、簡裁もだ。
ただし民事では、傍聴席から見て原告が左側、「被告」(※)が右側。これは動かないようだ。 ※刑事は【検察官vs被告人】、民事は【原告vs被告】。メディアでは被告人を「被告」と報じる決まりだ。
そういえばだいぶ前、『ビッグコミック・スピリッツ』で、私が原作者のオービス裁判コミック『交通被告人、前へ!』の連載があった頃、「検察官と弁護人の席が逆だ。嘘を書くな!」旨の、怒りのお便りがあった。
“言い伝え”は、けっこう強固に広まっているらしい。
もっといえば、「殺人」は裁判員裁判対象事件だ。
今回のニュースからは、裁判員の存在は全く感じられない。法壇に空席がいくつかあることを除いて。
おっと、こう書くと「法壇に椅子が9つあることで裁判員裁判と分かるだろ、バカめ!」なんてお怒りのコメントが寄せられるかもしれない。
先に言っておく、9つの法廷は裁判員裁判専用ではない。裁判官3人の裁判でも、1人の裁判でも、9つの法廷は使われる。
ちなみに、身柄の被告人は、手錠&腰縄で拘束され、縄尻を同行の官に持たれて入廷する。
裁判官が開廷を宣すると、官がカチャカチャと手錠を外し、腰縄を解く。腰縄は、被告人が逃走できないよう、緩まないよう、それなりに厳重にかけられており、外すのに手間取る官もいる。
執行猶予判決だった場合などを除き、閉廷後、官は被告人にカチャカチャと手錠をかけ、腰縄をかけ、退廷する。
だがそのシーンを、裁判員が見ることは決してない。
裁判員のほとんどは、裁判所へ来たこともない全くの素人さんだろうことを踏まえ、リアル手錠を見て「ひーっ」とならないよう配慮しているらしい。
逮捕から半年も、場合によっちゃ2年ほども、拘置所に勾留され続けている、という事実をなるべく認識させないように、との意図もあるのかも。
裁判員裁判を傍聴する方は、「裁判員は手錠・腰縄を見ない? ほんとか?」と、そんなとこにも注意しては如何でしょう。
←10月30日11時50分現在、週間INが100で2位。 今月、完全に1日おきで更新した。2006年2月にこのブログをスタートさせから初めてかと。アクセスカウンタは現在342万5045。
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