性犯罪に群がる傍聴人たち
私の場合、裁判傍聴なるものに初めて挑戦してからおよそ40年。裁判傍聴マニアと自称できるようになってから丸20年である。
裁判傍聴マニアの定義とは、うーん、外形的には、無関係な他人の裁判を次々傍聴する、それを毎日なり月に数回なり継続的に行なう人、かな。
裁判傍聴マニアになってから丸20年、主に東京地裁(東京高地簡裁合同庁舎)へ通ってきた。その立場から、性犯罪の刑事裁判に関して、やっぱり少し述べておかねばと思う、右のポスト(旧ツイート)を拝見したうえは。
昔は「強姦」「強制わいせつ」だった。
「強姦」は「強制性交等」となり、「不同意性交等」になった。
「強制わいせつ」は「不同意わいせつ」になった。
盗撮は、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反」(東京の場合)から「性的姿態等撮影」になった。
刑法が改正されたり、新法が施行されたりしたのである。
東京地裁はやたら傍聴人が多い。
2004年5月に裁判員法(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律)が公布。その頃からか、法務省、最高裁が、国策である裁判員制度を、税金を使ってめちゃくちゃ宣伝した。
働きかけがあったのだろう、小中高生、大学生、法科大学院生、企業や団体の新人研修等々等々、傍聴人が爆発的に増えた。爆増した。230人を超える団体もあった。
裁判所前の道路(桜田通り)に貸し切りバスがよく並んだ、何台も。
引率者により傍聴すべき法廷が決まっていない人たち、何を傍聴するか、開廷表を見て決める人たちは、全員ではないが、やっぱりどうしても性犯罪へ行く。
10時から6つの法廷でそれぞれ「窃盗」「詐欺」「覚せい剤取締法違反」「出入国管理及び難民認定法違反」「道路交通法違反」「強姦」の新件がある、となれば、多くの傍聴人が「強姦」を選ぶ。
10時~11時に「強姦」の新件、11時~12時に別の法廷で「強制わいせつ」の新件、となれば、法廷から法廷へ、民族の大移動ならぬ傍聴人の大移動だ。
性犯罪の裁判が、同時刻に重ならず、13時30分と14時30分と15時30分に続けてある、ということが起こり、ある有名傍聴マニアは喜色満面、もうニッコニコ、ということもあった。
おそらくすべての裁判官が、心にこう焼き付けているだろう。
裁判官 「裁判が公開なのは、国民に司法を監視させるためだが、国民なんて、ふふ、結局こんなもんだよ」
しかし、と私は思う。
「いっぺん見て来い」とか言われて裁判傍聴へ来るに当たり、というか日々の中で、自らが「国民」であることを意識する人って、どれほどいるだろう。
普通の人間なら、性犯罪、エロ裁判を傍聴したがる、そういうもんでしょ。
普通の人間なら、選挙があっても投票に行かない、行くとしても「テレビによく出て立派なことを言ってるから」程度で投票したり、そういうもんでしょ。
たかがそんなことで「国民に司法を監視させるため裁判は公開」の原則を棄ててはならない、そう考える裁判官もいるだろう。
とはいえ、性犯罪の裁判の、被害者、その家族の方々は「クソな連中がわらわらと集まってきやがる。見せもんじゃない!」みたいな気持ちになる、それもまた当然のことと思う。
そうした声があることを、性犯罪の裁判へ集まる傍聴人は知っておくべきと思う。是非知っておくべきだ。
私の場合、「今日は裁判傍聴してみようか」と裁判所へ行くことはない。
手帳に、どうしても傍聴したい裁判の期日がメモられている、そういう日にだけ行く。
行って、それだけ傍聴して帰ることは、あんまりない。
当日の開廷表を見て、「あっ、こんなのが今日ある」「これ、なんだろ」と、しょっちゅうなる。それが性犯罪の事件なこともある。そうして次々傍聴するのだ。
とんでもない性犯罪とわかり、追っかけて傍聴することもある。
特に最近は、「不同意性交等」「不同意わいせつ」「性的姿態等盗撮」をなるべく傍聴したい。新しい法条、新しい法律がどう運用されているのか、知りたい。
盗撮については、法定刑が従来より3倍も重くなった。実際の量刑相場の変化を知りたい。
あそうそう、傍聴マニアになりたての頃、私は「公然わいせつ」に嵌(は)まった。
阿曽山大噴火さん似のホームレス男性が、ベランダの女性下着を見上げて路上で自慰行為をした、というのが、最初に傍聴した事件だったか。
「青いブラジャーの露出魔」というのもあった。
病気で勃起しないと被告人は思い込んでおり、勃起したように見せる“工作”をし、裸に青いブラジャーを着け、女性を見つけてコートの前をばっと開く…。
病気で歩行が不自由だったことから、相手にしない女性もいたのか、捕まったのは何度目かだった。
あの被告人はもう亡くなったかも。
ま、とりあえずそんなことで。
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