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« “偉ぶる魂”の攻撃者たちは、じつは自己肯定感が低い? | トップページ | 身につけたパンツの性器を覆っている部分 »

2023年11月19日 (日)

「べつにまー、終わってもいいやーって、いつも思ってたんで」

 一昨日の記事、「“偉ぶる魂”の攻撃者たちは、じつは自己肯定感が低い?」で触れた、メルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」の2012年の第781号「べつにまー、終わってもいいやーって」、あの本文を、若干加除訂正して、ここに転載しよう。

 

 その前に、前提となる豆知識を。
 裁判所法の規定により、簡裁は、「窃盗」や「住居侵入」など一部の罪についてしか懲役刑を科せない。
 てえことは? そう、それ以外で簡裁の刑事法廷へ出てくる事件は、罰金判決で決まりなのだ。 ※無罪、拘留、科料は捨象
 でも罰金は通常、略式で処理する。
 なんで公判廷へ出てきたの? 何か事情があるんだな? だから我々は狙って傍聴するのである。

 

23021552  2012年6月12日(火)13時30分~14時20分、東京簡裁・刑事2室2係(佐々木次郎裁判官)728号法廷で「器物損壊」の新件を傍聴した。

 被告人は身柄(警察留置場)。紫色のトレーナーの袖を肩近くまでまくり上げ、下は濃いグレーのスエット。官給品の水色サンダル(通称便所サンダル)。
 良い感じに巻いた濃い茶パツで、若干フランス系の可愛い顔立ちの女性だ。
 ただ、表情も仕草も、文句ありげぇな、いかにも投げやりぃな感じで…。

 驚いたことに、同行の警察官が2人とも女性だった! そんなの初めて見る。持ち物に「新宿警察署」の文字が。

 まずは人定質問。
 被告人は休めの姿勢で、白い細い両腕をのばして証言台についた。背を丸めて頭部を突き出し、投げやりぃに答えた。

被告人 「(住所は)今ちょっとなぁいです。(職業は)今ちょ無職です」

 32歳、前科なし。昨年7月まで母親とアパートに住んでいたが、家賃滞納で追い出され、母親とともにカラオケ店やファストフード店で寝泊まりし…。
 5月の連休中、空腹を感じ、デパ地下で試食品を食べようと、新宿の某有名デパートへ。

 少し食べてから4階の休憩スペースに座っていると、店員がじろじろ見ているような気がして腹が立ち、女子トイレ内のゴミ箱を蹴って凹損させ…。大声で叫んだり、だいぶ暴れたらしい。

 検察官が乙2号証(捜査段階の調書)の一部を読み上げた。こんな部分があった。メモしきれなかった部分を「…」でつなぐ。

乙2号 「私は基本的に仕事、好きじゃなく…住むところがない。好きでやってるわけじゃない…悪口言われてるように思った。じろじろ見られて…自分のみじめさに腹が立ち、イライラしてムシャクシャしてきた…」

 甲号証、乙号証の要旨告知で検察立証は終わった。
 
13時41分、弁護人立証。書証も情状証人もなく、被告人質問が始まった。

 弁護人は若くスラッとした男性だ。短く1問1答の、教科書通りの質問っていうのか、「ゴミ箱はあなたのものですか」「では誰のものですか」とか重ね、反省と被害弁償の意思を短く言わせて終わった。
 こんなものどうせ罰金刑と、高をくくっているんだろうか。だとすれば有能だ。懲役の実刑を視野に弁護する弁護人もよくいるので。
 つづいて検察官から反対質問。

検察官 「定職に就いたことはない…」
被告人 「あそーですね」
検察官 「原因は何ですか」
被告人 「えーとォ、なんか、やんなるとすぐ放り出しちゃうとか(笑)、飽きっぽい…んじゃないかなと」

 今回のことで母親はもう自分を見放した、そう思っていると被告人は投げやりぃに述べた。

検察官 「お母さんに何か不満…根本的な理由は何ですか」
被告人 「…(しばし沈黙)…意見が合わないって感じですかね、子どものときの…」
検察官 「具体的には?」
被告人 「ま、いろんなことです」

 いろんなこと、とは? そこは突っ込まず、相検察官がすっくと立ち上がった。

検察官 「今、あなたどういう立場か分かってますか」
被告人 「…裁判です」
検察官 「ときおり笑みを浮かべてますが、それは…」
被告人 「あーこれ、癖なんですよ自分の」
検察官 「こういう場所ではきちっと…」
被告人 「もともとこうなんで、んー、昔はこうじゃなかったんですけどね、壊れたっていうか」

 なに? しかしそこも検察官はスルー。裁判官はこう尋ねた。

裁判官 「逮捕されたときお金ない(※所持金は100円足らず)、どうやって日々の生活をするつもりだったんですか」
被告人 「べつにまー、終わってもいいやーって、いつも思ってたんで」

 だったら万引きや傷害の、せめて前歴くらいありそうなのに、それがない。
 もしや立ちんぼ(売春)をやってたのかも。
 あからさまに投げやりなのは、何かのSOSと推察される。いったい何があって「壊れた」のか!

 しかし、だぁ~れもそこは突っ込まないのだった。
 検察官や裁判官は、相場どおりに処理するのが仕事としても、弁護人は…。
 けど弁護人は、教科書通りの弁護活動にしか興味がなさそうで、うーん。

 求刑は罰金10万円。最終陳述は…。

被告人 「べつにないですけど」

 そして、「けっ」か「へっ」というふうに息を吐いた。
 証言台のところから被告人席(弁護人席の前のベンチ)へ戻るまでの、被告人の肩付近まで袖まくりした両腕が、細くて白くて…。

 

 きっかり1週間後の9時50分、判決。
 私は傍聴できなかった。超絶マニアックデータに主文は罰金10万円とだけある。あとで調べたか、マニア氏から教わったか。

 「未決勾留日数の1日を金5千円に換算してその刑に満つるまで算入」旨の記入がない。
 逮捕は5月の連休中、第1回公判は6月12日、起訴からは1カ月もなく、裁判儀式的に未決算入は不可なのだろう。
 被告人は、さらに20日間、労役場留置となる。  ※財産刑(罰金刑)を執行できないときは自由刑(労役場留置)に換刑する。

 

 あれから11年、あの被告人はどうしたろう。
 被告人氏名でネット検索してみた。Facebookが2つヒットした。
 1つには、可愛い女子小学生の写真があった。もう1つは、写真も投稿も一切なかった。

 ←11月19日5時20分現在、週間INが50で2位。

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