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2024年3月19日 (火)

【独自】心神喪失で不起訴は370人

Screenshot-20240319-at-205554  事件数で1万1千件超を傍聴してきた立場から、少しコメントしてみたい。

 「夫を殺害した男性は、心神喪失で不起訴になった。裁判官と受け答えができていたのに…「どうして殺されたの?」真相を求める遺族の苦悩は続く」と3月19日付け共同通信。画像はそのスクリーンショットだ。
 以下は刑法。

(心神喪失及び心神耗弱)
第三十九条 心神喪失者の行為は、罰しない。
 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

 

 これはほとんど空文、と傍聴席からは思える。

 犯行後に逃げたなら「是非弁別能力あり」とされる。
 ひとけがなくなるときを狙って襲ったなら「行動制御能力あり」とされる。
 完全に狂ってるっぽい場合は「病気の影響は否定できないがその影響は限定的だった」とされる。

 起訴されたらもうアウト、有罪確定、と傍聴席からは見える。
 何を処罰すべきかは検察の守備範囲、裁判所の役割は、処罰を法的に正当化しお墨付きを与えること、そこが基本と、ぶっちゃけ傍聴席からは感じる。
 いちおう断っておくと、私の場合、良い悪いは措き、とりあえずありのままに見るよう心がけている、つもりだ。

 

 そういうなかで、検察のほうで、心神喪失により不起訴とすることはある。
 2022年(それが最新)の検察統計の「8 罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員-自動車による過失致死傷等及び道路交通法等違反被疑事件を除く-」によれば…。
 既済の総数は30万6659人。うち14万6617人が不起訴で、うち370人が「心神喪失」だ。

 起訴した場合に裁判官が悩みそうなケースは不起訴、そういうことかなと。
 特に「殺人」は裁判員裁判の対象事件だ。裁判員に難しい判断は無理。裁判員裁判の判決を高裁でひっくり返したら批判を招きかねない。そういう深謀遠慮もあるかも。

 

 そんなことを踏まえて、今回の事件、どうなんだろう。

「犯罪者に権利など不要。法律が犯罪者を守るなどおかしい! ぶっ殺せ!」

 そうした声が大きく響きやすい社会状況であるといえる。
 ならば、起訴して…。

「思考盗聴やストーカー云々(うんぬん)など、被告人が統合失調症の迫害妄想に支配されていたことは明らかである。しかし、殺人がよくないこと自体は認識していた。被害者が1人になるところを狙っており、行動制御能力もあった。刑事責任能力は完全にあったと認められる。よって被告人を主文の刑に処し、未決勾留日数中600日をその刑に算入する」

 との判決を得ることも、可能だったはず。
 なぜ本件は不起訴だったのか。
 担当検察官が、だいぶんに変わり者だったのか、あるいは、本件がよっぽど特殊な事件だったのか。うーん。

 

 私としては、370人をすべて、「〇〇起訴」とかいう呼び方で起訴してはどうか、なんてちらっと思ったりする。
 すなわち、検察官は不起訴を主張し、その理由を述べる。公益弁護人みたいな人が意見を述べ、被害者遺族も意見を述べる。でもって裁判官が判断する、そういうのはどうかなと。

 検察が密室で不起訴と決め、その理由としては「心神喪失」の4文字しか明かさない、それよりは良さそうな気が…。

 ←3日19日21時50分現在、週間INが60で2位。

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