大麻取締法は目的のない法律
「去年1年間の大麻による検挙人数およそ6500人で過去最多 初めて覚醒剤の人数を上まわる」と3月21日付けTBS NEWS DIG。
警察庁によると、2023年の大麻事件の検挙は、前年より1140人増えて6482人、過去最多だという。
年代別では、20代が3545人、10代が1222人、いずれも前年より大幅に増えて過去最多だという。
私は大麻の刑事裁判も、まあまあ傍聴してきた。
「大麻取締法違反」は「道路交通法違反」と似たところがある。
どちらも、リアル社会でそれなりに、またはかなり活躍している人が被告人であることが、他の犯罪より多い、私が傍聴してきた限りでは。
そんな立場から、警察は発表せず、したがってニュース報道にならないことを、述べておきたい。
大麻は、使用はセーフ、所持がアウト、とは近頃は多くの方がご存知だろう。
だがそれは、「リラックスするため」「興味本位で」などといった場合についてだ。
「大麻取締法」第4条第1項は「何人も次に掲げる行為をしてはならない。」として4つの行為を掲げており、うち2つはこうだ。
二 大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。
三 大麻から製造された医薬品の施用を受けること。
大麻由来の医薬品の処方や使用(施用)を、わざわざ明文で禁止している。
第24条の3第1項に「次の各号の一に該当する者は、五年以下の懲役に処する。」とあり、その第2号はこうだ。
二 第四条第一項の規定に違反して、大麻から製造された医薬品を施用し、若しくは交付し、又はその施用を受けた者
大麻由来の医薬品となると、使用(施用)もアウトなのである。
いったいなぜ、医薬品をわざわざ明文で禁止するのか。
多くの法律は第1条に目的、守ろうとする法益を定めている。
たとえば「覚醒剤取締法」はこうだ。
(この法律の目的)
第一条 この法律は、覚醒剤の濫用による保健衛生上の危害を防止するため、覚醒剤及び覚醒剤原料の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用に関して必要な取締りを行うことを目的とする。
たとえば「麻薬及び向精神薬取締法」はこうだ。
(目的)
第一条 この法律は、麻薬及び向精神薬の輸入、輸出、製造、製剤、譲渡し等について必要な取締りを行うとともに、麻薬中毒者について必要な医療を行う等の措置を講ずること等により、麻薬及び向精神薬の濫用による保健衛生上の危害を防止し、もつて公共の福祉の増進を図ることを目的とする。
たとえば「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」はこうだ。
(目的)
第一条 この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。
では、「大麻取締法」はどうか。第1条はこうだ。
第一条 この法律で「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。
いきなり定義から始まっている。
目的がないのである。掲げるべき目的がなく、ただ禁止し処罰するための法律なのである。
大麻は、治療用はもちろん嗜好用も、世界的には解禁の方向へどんどん向かっているという。
依存性等の害はアルコールより格段に小さいことが広く明らかになってきている。
ゆえに、罪悪感なく大麻に手を出したくなる人は少なくないだろう。
治療や苦痛の緩和のために、という人もおいでだろう。
だが! そんなの関係ねえ、そんなの関係ねえ!
大麻のいちばんの怖さは、依存症とかじゃなく、日本では禁止されていること、そのこと自体なのである。オッパッピーなのである。
世界には、独裁者に逆らえば殺される国もあるという。
日本は、「大麻から製造された医薬品」すら禁じて刑罰を食らわす国なのである。
良い悪いじゃない、捕まるかどうか、なのである。
そこんとこ、特に若い方々に、きりきり知ってほしい。肝に銘じてほしい。
私の声は若い方々には届かないだろう。
これをお読みになった方が、お子さんやお友達に伝えてくれることを願ってペンを置く次第だ。 ←なんか偉そう(笑)
ちなみに、違法薬物の刑事裁判では「親和性、常習性、依存性」が悪情状の3点セットなのだが、「大麻取締法違反」の裁判では、裁判官は依存性を言わなくなったね。
検察官もあんまり言わない。
言うのは弁護人だ。「依存症治療の専門医療機関へ通院します!」と、被告人によく言わせたがる。
あーぁ、と私は傍聴席から見ている。1段高い法壇で、裁判官は目を伏せている…。
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