殺人は嫌疑不十分、嫌疑なしの不起訴がなぜどっかん多い?
「【独自】心神喪失で不起訴は370人」と3月19日に書いた。
もう少し詳しく、たぶんどなたもご存知ないことを、またちらっと。
2022年(それが現時点で最新)の検察統計によると、刑法犯、特別法犯、全体の起訴、不起訴の既済人員はこうだ。%は私の怪しい計算による。
起訴 9万5005人
うち公判請求 5万8775人 61.87%
略式命令請求 3万6230人 38.13%
不起訴 14万6617人
うち起訴猶予 10万1437人 69.19%
嫌疑不十分 3万0383人 20.72%
嫌疑なし 1634人 1.11%
心神喪失 370人 0.25%
そのうち殺人に限ってのデータを抜き出そう。
起訴 258人
うち公判請求 258人 100.00%
略式命令請求 0人
不起訴 598人
うち起訴猶予 27人 4.51%
嫌疑不十分 252人 42.14%
嫌疑なし 168人 28.09%
心神喪失 59人 9.87%
殺人の法定刑は「死刑又は無期若しくは五年以上の懲役」。罰金の選択肢がない。よって殺人の略式処理はないのだ。
それほど重大犯罪なのに、犯罪全体に比べて不起訴の割合が高い。
特に、不起訴の理由が、犯罪全体と比べて異様である。
起訴猶予に比べて、嫌疑不十分、嫌疑なしがどっかん多い。どうなってんの?
そこんとこ、だいぶ前、私はたまらず尋ねたことがある。警視庁か警察庁に対してだったか、東京地検か法務省か、もう定かじゃない。どこかで最初に聞き、べつのところでまた尋ねたような気もする。
要するにこんな答えを得た。
統計の殺人には、殺人未遂も含まれる。妄想や嫌がらせなどで「殺されそうになった!」と告訴する者がよくいる。告訴があれば(全件かどうか今ちょっと記憶にないが)いちおう受理する、それがこういうデータになるのです…。
妄想や嫌がらせの陰に隠れて、死人に口なし、一般犯罪者が、あるいは警察官や刑務官が本当に殺した、または殺そうとしたが、起訴には至らなかった、そんなケースが埋もれているのだろうと推察される。
んなことも踏まえて、裁判傍聴マニアは裁判を傍聴するのである。なかなか大変だ。
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