最終弁論に「初耳です」と検察官
「被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため弁護人を附しなければならない。但し、被告人以外の者が選任した弁護人がある場合は、この限りでない。」(刑事訴訟法第63条)
国選弁護人、昔はお年寄りと新人の弁護士が多かった。
耳がほぼ聞こえないお年寄りの弁護人がいて、なんちうか圧巻だった。
ほぼ聞こえないけれども、シンプルな自白事件は、言ってみればテンプレートの儀式消化。特に支障はないんである。お見事!
ただ、判決の期日、何月何日何時から、そこだけ何度も聞き返し、ああ、この人、じつはほぼ聞こえないんだと気づく、圧巻である。
いちおう言っとこう。
弁護人と弁護士、誤記じゃない。刑事裁判の、弁護人を弁護士が、検察官を検事、副検事が務めるのだ。
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裁判員制度を目玉とする司法改革で、国は法曹人口を、特に弁護士をどっかん増やした。
それから間もなく、お年寄りと新人以外の国選がどっと増えた。
その前後のどの時期だったか、私は調べた。1回で結審のシンプルな自白事件、その国選の報酬は、地裁で8~9万円、簡裁で7~8万円だっけ。
私選で受任するのに比べればバカ安だけど、事務所費の足しにはなる、自宅を事務所とする人は生活費の足しになる。
国選を受けまくり、たぶんシンプルな民事も受けまくり、裁判所へ来る日は、それらの期日をぎっしり詰めるのだろう、法廷へは開廷時刻ぴたりか1分遅れで来る、そんな弁護士がいた。
たまに2~3分前に来て、どうしたのかと思ったら、被告人との打ち合わせを法廷でちゃちゃっとやる、ときに判決の予想も告げる、あれにはびっくりしたよ。
刑事裁判はテンプレートの儀式消化なので、十分(じゅうぶん)間に合うのだ。
あの弁護士さん、もう1年以上かお見かけしない。どうしたんだろう。
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新人だけじゃなく、ベテラン風でも、「この弁護人、刑事裁判をほぼやったことがないんだな」と思えることがある。
検察官からの書証の取調べ請求に対し、「同意」(刑訴法第316条の16)以外の言葉で同意の趣旨を述べたり、人証請求に対し「同意」と述べたり。
そのたびに裁判官が、「同意とうかがってよろしいですか」などと確認する、ときどきある。
証拠に基づかない弁論も、たまに見かける。
民事と違って刑事は、採用され取調べが行われた証拠、に基づいてしか、検察官も弁護人も意見を述べられない。
ところが、弁護人が不同意として証拠採用されなかった書証、にあったことをもとに、とか、弁護人は被告人や家族から聞いてたんだろうけど証拠になってない具体的な情状を、最終弁論で述べる…。
検察官 「(立ち上がり)今の〇〇〇の部分、初耳です」
などと言い、裁判官も「証拠に基づかない弁論は…」と言い、弁護人が戸惑う、そんなシーンを私は何度も見てきた。
刑事と民事と、圧倒的に民事の事件が多い。刑事を1回もやったことがない弁護士もいるという。
一方、検察官は、当たり前だが、刑事が専門だ。
弁護人と検察官、力(ちから)の差は歴然、と傍聴席で思う、私はそういうタイプの傍聴マニアだ。メジャーにはなれない。なりたいと、ちっとも思わないけど、ま、しみじみ、裏街道だなあと。
裏街道は、道端の野花がきれいだったり、けっこう素敵だよ、あなたもこっちへおいでよ。やだーっ(笑)。
一方、民事もやるんだろうけど、刑事に注力する、刑事が専門という弁護士もいる。
外国人女性を被告人とする、そりゃ普通に冤罪だろと見えるひどい事件があり、被告人の母国へ調査に行った弁護士もいた。私は驚き、感動しました。
かつてのメルマガ第2269号「無理ムリな控訴棄却、裁判員制度のメンツを護ったのか!」などでレポートした。
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