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2024年9月の14件の記事

2024年9月30日 (月)

レイシストの信仰はびくともしない

 人間は2種類ある。通勤の電車内で、スマホに熱中する者と、本を読む者、である。

 電子書籍を読んでるんだ、本といっても巨乳少女のエロ漫画だろ、とかいろいろご意見はあろうが、大きくは、人生が、出会いが、明らかにちがってくるんじゃないですかね。

 

 裁判所へ最近あんまり行かなくて、『レイシズム』(ルース・ベネディクト著、阿部大樹訳、講談社学術文庫)、面白いんだけども、まだ読み終わってない。 ※裁判所への往復の電車内が私の主な読書タイム。


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 「第1部 人種とは何か」の先、「第2部 レイシズムとは何か」へようやく入った。
 以下、その一部を引用する。

 

 もちろん、レイシストが一つひとつのファクトをどのように扱っているかと検証することはできるし、それが正しいとか間違っていると判定していくことも難しくない。けれどもレイシズムがファクトを扱うやり方は非常に杜撰である。そして科学者が個々のファクトについて指摘をしても、レイシストの信仰はびくともしない。

 

 本質においてレイシズムとは、「ぼく」が最優秀民族(ベスト・ピープル)の一員であると主張する大言壮語である。

 

 自分にそれほどの価値がないとか、あるいは他人から批判されているとか、そういうものすべてを無視することができる。自分がそれまでにやってきた恥ずかしいこと、思い出したくないことをすべて消し去ることができる。自分の至らないところを指摘されたとしても、相手を「劣等な人種」と言ってしまうことで痛みを無化できる。母親の子宮の中にいるような究極のポジションが手に入るのだ。
 難しいことを考えなくて済む、というアドバンテージもある。人間の生死、過去や未来についての現実の困難から身をかわすことができる。どれほど学問から縁遠いひとであっても暗記できるような、たった一文を盾にする――「ぼくは選ばれし人間」。だからレイシストの言葉は政治を動かす最高の武器となる。

 

 この本の出版は1940年、第二次大戦の最中だという。
 現代も変わらない、というかSNSの発達により、もっと悪くなっているようにも思える。
 本は面白いよねえ。

2024年9月27日 (金)

連中が他にも冤罪をつくっていないはずがない

 袴田事件、再審無罪である。

 ただ、検察は控訴できる。
 控訴するだろうと私は思う。もしも控訴しないなら、いったい何を企んでいるのか、恐ろしい。

 とにかく、不撓不屈(ふとうふくつ)、この言葉は袴田巌さんの姉のひで子さんのために今まであった、と私は思う。

 

 虚偽の自白を無理やりもぎ取って起訴し、形勢不利と見るや、証拠(5点の衣類と共布)をあろうことか捏造し、死刑判決を勝ち取った。
 その後、捏造の死刑判決を否定されまいと七転八倒、徹底抵抗を重ねた。

 

 これだけのことを堂々やってのけた連中が、他にも少なからず冤罪をつくっている、裁判所が易々と見逃しているとの推認は、論理則、経験則等に照らして合理的と言わなければならない。 ←高裁刑事判決に頻出する表現

 

 たとえば北陵クリニック事件。
 そんなの聞いたことない? 「北陵クリニック事件Q&A: 病気が真犯人だった」というwebページから、一部引用する。


Q そもそもなぜ「筋弛緩剤点滴事件」と呼ばないのですか?

A それは、筋弛緩剤はこの「事件」とは何の関係ないからです。ですから、「事件」が起こった場所にちなんで、北陵クリニック事件と呼んでいます。実は「事件」でさえもなく、被害者も存在しないのです 

 

 「筋弛緩剤点滴事件」「仙台筋弛緩剤点滴殺人事件」という架空の殺傷事件の犯人、殺人犯とされた守大助さんは、今も無期懲役の牢獄にいる。再審請求を棄却されて。

 守大助さんだけでなく、ほかに少なからずいるだろう冤罪被害者の、雪冤、救出、何よりもそこへ向かわねば! 


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2024年9月25日 (水)

婚活の女性諸氏に告ぐ!

 「脅迫」の判決を東京地裁で傍聴した。
 被告人は非身柄、まあ格好いい系の、30代か40歳前後の男性だ。

裁判官 「主文。被告人を懲役1年に処する。この裁判が確定した日から5年間、その刑の執行を猶予する」

 執行猶予は1~5年。3年がいちばん多い。5年は重い。何をやったのか。聴き取れたところによれば…。

 

 被告人は数年前から本件被害女性(以下女性)と交際関係に。
 自殺をほのめかしては度々女性から借金。女性は消費者金融から借りるなどして総額2千万円を貸した。
 被告人は女性の父親からも200万円を借りた。

 女性の父親へは126万円を返済したが、被害女性へは返済しないまま、こんなことを…。

被告人 「一生分の誕生日プレゼントと、クリスマスプレゼントとして、30万円分をお願いします」

 女性は交際関係の解消を決意し、せめて父親への借金は完済した形を取りたいと考えた。
 そこで翌日、被告人に会い、女性自身の金を被告人名義のキャッシュカードで父親に振り込み、立て替え払いをした。

裁判官 「この状況下においても被告人は30万円を無心し…断られ、交際関係の解消を告げられるや、裏切られたと思い込み…」

 自宅から携帯電話で、メールでか通話でか、こう告げたんだという。

被告人 「このまま自殺するのもしゃくだから、ハメ撮りを公開して自殺しようと思う。とりあえず、ハメ撮り、いくらで買ってくれるかな」

 ネットで拡散する、自宅へ押しかける、などとも告げたそうだ。

 

 なんと、この被告人、2014年と2021年に、どんな文言でか「当時の交際相手」を脅迫し、それぞれ罰金刑に処されているという。
 以下は刑法。

(脅迫)
第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

 

 女を食って生きる男は確かにいる、マッチングアプリなんかによくいる、女を殴る男は自分が正義だと威張っている、といったことが、刑事裁判の傍聴席からはしみじみ見えてくる。

 そんな男たちの姿勢、仕草、目つき、話し方、話す内容等々を、婚活の女性諸氏よ、傍聴席から観察してみるのは有益に違いない、私はそう思うのです。

2024年9月23日 (月)

性犯罪の傍聴席が、傍聴マニアの男たちで埋まる!

 性犯罪の刑事裁判の、傍聴席が、傍聴マニアの男たちで埋まる!

 そんな刺激的なネタが、まあまあ盛り上がっているようだ。
 傍聴マニアを自称できる立場になって20余年の私、のほうから少し述べたい。

 

 「埋まる」といえるほどの状況が、しばしば見られるのは、やっぱり何といっても東京地裁だろう。

 東京地裁の刑事部が現在使用する法廷の数は、いま記憶に基づいて指折り数えると40ほどかな。

 うち3つほどは通称「警備法廷」。被告人や傍聴人が暴れる可能性がちらっとでもある、YouTuberが盗撮しそう、なんであれ傍聴人を近寄らせたくない、などと担当裁判官が考えた場合に使う。まったく使われない日も多い。
 警備法廷の傍聴席数は、20席か38席だ。 

 残る37法廷(定かじゃないよ)のうち傍聴席が、

   52席は13法廷
   42席は 2法廷
   20席は22法廷

 かな。20席が断然多い。
 52席の法廷が空いているのに、隣の20席の法廷で、傍聴人がどっと集まりそうな事件をやる、それは普通にある。

 

 次に、「傍聴マニア」、これをどう定義するか。

 私の定義では、傍聴マニアとは、毎日乃至(ないし)月に数回とか、それなりに裁判所へ通い、他人が当事者の裁判を次々傍聴する人だ。
 もう、いろんな人がいる。
 たとえば、仕事はリタイア、年金暮らしの人、失業中の人、夜勤の人、平日に休みがある人、休みをとった人、生活保護等を受けている人等々。中にはとんでもない人もいるが、ここでは伏せとこう。
 因みに私は、えっと、なんだろ、まいいや(笑)。

 

 東京地裁へは、中学高校、大学、大学院、弁護士会、勤務先、所属団体等々に引率され数人乃至2百数十人(私が知る限りそれが最大規模)のグループ、団体もよく来る。
 引率者などなく、10代から年配女性まで、お友達同士で来ることもある。親子連れも、カップルもいる。
 それらの方々を、私は傍聴マニアとは呼ばない。呼ぶ人もいるだろうけど。

 ということで、傍聴マニアと、見学傍聴人とに、とりあえず便宜的に分けて話を進める。

 

 「夏休みに行きたい人気スポット!? 東京地裁の傍聴席争奪戦に勝つための「10の極意」」というweb記事の、「その5■人気の裁判は?」から、一部拾う。

裁判員裁判を除けば、

1位 「不同意性交等」「性的姿態等撮影」「ストーカー行為等の規制等に関する法律違反」など、いかにも色情系な事件
2位 なんであれ、開廷表の被告人氏名が女性名、それも若そうな女性名の事件
3位 とにかく地裁の刑事の新件

そんな順位になるかな。1位と3位が合体ならもう大人気。傍聴席は20席なのに40人、50人が行列をつくることも珍しくない。

 

 その「40人、50人」が、あるいは20席を埋める傍聴人が、全員傍聴マニアってことは、私が知る限り、ないね。

 上記1位の裁判に、開廷30分~60分前から見学傍聴人が張り付くことは、まずない。
 張り付くのは、傍聴マニアの一部と、ほかに事件の関係者や、追跡取材のジャーナリストなんかが張り付くこともある。

 まったくケースバイケースだが、大ざっぱに、だいたい20分ほど前から傍聴人(傍聴マニアと見学傍聴人)が集まり始める。
 だいたい10分ほど前に傍聴席のドアの施錠が解かれる。たちまち満席に。
 開廷数分前、続々と傍聴人がやってきて、満席なのを見て去る。たんびにドアがバッタンガッタンと鳴る。
 あの巨大庁舎の傍聴席のドアは、わざとなのかどうか、バッタン音、ガッタン音が法廷内に響き渡るようにできている。

 

 傍聴マニアがその日その時刻、庁舎内に40人いるとして、40人全員が1位の裁判に集合する、と思ったら大間違いだ。
 他人が傍聴したがらない、地味な事件を、ひっそり傍聴するマニア氏は少なくない。

 あそうそう、性犯罪の裁判を敬遠する女性傍聴人もいるようだが、ぜんぜん敬遠しない女性は普通にいる。 

 

 なわけで、「性犯罪の刑事裁判の、傍聴席が、傍聴マニアの男たちで埋まる!」は、「傍聴マニアの男たちで」の部分が、私が主に東京地裁で20年間見てきた事実と違う。
 ご参考になれば。

2024年9月20日 (金)

五輪談合事件、没収と追徴は?

 「法人税法違反」とか経済事件ばっかり傍聴する女性マニア氏がいて、なんで? と私は尋ねたことがある。
 経理で働いていたことがあり、経済事件が好き、とのことだった。おお、頼もしいっ。

 

 私は、経済事件は苦手だ。
 ホダツリツ(逋脱率?)とか聞き慣れない専門用語だらけで、わかんなーい。
 なので、東京オリンピックがらみの「的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反」も、一度も傍聴してない。ただ、ちょっと思うことがある。

 たとえば「五輪談合事件 「電通」に罰金3億円、元幹部に懲役2年求刑 東京地検」と9月18日付けTBS NEWS DIG。
 3億円、3億円と言われてるけど、罰金だけなの?

 

 薬物の密売関係の事件では「追徴」がときどき登場する。
 たとえば、ミュージシャンのASKA氏に覚醒罪を売った被告人の、その判決は、懲役3年、未決40日算入、罰金30万円、預金没収、152万8082円追徴だった。
 「コーヒー浣腸」の「薬事法違反」は、被告人に対する求刑が、懲役2年6月、罰金300万円、2720万余円没収、4363万余円追徴だった。
 どの裁判でだったか忘れたが、没収の事件で裁判官がこんな趣旨を言った。

裁判官 「犯罪で得た金は吐き出してもらうんです

 

 今回の電通の事件、300億円の不正なのに罰金3億円はバカ安だ、軽すぎると言われている。
 私は思う。経済事件好きのあの女性(もう長くお会いしてない)も思っているだろう、没収や追徴はどうなるんだろ、と。
 以下は刑法だ。

 

(没収)
第十九条 次に掲げる物は、没収することができる。
 一 犯罪行為を組成した物
 二 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
 三 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
 四 前号に掲げる物の対価として得た物
2 没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。

(追徴)
第十九条の二 前条第一項第三号又は第四号に掲げる物の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。

 

 メディア報道にはタブーがある。未決勾留日数の算入換刑処分はタブーだ。
 没収や追徴はカネのことだから、さすがにタブーってことはなかろうと思うが、、、

 

 

2024年9月18日 (水)

交通事故じゃなく「交通殺人」「交通傷害」

 「遺族「到底納得できない」 過失致死傷罪で起訴 群馬3人死亡事故」と9月16日付け毎日新聞。
 「伊勢崎「家族3人死亡事故」、なぜ地検は酔って分離帯乗り越えたトラック運転手を危険運転致死傷罪に問わないのか」と9月18日付けでJBpressに柳原三佳さんが。

 

 飲酒による危険運転は2種類に分かれる。
 「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」第2条、

(危険運転致死傷)
第二条
 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。

 この第1項第1号が1つめだ。

 一  アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為

 2つめはこれ、第3条第1項。

第三条  アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。

 

 有期懲役の上限は20年(刑法第12条)。だから、2条危険より3条危険のほうが少し軽いんだね。
 そして、普通の交通事故には第5条が適用される。

(過失運転致死傷)
第五条
 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

 

 伊勢崎での「家族3人死亡事故」は、この第5条で起訴された。罪名的には、飲酒運転も加わって「道路交通法違反、過失運転致死」かと思われる。

 つまり、運転開始前に焼酎440㎖(たぶんペットカップ2本)を飲み、制限60キロの道路で、90キロまで急加速し、ハンドル操作をどう誤ったか中央分離帯を乗り越え、対向車線に突っ込んだのだけれど、

・アルコールの影響により正常な運転が困難な状態での走行とはいえない。
・アルコールの影響により走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で運転したとはいえないか、または、よってアルコールの影響により正常な運転が困難な状態に陥ったとはいえないか、あるいは両方ともいえない。
・運転上必要な注意を怠ったにすぎない。

 と、前橋地検は判断したわけだ。

 

 私はねえ、「交通殺人」「交通傷害」というカテゴリーを夢想する。

「事故なんて起こしたくない。普段は気をつけている。ところが、ついうっかり、注意を怠り…」

 それが「交通事故」だ。

 だいぶ飲酒して、高速度を出し、しかも前をよく見ていない、となれば事故を起こす可能性が高い、当たり前である。
 なのに、あえてそれをやった、事故を起こす可能性を未必的には認識していたということができ、故意に欠けるところはない。

 過失じゃない、故意による殺人、傷害、、、あくまで夢想だ。

2024年9月16日 (月)

政官財の不正を暴きまくる国会の狂犬集団!

 2004年、つまり20年前、『ドライバー』(八重洲出版)の連載コラムに、突拍子もないことを書かせてもらった。
 今回、ちょっと手を入れてここに。断っとくけど20年前の話だからね。

  🚗  🚙  🚌

「あんたも議員になったらどうだ」

 何度かそう言われたことがある。仕事柄というか、議員さんたちと接することも多く、そういう話も出てきたりするわけね。
 でも、自分が実際に議員になるってのは、あまりに遠い。というか、どうも想像できなかった。ところが…。

 

 きっかけは昨年9月。都庁へ情報公開の用事で行ったときのことだ。
 ちょっと時間に余裕があった。私は議会棟へ寄り、後藤雄一さんにお会いした。

 後藤さんは小さなパン店のご主人で、「行革110番」として“カラ宴会”や“カラ弁当”など税金の不正支出をこつこつ暴いてきた人だ。
 その後、都議会議員に立候補し、2回目で当選したんである。
 議会棟内の狭い事務所で、後藤さんは言うのだった。

「いやあ、議員になると(行政の不正を)10倍突っ込めますよ。そのぶん風当たりも強いですが、楽しいですよォ(笑)」

 

 同年11月、衆院選があった。
 社民党の東京比例区の候補者に保坂展人さんがいた。保坂さんとはNシステムのことで何度もお会いしている。
 なので、雨の街頭での演説や、どこか公的施設の和室での小規模な集会などへ私は応援に行った。
 見ていて、選挙ってのはたいへんだなあ、私にはとてもできんなあと思った。

 結局、“2大政党”フィーバーの波に呑まれてか、保坂さんは落選。警察の広報や情報公開ではどうしても得られなかった資料を「質問趣意書」という議員の特権により簡単にゲットしてくれた北川れん子さん(兵庫県。同じく社民党)も落選した。うむむう…。

 

 それから間もなく、唐突に思いついたのである、政官財の腐敗を鋭く突っ込んでるジャーナリストたちが政党をつくり、国会議員の立場を手に入れたらおもしろいんじゃないか。

 なぜ政党か。
 選挙は選挙区と比例とに分かれる。選挙区選挙では自民や民主に勝てっこない。
 それなりの知名度を利用して比例(参院選の場合は全国区)で出るのがよかろう。
 衆院選はよくわかんないけど、現職の議員を抱えてないと出られないとか、ややこしい規則になってるらしい。

 しかし参院選(今年夏に選挙がある)のほうは公職選挙法第86条の3第1項第3号により、立候補者を10人そろえれば出られるという。だから政党なのである。

 

 あちこち電話し、聞いてみた。

 議員の歳費は月額123万7500円。税金や年金がかなり引かれるらしいが、貧乏ジャーナリストには十分に魅力的な額だ。
 そのほか文書通信費などが月額100万円に、立法事務費が月額65万円。でかい! それだけの取材費を出す雑誌は滅多にないぞ。
 さらにJR各社の無料パスが支給される。交通費タダで全国を取材にまわれるわけだ。
 議事堂裏手の議員会館に、なんと家賃タダで事務所を持てる。
 得票数によっては「政党交付金」てのももらえるらしい。ひ~!

 素敵なのは、公設秘書を3人持てることだ。
 政策秘書には約44万円、第一秘書には月額約41万円、第二秘書には約31万円の給料が税金から支給される。
 この秘書を有能な新人ジャーナリストにすれば威力倍増だ。

 しかも参議院事務局には調査室というのがあり、議員の手足となってくれるらしい。

 

 政局がどうこうでうろうろせず、外交だの経済だのには目もくれず、ひたすら議員の特権を利用して政官財の不正を暴きまくる。暴いて雑誌にスクープを打ちまくる!
 ダメ議員は辞職に、ダメ官僚は懲戒免職に、ダメ企業や天下り法人は廃業に、どんどん追い込まれる。ストップされる税金無駄遣いは数百兆円にのぼりますぞ。

 党名は、可愛く駄洒落で「ジャーナリス党」。略して「ジャ党」「蛇党」。1文字なら「蛇」。
 仲間のジャーナリストが不正をやれば、当然それにも食いつく。国会の狂犬集団と怖れられ、蛇なのに犬かよと笑われ…。

 

 このアイデア、「おもしろそうじゃん。もし出るなら投票するよ」とのお声をいただいてる。

 ただ、重大な問題がある。
 立候補するには「供託金」が必要なんだね。参院選の比例の供託金は1人600万円。10人で6000万円、がーん!

 ジャーナリストの小林道雄さん(講談社『日本警察崩壊』など)はこう笑っていた。

「ジャーナリストに必要な能力は、霞を食って生きられることだよ」

 6000万円、「ジャ党」は非現実の夢物語か。

 

※追記: そういえば1992年に、私は参院選挙の説明会へ行った、というか紛れ込んだことがある(笑)。そのレポートはこちら

2024年9月14日 (土)

非社会性人格障害は元来のものであり改善しない

 マニア氏から情報をいただき(ありがとうございます!)、東京地裁で「特別公務員暴行陵虐」の新件を傍聴した。
 地域課の警部補が交番で女性に暴行(※)したと報道された事件だ。 ※性的な暴行ではない。

 なんと、そういう事件だったんだ! でもなぜそこまでやったの? 次回、明らかになるかどうか。

 

 それ1件を傍聴するためだけに行った、のだけれど、それ1件で帰れるはずもなく…。

 

 地裁で長く争われていた「窃盗」の、控訴審(東京高裁)の審理の期日を傍聴した。
 被告人は身柄(拘置所)。窪んだ目にちからのある、意思が固そうな中年男性だ。

 精神鑑定書が証拠採用され、その主文を裁判長が述べた。私のメモをつなぐと、こんな感じか。

裁判長 「被告人は非社会性パーソナリティ障害である。それは元来のものであり、改善しない。大変重篤であるが、精神障害は認められない。虚言は、詐病を演じているのではなく、自分に罪がないとし、犯行をもっともらしく合理化する姿勢の顕れである。精神障害はないが、非社会性パーソナリティ障害を有している。社会規範に従う能力が元来的に欠けている。改善しない」

 精神の障害ではなく、人格の障害、そういう人が1万人に何人か、確実に紛れているのだ。「改善しない」というところが恐ろしい。

・どう見つけるか、気づくか
・どう対処するのが最善または次善か
・隣人等がその被害を受けているときどうすべきか

 基本知識を載せた「大人の副読本」、あったらいいのにと思う。私も一部執筆させてもらいたい。

 

 それが終わって近くの法廷(東京地裁)の開廷表に「道路交通法違反」の新件を見つけた。
  なんだろ。34分ほど過ぎていたが、ちらっと入ってみた。

 ぎょ仰天、オービスによる54キロ超過(首都高なら相場は罰金7万円)の事件だった!
 弁護人が、うわあ、まさかのあの人で、検察官の求刑は罰金9万円、それに対し裁判官が!

 

 東京高裁、「暴行、強制わいせつ」の控訴審判決をちらっと除いてみた。
 被告人は非身柄。異様に太ってて、尋常じゃない感じ。
 「脳血管性認知症」なのだという。路上で通りすがりの女性を触る等したらしい。

 

 途中で出て、地裁の「過失運転致死」の判決へ。
 泥酔男性を仲間2人が無理やりタクシーに乗せ、走行中…。
 信号待ちで、「お客さん、外で吐きます?」「外で」という会話の後、後部ドアを開けたところ、お客は外へ倒れ出て、左側車線を走ってきた車両にひかれた、という事件だった。

 やたら声の小さい女性検察官が、懲役3年を求刑。
 えっ、有罪だとしても、禁錮刑では? 裁判官がそこを問い質した。検察官は譲らなかった。
 次回判決、こういうのを私は見逃せない!

 

 忙しいのに、どうしてもこれは傍聴せざるを得ない、というのを傍聴に出かけ、大変なのを傍聴することがある。

 

 電動キックボードと自転車の交通トラブル、という珍しい事件があって裁判所へ行ったら、アイドルを被害者とする事件を立て続けに傍聴、最後に傍聴した「道路交通法違反」は前代未聞、びっくり訴因変更、ということもあった。

 そっちのレポートは、あと数日で発売の『ドライバー』(八重洲出版)に書いた。
 全国の検察官、刑事裁判官の方々、どんな訴因変更か、驚くと思いますよ。

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2024年9月12日 (木)

維新の元議員の不同意性交は冤罪かもな理由

 「不同意性交」との報道が多いようだ。たとえば以下は9月9日付け日経新聞。太字は私。

 

椎木保元衆院議員、女子中学生に不同意性交疑いで逮捕
東京都新宿区内のカラオケ店で女子中学生に性的暴行を加えたとして、警視庁新宿署は9日、元衆院議員の椎木保容疑者(58)=千葉県浦安市=を不同意性交容疑で逮捕したと発表した。
逮捕容疑は8月20日夕、新宿区にあるカラオケ店の店内で中学1年の女子生徒に性的暴行を加えた疑い。同署によると、椎木容疑者は「カラオケボックスに2人で入ったが性交はしていない」と容疑を否認している。
同容疑者は2012年の衆院選で日本維新の会から出馬し初当選するなどして、2期務めた。その後落選し、21年まで同党に所属していた。

 

 じつは「性交」はしておらず、「不同意性交」での逮捕は冤罪かも、その可能性は大いにある。
 だが、真実は「不同意性交等」であり、多くの報道は誤報じゃないか。
 なに言ってっか分かんない? 刑法第177条を見てください。 

 

(不同意性交等)
第百七十七条 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしている
 十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

 

 第177条が処罰の対象としてるのは、不同意による「性交」だけじゃない。
 「口腔性交」「肛門性交」「膣若しくは肛門」に指やいわゆる大人のオモチャなどを「挿入する行為」をも処罰の対象としている。

 視聴者、読者がそこまで知る必要はないし、「等」の1文字を省くほうが落ち着きが良い、てな感じなのか。
 刑事裁判の被告人を必ず「被告」と報じるのと同様、結局は基本的に、視聴者、読者を「無知蒙昧なる大衆」程度に見ているのか。
 バカにしている! と私は怒ったりしない。テレビ、新聞の方々はプロだ、プロの見方としてそれはアリ、なのかもしれない。

 

   💨  💨  💨


 ちなみに、以下は9月11日付け読売新聞、の一部。 

裁判員候補38人が呼び出し日に集合したが、無駄足に…大阪地裁が選任手続きせずそのまま帰す
 女児が被害者の強制性交致傷事件の裁判員裁判で、大阪地裁が、裁判員候補者を呼び出したのに選任手続きを行わずそのまま帰していたことがわかった。争点の絞り込みが間に合わなかったとみられる。

 

 こっちは「強制性交」致傷となっている。これも「強制性交等」致傷の誤りだろうと思う。

 「不同意性交等」と「強制性交等」と、何が違うのか。
 犯行日が、2023年7月13日以降か、その前か、で違う。
 以下は、2023年7月13日より前の第177条だ。

 

(強制性交等)
第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

 

 裁判員裁判は司法改革の目玉であり、最高裁にとって国民との重要な接点だ。
 大阪地裁のその裁判長、大阪で部総括を張るとはそれなりにエリートだったろうに、可哀想に、と私は思う。

 昔は、何をどう立証するか、検察官と弁護人の丁々発止の攻防は、公開の法廷で行われた。
 傍聴マニアからすれば、そこが傍聴の醍醐味でもあった。

 ところが、素人裁判員の負担を軽くするためにと、丁々発止の攻防を密室へ潜らせた。
 国民(特に熟練の傍聴マニア)による厳しい監視の目がないもんだから、検察官も弁護人もわがままを押し通し、今回のようなことになったのかどうか、報道されることはないだろう。

2024年9月10日 (火)

もしも裁判所内へTVカメラが入ったら

 裁判所内では、少なくとも東京高地簡裁合同庁舎では、記者クラブの代表社のTVカメラ1台による2分間の法廷内撮影、あれを除いて撮影は原則許されない。 ※法廷内や廊下で盗撮して匿名掲示板にアップする者は野放しのようだが。

 もしも、もしもですよ、TVの庁舎内撮影がかなり自由になったら…。



女子アナ
 「ご覧ください! あちらの法廷の前に大行列ができています。いったい何があるのでしょう!」
最後尾の傍聴人 「ここですか? 不同意性交等の新件ですよ。窃盗詐欺より、やっぱ見たいじゃないですか、ねぇ(笑)」

女子アナ 「続々と傍聴人が集まってきます。先頭の方にうかがってみましょう」
先頭の傍聴人 「俺は1時間前から来てるよ。次は×号法廷で不同意わいせつ、その次は×号法廷で監護者性交等、今日は当たりだよ(笑)」

女子アナ 「裁判傍聴の魅力って何ですか」
先頭の傍聴人 「何ですかって、そりゃあ、しし、司法、かか、監督か? ひ、ひひ」


ナレーション 「この法廷の傍聴席は42席です。ところが行列は、この時点で50人を超え、さらにどんどん集まってきます。わいせつ裁判は大人気のようです」



 なーんて、ラーメン店を紹介する100分の1ほどでも裁判所をTVが扱えば、大変なことに。
 でも大丈夫。裁判所が絶対許さないだろう。理由は…。

・裁判所にいるのは傍聴人だけじゃない。民事、刑事の当事者、その家族等が来ている。
・わいせつ事件の被害者は、裁判が多くの目(特に興味本位の目)に晒されるのを好まない場合がある。
・撮影した映像、画像をネタに中傷や恐喝がどっと起こることが予想される。
・しらしむべからず、よらしむべし。

 

 嗚呼、暑い!

2024年9月 7日 (土)

『特殊詐欺と連続強盗 変異する組織と手口』から『レイシズム』へ

 主に裁判所への往復の電車内で『特殊詐欺と連続強盗 変異する組織と手口』(久田将義著、文春新書)を読み終えた。面白くて分かりやすくてぐいぐい読めた。 

 カバーの折り返し部分にこうある。

ネット上で実行部隊を集め、海外の拠点からITを束って詐欺や強盗を行わせる……こうした犯罪グループは、突然、出現したのではない。地上げ、アウトローと経済事件の取材を重ねてきた著者が、変異し続けるワルとカネの実態を暴く!

 特殊詐欺がどこでどう生まれたか、へえー!である。
 ネットやニュース(=警察発表)で、あるいは裁判傍聴で見聞きしていた断片が、ぜんぶつながる。本の良さ、である。

 

 さあ、裁判所へのお出かけの皮革製鞄に、次は何を入れよう。
 候補がいっぱいある中、私は『レイシズム』(ルース・ベネディクト著、阿部大樹訳、講談社学術文庫)を手にした。


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 ご存知『菊と刀』のルース・ベネディクト氏である。

 読み始めてすぐ、声を上げそうになった。うっわ、おっもしろい!
 阿部大樹氏の訳が良いのか、分かりやすくてストレートで、これも、なるほど、へえー!の連続なのである。

 

 奥付を見た。ルース・ベネディクト氏はアメリカの文化人類学者で「1887-1948」。私が生まれる前に亡くなっているのだ。
 なのに、現代をいっしょに体験しているかに感じられ、ちょっと驚いた。レイシズムは不変、普遍ってことか。

 

2024年9月 5日 (木)

靴修理店、職人から商人へ?

 2018年1月12日付けのメルマガ第2041号「韓国からの逃亡犯罪人、日本で夢みた5年間」、その編集後記からちらっと、若干の加除訂正をして。

 

 私の茶色の革靴は、イギリスかイタリア製の高級革靴だ。確か20年ぐらい前、デパートの閉店セールで半額だった。

 かかとに半月型の鉄の板(以下補強金属)を釘3本で固定する、すり減ったら外して新しいのを、ということを、スペアキーの作成も行う靴修理店でやってもらい、長持ちさせてきた。
 ここ数年は1足500円だった。その前は400円、40年ほど前、お年寄りが営む小さな靴店では300円か250円だっけ。

 

 昨年暮れ、補強金属がだいぶすり減り、新しいのを打ってもらう必要が生じた。
 忙しくて動けず、かつ忘れ、今年の初傍聴の日(9日)、いつもの店へ行った。

 ところがっ、閉店していた!
 近頃なんかあちこちにやたら同種の靴修理店(以下同業店)が増えた。しかもお洒落な店構えで。
 そのあおりで閉店を余儀なくされたのか。可愛そうに。

 

 なんにしても早く新しい補強金属を打ってもらわねば。
 ところがっ! やたら増えた同業店はどこも、「金属も樹脂製も、かかとの補強はしてません」なのである。
 樹脂製ならできるという同業店があったが、1足千円だという。高っ!

 それくらいで驚いちゃいけない。某駅ビル内の同業店は、もちろん金属のはなく、樹脂製が1足3千円だという。
 さ、3千円? この靴のここに打つやつですよ、3千円? 3千円?
 何度確認しても店員はニコニコ「3千円です」とくり返すばかり。

 

 困り果て、靴の量販店を思い出した。
 あそこは広い店内の一角に靴修理のスペースがあった。ああいうスタイルでアコギなことはやらないんじゃないか。
 行ってみた。
 金属のはないが、樹脂製は1足500円だという。地獄で仏、の気分だった。

 「3千円の店がありましたよ」と言ったら、年配の職人さんは笑うのだった、「やりたくないんでしょう」。
 なるほど。しかしそれにしても3千円はないだろ。よく分からず3千円でOKする客もいるのかな。

 近頃やたら増えた靴修理店、そこにいるのは職人じゃなく商人、嗚呼、こういう時代なのかと思った次第。

 いわば資本家が次々出店し、職人さんは雇われ人であり自由がきかない、ということかもね。

 ともあれ、その後、家人がMBTのお高いシューズを見つけ、私に買い与えるようになった。

 お高いシューズをなぜ私なんかに? 人間は足が基本、足が弱れば寝たきりに近づく、カネがかかる、足を鍛え、死ぬときはぽっくり死になさい、と。

 靴底が妙な形で、かっちり履けるのだけど不安定。歩き、立つ、それだけで足が鍛えられる。
 履き始めてたちまち、ふくらはぎがカッチカチになったよ。

 

 整形外科で変形性膝関節症と診断された私の膝を、ほぼ完治させてくれたカイロプラクティック医は、人間の体は長く座るのに向かない、適度に揺れる電車内で姿勢良く立てば、下半身が鍛えられるという。

 裁判傍聴は座る時間が長い。上りなら1、2フロア、下りなら4フロア程度、非常階段を私は利用している。

2024年9月 3日 (火)

ヘイトは実際にあると認めたうえでの法律!

 「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」、2016年6月3日施行。

 略称は「ヘイトスピーチ解消法」「ヘイトスピーチ対策法」「差別的言動解消推進法」だという。
 短い法律だ。附則も含め全文を引用しよう。

 この法律、なななんと、「前文」がある。珍しい。こうだ。

 

 我が国においては、近年、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、適法に居住するその出身者又はその子孫を、我が国の地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動が行われ、その出身者又はその子孫が多大な苦痛を強いられるとともに、当該地域社会に深刻な亀裂を生じさせている。

 もとより、このような不当な差別的言動はあってはならず、こうした事態をこのまま看過することは、国際社会において我が国の占める地位に照らしても、ふさわしいものではない。

 ここに、このような不当な差別的言動は許されないことを宣言するとともに、更なる人権教育と人権啓発などを通じて、国民に周知を図り、その理解と協力を得つつ、不当な差別的言動の解消に向けた取組を推進すべく、この法律を制定する。

 

 いわゆるヘイトが日本に実際あると認め、そこから出発している。
 こんな、ヘイターや極右からすれば「自虐」な前文が、どぉーして明記された? びっくりするでしょ、ねえ。

 前文のあと、こう続く。「2」とあるのは第2項の意味だ。附則にある「1」「2」は項なのか私は不知。

 

第一章 総則


(目的)
第一条 この法律は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消が喫緊の課題であることに鑑み、その解消に向けた取組について、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、基本的施策を定め、これを推進することを目的とする。

(定義)
第二条 この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。

(基本理念)
第三条 国民は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性に対する理解を深めるとともに、本邦外出身者に対する不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならない。

(国及び地方公共団体の責務)
第四条 国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策を実施するとともに、地方公共団体が実施する本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策を推進するために必要な助言その他の措置を講ずる責務を有する。
 地方公共団体は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとする。

第二章 基本的施策

(相談体制の整備)
第五条 国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動に関する相談に的確に応ずるとともに、これに関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう、必要な体制を整備するものとする。
2 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動に関する相談に的確に応ずるとともに、これに関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう、必要な体制を整備するよう努めるものとする。

(教育の充実等)
第六条 国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動を解消するための教育活動を実施するとともに、そのために必要な取組を行うものとする。
 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動を解消するための教育活動を実施するとともに、そのために必要な取組を行うよう努めるものとする。

(啓発活動等)
第七条 国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性について、国民に周知し、その理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動を実施するとともに、そのために必要な取組を行うものとする。
 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性について、住民に周知し、その理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動を実施するとともに、そのために必要な取組を行うよう努めるものとする。

附 則

(施行期日)
 この法律は、公布の日から施行する。

不当な差別的言動に係る取組についての検討)
 不当な差別的言動に係る取組については、この法律の施行後における本邦外出身者に対する不当な差別的言動の実態等を勘案し、必要に応じ、検討が加えられるものとする。

 

 なるほど、立派なことを言っている。
 でも、基本理念、基本政策であり、罰則がない。
 本当は罰則を設ける予定だったが、激しく反発する一派があり、罰則を設けない代わり、あの前文を設けた、という深読み、うーん、外れかな(笑)。

 罰則はないけれども、こういう法律がある以上、国も地方も、ヘイト、ヘイターに対し無策でいることはできない。
 罰則はなくても、国の法律にこううたわれている以上、ヘイト、ヘイターは民事で訴えられたら勝ち目がないんじゃないか。

2024年9月 1日 (日)

愛国事務執行機関が敵勢力殲滅事務を完遂した

 百条委員会。地方自治法を見てみた。

 

第百条 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(自治事務にあつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがあることその他の事由により議会の調査の対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。次項において同じ。)に関する調査を行うことができる。この場合において、当該調査を行うため特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる。
② 民事訴訟に関する法令の規定中証人の訊問に関する規定は、この法律に特別の定めがあるものを除くほか、前項後段の規定により議会が当該普通地方公共団体の事務に関する調査のため選挙人その他の関係人の証言を請求する場合に、これを準用する。ただし、過料、罰金、拘留又は勾引に関する規定は、この限りでない。
③ 第一項後段の規定により出頭又は記録の提出の請求を受けた選挙人その他の関係人が、正当の理由がないのに、議会に出頭せず若しくは記録を提出しないとき又は証言を拒んだときは、六箇月以下の禁錮又は十万円以下の罰金に処する。
④ 議会は、選挙人その他の関係人が公務員たる地位において知り得た事実については、その者から職務上の秘密に属するものである旨の申立を受けたときは、当該官公署の承認がなければ、当該事実に関する証言又は記録の提出を請求することができない。この場合において当該官公署が承認を拒むときは、その理由を疏明しなければならない。
⑤ 議会が前項の規定による疏明を理由がないと認めるときは、当該官公署に対し、当該証言又は記録の提出が公の利益を害する旨の声明を要求することができる。
⑥ 当該官公署が前項の規定による要求を受けた日から二十日以内に声明をしないときは、選挙人その他の関係人は、証言又は記録の提出をしなければならない。
⑦ 第二項において準用する民事訴訟に関する法令の規定により宣誓した選挙人その他の関係人が虚偽の陳述をしたときは、これを三箇月以上五年以下の禁錮に処する。
⑧ 前項の罪を犯した者が議会において調査が終了した旨の議決がある前に自白したときは、その刑を減軽し又は免除することができる。
⑨ 議会は、選挙人その他の関係人が、第三項又は第七項の罪を犯したものと認めるときは、告発しなければならない。但し、虚偽の陳述をした選挙人その他の関係人が、議会の調査が終了した旨の議決がある前に自白したときは、告発しないことができる。
⑩ 議会が第一項の規定による調査を行うため当該普通地方公共団体の区域内の団体等に対し照会をし又は記録の送付を求めたときは、当該団体等は、その求めに応じなければならない。
⑪ 議会は、第一項の規定による調査を行う場合においては、予め、予算の定額の範囲内において、当該調査のため要する経費の額を定めて置かなければならない。その額を超えて経費の支出を必要とするときは、更に議決を経なければならない。
⑫ 議会は、会議規則の定めるところにより、議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行うための場を設けることができる。
⑬ 議会は、議案の審査又は当該普通地方公共団体の事務に関する調査のためその他議会において必要があると認めるときは、会議規則の定めるところにより、議員を派遣することができる。
⑭ 普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務活動費を交付することができる。この場合において、当該政務活動費の交付の対象、額及び交付の方法並びに当該政務活動費を充てることができる経費の範囲は、条例で定めなければならない。
⑮ 前項の政務活動費の交付を受けた会派又は議員は、条例の定めるところにより、当該政務活動費に係る収入及び支出の状況を書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)をもつて議長に報告するものとする。
⑯ 議長は、第十四項の政務活動費については、その使途の透明性の確保に努めるものとする。
⑰ 政府は、都道府県の議会に官報及び政府の刊行物を、市町村の議会に官報及び市町村に特に関係があると認める政府の刊行物を送付しなければならない。
⑱ 都道府県は、当該都道府県の区域内の市町村の議会及び他の都道府県の議会に、公報及び適当と認める刊行物を送付しなければならない。
⑲ 議会は、議員の調査研究に資するため、図書室を附置し前二項の規定により送付を受けた官報、公報及び刊行物を保管して置かなければならない。
⑳ 前項の図書室は、一般にこれを利用させることができる。

 

 長っ。ついでに第100条の2も見てみる。「第三者委員会」はこれに基づくのか、分かりませーん。

 

第百条の二 普通地方公共団体の議会は、議案の審査又は当該普通地方公共団体の事務に関する調査のために必要な専門的事項に係る調査を学識経験を有する者等にさせることができる。

 

 第100条にも第100条の2にも「事務」とある。
 これ、事務員さん、事務机、事務用品、などの事務とはちょと違う。行政行為、とでもいうのかな。

 駐車監視員による駐禁取締りは「確認事務」という。
 違法駐車車両が、放置車両(運転者がその場を離れて直ちに運転できない状態の違法駐車車両)であるかを確認する、それが駐車監視員の仕事の中心なので。

 駐車監視員を抱える業者を「放置車両確認機関」という。

 

 いずれ言いだすかもね。「防衛事務を行う」「ミサイル発射事務を執行した」「敵勢力殲滅事務を完遂した」。
 「防衛事務」は「愛国事務」に呼び換えられ、軍隊は「愛国事務執行機関」と…。

 そんな近未来SF漫画、読みたい、って100条委員会の話はどうした!

 百つながりで。

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