山上徹也被告人の裁判が始まらない理由、公判前整理手続きとは
うちにテレビがあった頃、「日本人の9割が知らない××」、みたいなバラエティ番組があった、と記憶する。
このこともまた9割 or more がどうもご存知ないようだ、という話をしよう。
昨年12月11日、当ブログに私は「安倍首相の銃撃殺事件、裁判が始まらない理由」との記事を書いた。
その内容はくり返さず、以下のことを付け加える。
法務省のサイトだろう、冒頭に「第6編 司法制度改革の推進」とあるpdfファイルがネット上で拾える。「1 公判前整理手続」とある。
「平成18年」のデータが載っている。「平成18年」は、手帳の早見表によれば2006年だ。文書の作成は2007年かな。
「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」は2004年5月に国会で可決成立。2009年8月に全国第1号の裁判員裁判が東京地裁であった。
そういう時期の、文書なわけだ。
当ブログは容量オーバーで画像を載せられない。テキスト文書で一部転載しよう。
公判前整理手続は,刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成16年法律第62号。以下「刑訴法等改正法」という。)により創設された手続であり(平成17年11月1日から施行),公判請求後,第一回公判期日前において,明確な審理計画を策定し,迅速な審理を実現するための手続である。
日本語の文章なのに「、」をわざわざ「,」に変換している。みっともないったらありゃしない。なにか心を病むような事情があったんだろう。
それは措き…。
昔は、「殺人」でもなんでも争いのある事件では、検察官による証拠調べ請求に対し、弁護人が不同意の意見を(述べたければ)述べ、じゃあ不同意とされたネタを検察官はどうするか、撤回するのか、証人調べを請求するのか、弁護人による証拠調べ請求に対し、検察官は、、、という丁々発止(ちょうちょうはっし)の攻防があった。
その攻防は、公開の法廷で、傍聴人(本来は司法の監視者)の前でおこなわれた。そこが、裁判傍聴のひとつの醍醐味といえた。
とぉころが! 「殺人」など裁判員裁判対象事件では、必ず公判前整理手続きがおこなわれる。
日程的に、分かりやすさ的に、素人裁判員に負担をかけないよう、丁々発止の攻防を、公判の前に、裁判官と検察官と弁護人とで(場合によっては被告人も参加して)密室でやっちゃうことになったのである。
主張も立証も、公判(公開の法廷での刑事裁判)の前に、削り整えてしまうことになっちゃったのである。
公判へは、削り整えられたものだけが出てくる。
裁判員裁判が始まった当初、スケジュールが分刻みで決まってることもあった。なんだそれ!
山上徹也被告人の事件、どうなっているのか。
昔なら、いま密室で行われていることは――たとえば統一教会がらみの弁護人側の立証計画、に対する検察官の徹底抵抗とか――公開の法廷でおこなわれた。逐一、報道、レポートされたはず。
今は昔と違う。今、公判前整理手続きにより、深く静かに潜行している。
暗い海の中にもぐっていた潜水艦は、いつかぐわっと船体をあらわす。
そして、暗い海中で決めたスケジュールをこなすのである。
あそうそう、公判前整理手続きが終われば、裁判員の選任手続きが始まる。それにもだいぶ月日がかかりそう。
統一教会の信者、またその被害者が裁判員に混じる可能性はないか、一悶着(ひともんちゃく)起こったりして。
とりあえずそんなことを私のほうから、ちらっとね。
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