危険運転と「予備的訴因」
危険きわまる運転で死傷事故を、いや、実質無差別殺傷事件をやらかしたのに、検察は危険運転で起訴しない、単なる過失の事故として起訴した、なぜだ! ひどい! という報道がしばしばある。
たとえば「捜査員が激怒「これが危険運転でなければ、何が危険運転に当たるんだ」 酒を飲み時速140キロ、被害者を60メートルもはね飛ばしたひき逃げ犯は「過失致死」に問われた」と、これは2023年10月10日付け共同通信。
検察官 「頑張って危険運転で起訴して、もし認められなかったら無罪、それだけは絶対に避けたい…」
それはないと思う。裁判傍聴マニアは知っている、「予備的訴因」てえのがあることを。
私が傍聴した中に、こんなのがあった。
「強姦致傷(予備的訴因 強制わいせつ致傷、強姦)」
「傷害(予備的訴因 重過失傷害)」
「建造物侵入(予備的訴因 軽犯罪法違反)」
「窃盗(予備的訴因 器物毀棄)」
「住居侵入、強姦未遂(変更後の予備的訴因(認定罪名)住居侵入、強制わいせつ)」
「業務上横領(予備的訴因 詐欺)(認定罪名 詐欺)」
「詐欺(予備的訴因 窃盗)」
「現住建造物等放火(予備的訴因 建造物等以外放火)」
「過失運転致傷(予備的訴因 業過傷害)」
こんなややこしいのもあった。
「殺人、殺人未遂、道交法違反(第1次予備的訴因 危険運転致死傷、道交法違反 第2次予備的訴因 過失運転致死傷、道交法違反)」
そして、こんなものあった。赤信号殊更(ことさら)無視の事件だった。
「危険運転致死傷(予備的訴因 過失運転致死傷)」
傍聴してないけど、こんなのもあった。
「危険運転致死(予備的訴因 自動車運転過失致死)」
「危険運転致傷(変更後の訴因 危険運転致死、予備的訴因 過失運転致死)」
ならば、なぜ、たとえば冒頭の2023年の報道の事件は「危険運転致死傷(予備的訴因 過失運転致死傷)」でなかったのか。
危険運転での起訴は、絶対完璧100%無理~! ということなのだろう。
高速度については、「その進行を制御することが困難な高速度」(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条第2号)は、ハンド操作限定、原理主義、なようだ。
長く裁判傍聴をやってると、以下のようなことを感じる。
・ついうっかり過失、による死傷事件は大目に見よう。ついうっかりは仕方ない。続々と死傷事件が発生しても、ま、しょーがない。
・速度の出し過ぎ、無謀な高速度については、特に大目に見よう。
昔、日本の道路の制限速度が100キロ以下だった頃、メーター読みで105キロを超えた辺りで、キンコンキンコンと警告音が鳴った、うるさく鳴り続けた。
あれは、いつ頃だっけ、なくなった。
今、日本の道路の制限速度の最高は120キロだ。国産車の速度メーターは120キロまで、そこから先は不要、余地があるなら赤く塗りつぶせばいいのに、わざわざ、たとえば180キロまでとか刻んでいる。
サーキットを走るとき必要? へえ~、そうですか、、、
ま、そんなことも、傍聴席からは垣間見えたりなんかする、つーことで。
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