県職員の超過70キロ、裏金で弁護人の費用を
完全に忘れてました! 2006年9月10日付け朝日新聞の記事を。以下はその一部。太字は今井。
裁判費用にも裏金? 岐阜県、交通違反の元職員に渡す
岐阜県の裏金問題に絡み、約2億8000万円の裏金が隠された県職員組合の元役員が、悪質な速度違反を繰り返して有罪判決を受けた職員に対し、集約された裏金の中から20万~30万円の現金を渡していたことが、弁護士による検討委員会の調査などでわかった。この職員は刑が確定する前の01年11月に依願退職した。
関係者によると、裏金を受け取ったのは、健康福祉環境部にいた30代の男性職員。00年に長野県内の国道で最高速度を70キロ上回る120キロで走行したとして、道路交通法違反(速度超過)の罪で在宅起訴され、岐阜地裁で01年に懲役5カ月(執行猶予2年)の有罪判決を受けた。それまでに2回にわたって速度違反で検挙された前歴もあったという。
職員は判決を不服として名古屋高裁に控訴したが、刑が確定。裏金はこれらの裁判費用に充てられたといい……
「岐阜県の裏金問題」、そんなのあったっけ。いまネット検索したら、2006年8月12日付けのしんぶん赤旗の記事がヒットした。
内部告発があり、しかし知事は「悪質な中傷だ」として犯人(告発者)探しをやり、自殺者が、、、なんてことがあったりしたんだろうか。
交通違反マニアとして気になるのは、国道での超過70キロが懲役5月(ごげつ)、執行猶予2年だった、という部分であるっ!
ここで念のため言っておくと、執行猶予が付くとき、主刑は求刑と同じ、それが原則だ。なのでこの事件、求刑は懲役5月と推認できる。
速度違反の法定刑は現在「6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金」。2025年5月末まで、拘禁刑の部分は懲役だった。
懲役の時代、東京の首都高だと、量刑相場はこうだった。
超過60キロ台 罰金9万円
超過70キロ台 罰金10万円
超過80キロ台 懲役3月、執行猶予2年か3年(近年はほぼ2年)
超過90キロ台 懲役4月、執行猶予2年か3年
これは法令にもとづくんじゃない。私が長年にわたり速度違反の裁判を大量に傍聴してきて分かった相場、である。
一般道(都内の複数車線の幹線道路)だとワンランクずれる。超過70キロ台で懲役、というふうに。地方の一般道は、もっと厳しいようだ。
だが、超過70キロ(台)が懲役5月なら、こうか?
超過30キロ台 罰金9万円
超過40キロ台 罰金10万円
超過50キロ台 懲役3月
いや、そんなはずはない。
上掲報道には「それまでに2回にわたって速度違反で検挙された前歴もあった」とある。
前科でも違反歴でもなく、前歴…。検挙というからには、反則金ですまない事件だったのか。
金沢地裁で、似た事件を傍聴したような記憶が…。超絶マニアックデータに当たってみた。
制限50キロ、オービスの測定値は120キロ、つまり70キロ超過の事件を2017年に私は金沢地裁で傍聴していた。
求刑は、おお、懲役5月。
判決の日は金沢へ行けず、電話で主文を尋ねた。主文は秘匿だった。
その被告人は前科が複数あった。直近は、3年ほど前の速度違反、罰金6万3千円。
3千円は、免許不携帯の反則金3千円を納付せず刑事手続きへ移行し、速度といっしょに起訴された、そう読むことができる。
というわけで、冒頭の報道の職員は、「前歴」が影響して主刑が懲役5月となった。「前歴」がなければ主刑は懲役4月か、もしかして3月だった、と推認できる。
そんなことをマニアはすぐにごちゃごちゃ考えてしまうのですよ💦
あそうそう、「裁判費用」に裏金を20~30万円、という点について。
報道記事を読む限り、自白事件かと。自白で生じる裁判費用といえば弁護人の報酬だけだ。
そんな事件、私選でも国選でも、弁護人なしでも、求刑も判決も変わらないはず。
しかし、執行猶予付きでも懲役刑を受けると、公務員は失職の対象になる。なので私選弁護人をつけ、頑張って罰金判決を目指し、控訴もした、のかな。
で、懲役判決が確定して失職だと、退職金に影響するとかで、確定前に依願退職したのかな、わかんない。

