万引き窃盗、密かに厳罰化!?
東京簡裁の刑事係は、東京高地簡裁合同庁舎において、かつて3つの法廷を常用としていた。826、728号、534号法廷の3つだ。
ところが2023年、2つに減らした。826号法廷は地裁民事に譲った。そういえば開廷が減ったもんねえ、と思っていた。
そうして最近、なんか、開廷が激減した。どしてっ? ここんとこ偶然に少ない? もしも偶然でなければ…。
私はこんな仮説を立てるね。ずばり、これまで執行猶予付き懲役刑としていた万引き窃盗を、罰金処理とした!
以下は刑法だ。
(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
おおまかに言えば、窃盗は、微罪処分 → 不起訴 → 略式で罰金30万円 → 公判請求して執行猶予付き懲役 → 懲役の実刑、というふうに量刑相場の階段をのぼってきた。 ※2025年6月1日から懲役は拘禁刑に変更。
公務員や国家資格等を持つ人は、執行猶予付きでも懲役刑だとダメージがでかい。でも、そうじゃない人たちからすれば、何十万円もの罰金刑より、執行猶予付き罰金刑のほうが断然ありがたい。
けど、罰金刑(執行猶予付き懲役刑ぎりぎりなら罰金50万円)とされたら、痛いよね。30万円を食らったあとに、また50万円。そのダメージは計り知れない。 ※一部の富裕層を除く。
罰金判決、略式命令には、刑訴法の定めにより、必ずこのセンテンスが付く。
裁判官 「その罰金を完納できないときは金5千円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する」
「金」の1文字を言わないことが少し前に続いたが、最近また復活したかも。罰金額が大きいと換刑の金額も大きくなる。
財産刑を自由刑に換え、自由を奪う期間を、罰金の額に応じて決めるんである。換刑処分という。
労役場留置に執行猶予はない。払えなければ、いわゆる実刑である。
万引き病(窃盗症、クレプトマニア)の場合、経済的には裕福な人は、やっぱり少数派だ。多くは金銭的に貧困な方々だ。
財布に大きなダメージを食らうか、100日の実刑か、どっちか、って執行猶予付き懲役刑より、ぜって重いでしょ。
運用面での厳罰化、そっちへ舵を切った? というのが私の仮説である。
運用面での厳罰化は、すでにある。
酒気帯び運転、無免許運転は、かつては罰金前科が2回ぐらいあって公判請求され、正式な裁判の法廷に被告人として立たされ、執行猶予付き懲役刑、それが当たり前だったが、いつからだっけ、軽い物損事故を伴ってたりすると、さくっと執行猶予付き懲役刑、そんな裁判をしょっちゅう傍聴するようになった。
酒気帯び、無免許の罰金の相場は現在、普通車で初犯で30万円だ。被告人の多くは、日々働いており、30万円は痛いとはいえ出せない金額じゃないように見受けられる。
「うわ、運用の厳罰化だ。でもこの厳罰化を、検察も裁判所も、警察も、世間に報せないんだなあ。へえ~」
と私はおどろき、メルマガや雑誌に書いてきた。ネットでも書いたと思う。
はてさて、簡裁刑事の開廷が激減したのは、窃盗について運用の厳罰化が動きだしたから、という仮説は当たりか外れか。学生さん、卒業論文にどうですかね。
※追記: 2024年の検察統計から、公判請求(正式な裁判への起訴で通常は懲役求刑)と、略式命令請求(法廷を開かず罰金処理)のデータを見てみる。
窃盗 公判請求=2万3960人 略式命令請求=5707人
道交法違反 公判請求=7274人 略式命令請求=3万4348人
窃盗の、運用面での厳罰化は、多くの被告人たちにとって実質的な厳罰化といえると同時に、司法の負担軽減という面もあると。
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