悪いことしたら牢屋へ行くんだぉ
前記事からのつづき。
続けて別の法廷(大川隆男裁判官)で、やはり女性被告人の「窃盗」の判決を傍聴した。
被告人は保釈中。白黒格子柄の長袖シャツに、白っぽいズボン。肩までの長さの焦げ茶色の髪は、染めたんだろう、50代くらいのおばさんだ。
弁護人が再開請求、被告人の夫からの書面を証拠請求した。検察官は同意。
書面 「6月25日の裁判(第1回公判)以降、体調が優れず…癌は闘う病気で、妻がいなければ私は負けてしまう…ベッドのそばのトイレへも1人では行けない…娘は大学卒業後、海外勤務が決まり…最後の抗癌剤治療…家族と過ごさせてください…」
再開したので、再度結審するにあたり、被告人の最終陳述、こう述べた。
被告人 「あの、主人が、やっぱり、おととい退院して、癌の最後の治療、これから大変だから、毎月、点滴打って、抗癌剤、あたしが…ぜんぶやってるから…わたし自身、クリニック、ミーティング、更正の道を…治療させてください」
裁判官は壇上で少し書類をチェックして、判決を言い渡した。
裁判官 「主文、被告人を懲役10月に処する。主文は以上です」
2012年に万引きで罰金30万円。2014年5月に万引きで懲役1年、執行猶予3年。そして今回、2015年4月、スーパーで婦人靴等9点、販売価格合計2万7518円を万引き。
前回の期日で、癌の夫が証人出廷したという。
裁判官 「裁判所としても、配偶者の方の証言には心を動かされるけれども…犯した罪の責任を取ってもらうというのが…」
言渡しが終わり、満席に近かった傍聴人がぞろぞろ出ていく頃、若い男女職員がバー(傍聴席の前の柵)の中へ入った。保釈を取り消し収監するのだ。
最後まで傍聴席に残る2人…あっ、娘と夫なのだ! 夫は、顔色がものすごく悪く、完全に無表情だった。被告人は、被告人席に座ったまま斜めに夫へ体を向け、泣きそうな、強く叱られた子どものような表情をしていた。被告人が刑務所にいる間に、夫は独り死ぬのだろうか。
絶対に再犯しないと、どんなに激しく誓っても、再犯すれば自分の家族も破滅と分かっていても、万引きできる瞬間がくれば全部吹っ飛ぶ。理性なんぞではどうしようもない、窃盗症、クレプトマニア、私は万引き病と呼ぶ。
しかし、何も分からない幼稚園児は無邪気に言うだろう、「悪いことしたら牢屋へ行くんだぉ」。それを別の言い方で言えば「犯した罪の責任は取ってもらう」になる…。
『塀の中のおばあさん』、これ東京地裁地下の至誠堂書店に注文しよう。
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