判決言渡しの最中に傍聴人同士が声を出してモメ!
傍聴席に関して、東京地裁で珍しいことが起こった、1件じゃなく2件も。興奮のうちにご報告しよう。
その日は、てかその日も、13時30分から刑事の新件が複数あり。
706号法廷(52席)では「東大院元教授、収賄認める 検察、懲役2年求刑 接待事件初公判」などと報じられた「背任」の新件が、713号法廷(52席)では「女子中学生のAV撮影疑い 会社代表の51歳男逮捕、契約書不交付か」などと報じられた「不同意わいせつ、児ポ法違反、性的姿態等撮影、AV新法違反」(だったかな)の審理があった。
※児ポ法=「児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」
※AV新法=「性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律」
私は、714号法廷(20席)、「傷害、恐喝」の新件を選んだ。この被告人は、山口組系の傷害致死等(裁判員裁判)で懲役10年を服役している。出所後の再犯なのだ。
13時15分頃に714号へ。すでにドアが開いており、傍聴席はまあまあ埋まっていた。上記713号の前では行列が伸び始めていた。
後で気づいた。この714号は13時20分~13時30分、「覚醒剤取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反」の判決。被告人氏名は女性風だった。
いま傍聴席にいるのは、女性被告人の判決を見てすぐ隣の713号法廷の行列に加わろう、そゆ人が多いかも…。
714号の、私は検察官側の前列の端っこへ。そこには何か紙が置かれていた。あっ、被害者の席か、直ちにそう思い、私は斜め後ろの席へ。
間もなく、一般傍聴人にはちょっと見えないような女性が来て、その紙を手に取り、そこに座った。けど1、2分ほどでか立ち上がった。
するとっ! 間髪入れずにその席へ、ある傍聴マニア氏がどかっと座った。女性は紙を持ったまま、所在なさげにしている。書記官は何も言わない。ふうん…?
やがて裁判官が登壇。若く可愛い女性被告人(非身柄)を証言台のところに立たせ、「覚醒剤取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反」の判決言渡しが始まった。
このとき満席だったと思う。色情事件と女性被告人の事件は大人気なのだ。
途中、びしっとスーツの男性が着て、上記傍聴マニア氏に対し、要するに、紙が置いてあったろう、どいてくれ、という趣旨を言った。マニア氏は紙などなかったと断固動かない。どけ、嫌だ、という趣旨のやりとりがくり返された。
横倉雄一郎裁判官は言渡しを中断。壇上から声を発して制した。スーツの男性は出て行った。
女性被告人に対する判決は、拘禁刑2年6月(ろくげつ)、執行猶予5年、付(ふ)保護観察。
同種で懲役2年、執行猶予4年の判決を受け、その猶予満了から約1年7カ月での本件犯行だという。実刑を覚悟していたのだろう、女性被告人は泣いた。体が震えていた。
その言渡しが終わる前に、マニア氏は出て行った。
ふり返るに…。問題の席に置かれ、女性が手に取ったあの紙は、特別傍聴席であることを示すために書記官が置くいつもの紙とは違った。女性は、立ち上がるときなぜ紙を元に戻さなかったのか。戻す暇もなく、間髪入れずマニア氏がどかっと座ったのか。
ともあれ、傍聴席をめぐり裁判進行中に傍聴人同士が声を出してモメる、というシーンを私は初めて(と思う)はっきり見た。
「傷害、恐喝」は、六本木のバーを主な舞台とする、いかにもヤクザ風な事件と思えた。被告人(身柄)はじつに男前で、きっぱりしていた。求刑は「拘禁刑3年6月の実刑」…。
もう1件は418号法廷(20席)で起こった。
15時30分~16時、「麻薬及び向精神薬取締法違反」の新件。こちらはネットで「ラッパーD.O、麻薬取締法違反容疑で3度目の逮捕 大麻やコカインを所持か」などと報じられてる事件だ。
15時頃に行くと、先に1人いた。私は2番目。行列はどんどん伸びた。
15時10分頃、「うわ、被告人だ!」とすぐわかる男性と、弁護人と思しき男性と、女性2人ほどだっけ、来た。そばの一般待合室に入り、被告人ともう1人が中央廊下へ歩き去った。
15時20分頃、ドアの施錠が解かれ、間もなくぎっしり満席に。
15時25分頃、さっきの一行(いっこう)が来た。弁護人と被告人はバーの中へ。
女性2人と男性1人は席がない。傍聴席の後ろ、壁際に立った。立ち見は許されないのに。
弁護人が書記官(おっそろしく笑顔が素敵な女性)に何か話した。書記官の表情に、困った苦笑が見てとれた。
これだよ! 多くの弁護人は、被告人の身内が傍聴席に座れるかどうかを全く気にしていない。早くに来ているのに、待合室かどこかでのんびりし、傍聴席が満席になってから法廷へ来る、東京地裁のあるあるであーる!
壁際の3人のうち男性1人は去った。女性2人が立ち続ける。
15時30分、高森宣裕裁判官が登壇。書記官がひそひそと何か告げた。
裁判官 「本来であれば、椅子は増やさないんですけど…」
被告人席のそばの、刑務官が多い場合の備えての、がっしり重い椅子を2つ、書記官が(検察官も手伝って)傍聴席の後ろへ移動した。
壁際の女性2人は、並んでその椅子に座った。立ち見を超え、座って傍聴できることに…。
その女性2人は、被告人の身内とかじゃなく、司法修習生か何かそっち方面だったのではないか、バッヂは見えなかったが。
なんであれ、行列に並ばずのんびりしていた者に、椅子を与えて傍聴させる、東京地裁の刑事裁判においては大珍事といえる。 ※だいぶ昔にそんなことがあったような記憶がうっすらあるような。だいぶ昔のことだ。
1日に2件も傍聴席に関する驚きのシーンに遭遇するとは、1990年代なら「世紀末だあ!」とか叫んだよね(笑)。

