万引き女性が続々と刑務所へ
先日の午後、氏名の最後の1文字が「子」の、なんか久しぶりに、女性の万引きを2件傍聴した。
東京簡裁で「窃盗」の新件。
被告人は非身柄。いっかにも高齢者、79歳。圧迫骨折で腰かどこかひどく痛いそうな。
赤いヘルプマーク付きの高齢者用椅子付きカートにすがり、被告人席から法廷中央の証言台のところの椅子へ、ゆっくりよろよろと移動した。
公訴事実は、自宅近所のローソンでの、ソーメン1袋、販売価格473円相当の、万引きだった。 ※揖保乃糸かも。
ソーメンだけを、カートに備え付けのバッグに入れ、他の商品は精算して、その日は普通に退店。
翌日、店長が防犯カメラ(実質監視カメラ)をチェックするうち、本件万引きに気がつき、翌日も来店した被告人を見つけて声をかけ、警察に連絡したそうな。
中卒後、「水商売」で働き、離婚歴あり、現在は単身。生活保護を受給。同種前科が5犯。
2023年11月、窃盗(万引き)、懲役1年6月、執行猶予3年
2025年6月、窃盗(万引き)、懲役2年、執行猶予4年、付保護観察
捜査段階の調書では「お金を惜しんで」となっており、今回精算した商品の中に酒と煙草があった、そこを若い検察官は突っ込んだ。嗜好品をやめれば金を惜しむ必要はない、と。
被告人はゆっくり高齢者風に述べた。
被告人 「申し訳ないけど…お酒、煙草、なかなかヤメられないんですよ」
孤独な老後の、日々の愉(たの)しみなのか…。
論告を、検察官は6分間もやった。上記2件の前科を何度も何度も何度もくり返した。
検察官 「もはや長期間の矯正施設への収容…徹底的な矯正教育の実施が…」
求刑は拘禁刑2年。保護観察付き執行猶予中の犯行ゆえ、今回は実刑しかあり得ない。けれども、こんなのを刑務所へぶち込んでどうすんだ? ともいえる事件なので、実刑が正当であることを強弁したかったのか。
弁護人の最終弁論は2分間。投げやりでつぶやき調子の早口も、その姿勢も、「手癖の悪い年寄りがいるんだよ。とうとう刑務所行きだ。ま、自業自得だわな」という内心の、無言のアピールかに、私には見えた。
判決はきっかり1週間後。
私は傍聴ノートに赤ペンで書いた。社会との関わり、自分の存在の確認、それが、ドキドキ感も達成感もお得感もある万引きなのではないか、この人にとって、と。
帰宅後、データを見てみた。2023年6月の判決と、2024年1月の判決の期日が記録されていた。どっちも私は傍聴していない。
東京地裁で「常習累犯窃盗」の判決。
被告人は身柄(拘置所)。黒のパンツスーツ、インナーも黒、長身で姿勢が良く美人系でスリム、というより激痩せの、50代か60歳前後に見える女性だった。
裁判官 「主文。被告人を拘禁刑2年に処する。未決勾留日数中70日をその刑に算入する。以上が主文になります」
同種前科4犯。
2020年4月、東京簡裁、窃盗、懲役1年、執行猶予3年、猶予は取消しとなり2022年9月19日その刑の終了
2020年10月、東京簡裁、窃盗、懲役10月、2021年9月19日その刑の終了
2023年9月、東京簡裁、窃盗、懲役1年2月、2024年11月18日その刑の終了
「万引き」という語は私の傍聴ノートにないが,
裁判官 「摂食障害が影響していることは十分承知していますが…」
と出てきたところからして、万引きなのだろう。
食べ吐きの快感に目覚め始めた女性は――途中ちょっと端折るけど――続ければいずれ刑務所行きと、イメージしてほしい。
最後に裁判官がこんなことを言った。
裁判官 「お医者さんに本心、言えなかった、いいかっこしたかった…私も公判廷で聞いて、つらい思いをしました」
被告人が「はい」とおじぎした。 ※常累盗の法定刑の下限は3年だが、初めて罪名が常累盗になる場合、酌量減軽で下限より下げるのが一般的といえる。
閉廷後、カチャカチャと再び被告人に手錠、腰縄が。そのとき弁護人(見たことのない中年男性)が軽くニコニコと言った。
弁護人 「控訴、します? 控訴は?」
被告人が返答を拒んでも、明るく軽く弁護人は尋ねた。被告人は答えず去った。泣きそう、と見えた。
帰宅後、データを見てみた。2020年4月の期日と、おそらくは上記2番目の事件だろう、2021年3月の高裁の期日があった。どっちも私は傍聴していない。
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