明け方に襲えそうな泥酔女性を探して街を
奈良地裁で今日から始まった裁判員裁判は、正しくはどんな罪名(事件名)なのだろう、銃刀法の何条何項の違反とされたのだろう。傍聴席は何席で、特別傍聴席はどんな立場の人にそれぞれ何席ずつ振り分けられたんだろう。裁判員と補充裁判員の、性別とおおよその年齢はどうなんだろう。
それらを知りたかったら、私が自分で傍聴するほかないんだわね。
裁判員の選任で、検察官と弁護人はそれぞれ何人ずつ、どんな理由ではじいたのか、知りたいけど、そういうのは司法機密なのかな。
などと思いつつ私は東京地裁(東京高地簡裁合同庁舎)へ。
「過失運転致傷」、東京地裁、判決
被告人は非身柄。暗色スーツに地味なネクタイ。きちーんとしてる。
禁錮1年、執行猶予3年。またまた横断歩道上の事故だった。
裁判官 「罰金刑を選択するのが相当な事案とは言えない」
被告人は、執行猶予付きでも禁錮刑だと資格や仕事を失うため、罰金刑を求めていたんだろうか。
それは原則無理だ。どうしても罰金刑を望むなら、起訴前に検察官に対して主張・立証しなければ。
「賭博開帳図利」、東京地裁、判決
被告人は身柄(拘置所)、長身の中年男性だ。
拘禁刑10月、未決60日算入。 ※今年6月から懲役、禁錮が「拘禁刑」になった。
港区内のカジノ賭博店で、キャッシャーとして現金の管理などをしたんだという。そんなのなぜ実刑なのか。2019年11月に「賭博開帳図利幇助」で懲役8月、執行猶予3年を食らってるんだという。
「建造物侵入、窃盗未遂」、東京簡裁、審理
法廷前(私の歩測で約100mの中央廊下の最南端)に人だかりが。裁判所の職員も複数人。何だナンダ? と傍聴してみたの。
被告人は身柄(拘置所)、痩せて可愛い感じのいかにもお爺さんだった。
弁護人は、親兄弟はもう誰もいないことを、叔父(伯父?)さんはいるが90歳ぐらいなことを言わせ、こう尋ねた。
弁護人 「持病は?」
被告人 「………知的障害………4度…」
施設で育ち、18か19歳から42歳まで「病院に入院」し、本件は福祉施設か保護施設か、そういうとこの倉庫への侵入だった。
そうして、あの放浪の画家、山下清氏がいたのと同じ施設名が、その所在地名ともに出た! ノーベル書房の『裸の大将放浪記』を過去に私は全巻読んだのですよー!
「住居侵入、不同意性交等、性的姿態等撮影、不同意わいせつ」、東京地裁、新件。
「乗客に睡眠薬、性的暴行容疑=元タクシー運転手を再逮捕―50人被害か・警視庁」と今年5月21日に時事通信が報じた事件だ。
この情報をいただき、タクシー運転手なら私の守備範囲といえる、てことで今日はこれを傍聴に来たのだ。
まずは3件の起訴状が読み上げられた。被告人の認否は…。
被告人 「分かりません…憶えてません…」
たくさんやったのでいちいち憶えていないのか、と思ったら違った。
弁護人 「故意は争いません。しかし当時、心神喪失…無罪であると主張します」
被害女性の1人(18歳)を、タクシー車内でレイプし、性交場面や性器を撮影し、コインパーキングにか放置、見つけた通行人が通報、昏酔強盗事件として警察は捜査を開始、8日後に被告人方を家宅捜索、動画等が入ったUSBメモリが発見され…。
明け方に、襲えそうな泥酔女性を探して、タクシーで街を流していたらしい。
弁護人は証拠意見を留保、追起訴が複数あるそうで、続行。
「過失運転致傷」、東京高裁、判決。
被告人は不出頭。中型貨物で居眠り運転をして信号待ち車両に激突…。
前科なし。原審は罰金70万円、量刑不当の主張、控訴棄却。
量刑不当といっても「罰金70万円より執行猶予付き禁錮刑のほうがよっぽどいい!」という主張ではなかったようだ。
「過失運転致傷」、東京地裁、判決。
被告人は非身柄。きちんとして、如何にもただものじゃない感じの年配男性だ。
禁錮1年、執行猶予3年。一時停止後に発進、安全確認不十分なまま漫然時速2~3キロで進行したところ、左方から自転車が突っ込んできたんだという。前科なし。
弁護人席には、いかにも私選な感じの弁護人が2人。こんなの執行猶予以外あり得ないのに、何十万円か弁護人は受け取るんだろうか。
帰宅後、被告人氏名でネット検索してみた。なんと、もともと名があるうえ、ある事件でどーんと有名になった人だった。
職業とか、どんな事件かとか、言えば即バレそう。
それが終わったのが15時04分。まだまだいろいろ開廷はあったが、私は転げるように逃げ帰った、のであった。

