新制度でいくら儲かるのか。
おおざっぱなことは、これまで触れてきたが、今回、少し真剣に試算してみた。
意外なことになった!
取締り件数は「2倍程度」が見込まれている。
何を2倍にするのか。
・確認事務を委託した警察署管内において2倍
・全国規模で2倍
どっちなのか。
私はこれまで、そう考えていたのだが、これ、どっちでもないんだね!
http://ko-tu-ihan.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/1_e3b5.html
ここで引用した答弁に、こうある。
「標章取付け件数が現在の約二倍、ということは四百万件を超える…」
取締り件数ではなく、標章の取付け件数なんだね。
これは、なるほど、と思う。
従来(現在)の取締りのやり方は、こうだ。
<<標章取付け → 違反者が出頭して青キップ → 反則金納付(任意)>>
標章を取付けられた者が全員出頭するわけではない。
標章取付け件数と、取締り件数には、差が出てくる。
ところが将来の取締りのやり方は、こうななる。
<<標章取付け → カネ徴収>>
これだと、標章取付け件数と、取締り(カネの納付)件数とには、差が出ない。
※ いずれも、ごく例外的なものは除いてますよ。
つまり、新制度では、400万件を超える件数のカネが入ってくることになるんだね!
では、1件あたり何円なのか。
6月1日以降、新しいステッカーを取付けられると、
・出頭して青キップを切られ、反則金を払う
・知らん顔して、または反則金の納付がないために(※)、
車の持ち主の立場で、放置違反金を払う
どっちかになる。
※ 放置違反金とちがって、反則金の納付は任意。なのだけれども、では、「出頭して青キップを切られたが、取締りに納得いかなくて反則金を払わず、不起訴になった」という場合はどうなるのか。
その場合、確認標章取付けの翌日から30日以内に、
(1)反則金が納付された
(2)公訴を提起された
(3)家裁の審判に付された
この3つのどれかに該当しないので、車の持ち主に放置違反金の納付命令がいくのだという。そんなバカな? と思って警察庁に確認してみたが、そのようになるのだという。私はまだ信じ難いが…。
ともあれ、反則金と放置違反金の金額は同じだ。
しかし、車種によって異なる。
最も一般的な普通車の金額で試算することにしよう。
ここ、私はちょっと勘違いしてた。
普通車の放置違反金は、駐停車禁止場所が1万8000円、駐車禁止場所が1万5000円、これだけだと思っていた。
ところが、「時間制限駐車区間(いわゆるパーメ・パーチケ)に時間超過するなどして駐車しているもの」については1万円、というのがあるようなんだね。なぜ、だいぶ安いのか、不可解な気はするが、そうなってる。
放置で1万円というのは、『交通の教則』の反則金額の表に載ってない。6月1日からの新しい違反形態・概念ということになるのか。
というわけで、普通車の金額にも3種類あるわけだ。
が、まあ、最も一般的な、駐車禁止場所における金額、1万5000円をベースに、試算してみよう。
400万件 × 1万5000円 = 600億円
マジ? そんな高額なの?
いや~、これは取りっぱぐれのない制度といえるから、400万件に1万5000円を掛けちゃっても、試算としては特段問題ないはず。
600億円!? うわお!
でも…本気でそんなに稼ぐつもりなのか?
試しに、従来の放置(駐停車・駐車)違反からの反則金額を推計してみよう。
反則金の納付率は、全体で、100%をおおよそ3%前後、切る。
放置駐車違反に限っての納付率は、わからない。
ともあれ、まあ、納付率100%つーことで推計してみようよ。
上述の答弁は、04年春のもの。
なので、まず03年のを。
03年の、放置駐停車違反の取締り件数は、8万6604件。
8万6604件 × 1万8000円 = 15億5887万円
03年の、放置駐車違反の取締り件数は、151万6316件。
151万6316件 × 1万5000円 = 227億4474万円
15億5887万円 + 227億4474万円 = 243億361万円
ま、243億円、ということになりますか。
試しに05年も。
05年の、放置駐停車違反の取締り件数は、9万6134件。
9万6134件 × 1万8000円 = 17億3041万円
05年の、放置駐車違反の取締り件数は、141万254件。
141万254件 × 1万5000円 = 211億億5381万円
17億3041万円 + 211億5381万円 = 228億8422円
ま、228億円ですか。
そうすると、600億円ってのは、これまでの稼ぎの2倍をゆうに超えるじゃん? 3倍近いじゃん?
ちなみに、この600億円の内訳は…?
国会答弁では、7割くらいが放置違反金にいくだろう、とされてる。
それをそのまま信じるなら、
・反則金 180億円
・放置違反金 420億円
てことになる。
反則金が納付されるってことは、その前提として、警察官がキップを切って処理することがある。
180億円分は、警察官が違反キップを切るわけだ。
「警察官が違反キップを切ったけれども、違反者は争って不起訴となり、しかし放置違反金が徴収された」
というケースは、まあ、たぶんそんなにはないのだろうけど、警察官が違反キップを切る枚数は、180億円分より多い可能性はある。キップは切ったが、反則金納付には至らず、放置違反金で終わった、ということはあり得るから。
新制度のイメージとして、
「これからは民間の駐車監視員が取締りを行う。その分の警察力が、治安のほうへ振り向けられる」
という感じがあるじゃない?
でも…。
警察官が稼いでいた分が、243億とか228億円とかから、180億円に減る程度…。
警察官が切るキップは、180億円分にもなる…。
しかも、民間の放置違反金と、運転者とでトラブルになれば(なるだろう、今よりずっと)、その現場へ警察官が駆けつけることにもなる…。
そしたら、警察官の負担減は、たいしたことないんじゃないか…。
かえって負担が増えるんじゃないか…。
それより何より、私が気になるのは、放置駐車が一掃されてしまったら、600億円もの収入がゼロになってしまうことだ。
「いったんは一掃したが、手をゆるめれば、また違法駐車がはびこる。一掃し続けるために、見張り役として駐車監視員を日々街頭に立たせておかねば」
というなら、都道府県としてはそのための委託費を払い続けることになる。
しかし、放置違反金の収入は望めない…。赤字だ…。
だいいち、違法駐車(それはイコール迷惑駐車ではないよ!)を一掃して、民の日々の生活や経済活動は成り立つのか。
成り立つのは、委託を受ける業者とそこに就職できる人、の生活、経済活動だけだったりして?
やー、こんなおっそろしく長いのを読んでくれてありがとございますぅ。
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