懲役・禁錮刑の84%は3年未満、大半が執行猶予
2023年(それが最新)の司法統計の「第34表 通常第一審事件の有罪(懲役・禁錮)人員――罪名別刑期区分別――全地方裁判所」を見てみる。
「有罪(懲役・禁錮)人員」は4万423人。
刑期区分別で最多は「1年以上」(2年未満)だ。
実刑 4386人
(うち一部執行猶予 284人)
全部執行猶予 1万1944人
次に多いのは「2年以上」(3年未満)。
実刑 3489人
(うち一部執行猶予 217人)
全部執行猶予 5501人
次は「6月以上」(1年未満)。
実刑 2212人
(うち一部執行猶予 28人)
全部執行猶予 6302人
懲役・禁錮は、6月(ろくげつ)以上3年未満だけで約84%を占める。
傍聴マニア諸氏の実感と一致するだろう。
そんな中…。
東京高裁で「不同意性交等、強制性交等、強制わいせつ、児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反」の控訴審判決を傍聴した。
これはねえ、少年野球のコーチが複数の少年らに対し、陰茎を触り、肛門を触り、陰茎を口淫したという、サイテーな事件だ。
被告人から不出頭願いが出ているという。控訴審は被告人の出頭を要しない。
裁判長 「主文。本件控訴を棄却する。当審における未決勾留日数中120日を原判決の刑に算入する」
原判決は懲役7年(求刑は8年)。前科なし、重すぎて不当、5年に処すべし、との控訴だった。
少年たちの調書にこんな部分があるそうだ。
少年 「嫌でした。我慢していました」
少年 「本当は恥ずかしくて、誰にも話したくなかった」
少年 「コーチからべたべたされるのが嫌でした」
続けて東京高裁の別の法廷で「建造物侵入、強盗致傷、窃盗」の控訴審判決を傍聴した。
被告人は身柄(拘置所)。濃いぃ坊主ヘアで眉は黒々、顔面はのけぞり。証言台を前に「ヤンキー立ち」をした。
裁判長 「主文。本件控訴を棄却する。当審における未決勾留日数中160日を算入する」
万引窃盗6件をくり返したうえ、数人で(本件被告人がリーダー的立場)侵入強盗をやらかし、店主(ガンダムプラモなどを販売)をボコボコにしたそうだ。
前科なし。原判決は懲役8年(求刑は9年)。
動物界の者が、動物流に暴れ、動物の檻(おり)へ行く、申し訳ないけどそういうものをちらり感じてしまった。訴費不負担。
続けて東京地裁の法廷で「準強制性交等」の審理(論告弁論)を傍聴した。
前科者等を支援するNPO法人の理事長(犯行時55歳)が、25歳女性の身元引受人になり…。被害女性の調書にこうあるという。
調書 「あなたには悪霊が憑いている…除霊しなければならない…ベビーオイル…おっぱい舐めていい? 嫌です…舐めてきた…頭が追いつかず、されるがままに…頼れる人は被告人しかいない…言いなりになるほかないと思って…陰部を舐めたあと、キリストを受け容れないと悪霊から解放されないと言い…」
被告人は1990年に強姦致傷で懲役4年、1995年に強姦で懲役6年6月、2003年にわいせつ誘拐と強姦で懲役9年の判決を受けているという。
筋金(すじがね)入りの強姦男、ではないか。
求刑は懲役9年。
被告人席に小さく座った被告人は、左手が小刻みに揺れていた。脳卒中か何かの後遺症か。独特な表情、雰囲気で、闇に落ちた動物、のようなものを失礼ながらちらり感じてしまった。
懲役7年、8年、9年、こういうのを私はあんまり傍聴しない。続けて3件傍聴したのでここに書いてみた次第。
逆に、主刑が懲役2月(にげつ)ってのを3件傍聴したことがある。
2件は実刑、1件は懲役2月、執行猶予2年。チョー珍しいでしょ。
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