妄想の圧倒的影響下にあっても有罪は可能か
「2審も被告に「無罪判決」神戸5人殺傷事件「妄想の圧倒的影響下にあった疑い払拭できない」『心神喪失疑い』で刑事責任能力なしと再び判断 大阪高裁が検察の控訴棄却」と9月25日付けTBS NEWS DIG。毎日放送の転載か。画像はそのスクリーンショット。
以下は刑法だ。
(心神喪失及び心神耗弱)
第三十九条 心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
弁護人はよくこれを主張する。裁判所はもう簡単に退ける。
「精神的状態が犯行に影響を及ぼしたと認められるが。その影響は小さい…」、それが決まり文句といえるか。
刑事行政は検察が担っている。39条で無罪とすべきような事件は検察のほうで不起訴とする。
罰すべきと判断したから検察は起訴したのだ。検察が起訴して法廷へ出てきたからには、有罪とする理由をしっかり立てる、それが裁判所の役割…。
そんな感じだろうかと私は傍聴席から見ている。
そうしてさらに、こんなことも妄想するのだ。
大量に飲酒して脳の前頭葉の辺りが一時的に壊れたというか、突拍子もない無茶苦茶をやらかし、刑事裁判の被告人として法廷へ出てくる者がよくいる。
よくこんなふうな供述をする。
被告人 「正直、まったく記憶がないのですが、防犯カメラ(監視カメラ)に写っているのは私だと思います。私がやったことで間違いないと思います」
こういうのを39条で争う弁護人は、いない。
少しのひっかかりもなく、みな有罪とされる。
被告人が自分の意思で飲酒したのだから、結果の責任はとれ、ということかと。
そうするとだよ、こういう認定もできるんじゃないか。
裁判官 「犯行時は妄想の圧倒的影響下にあったとしても、初期の時点おいて病識はあったと認められる。その時点で治療すべき義務があったのに怠り、本件犯行に至ったものである」
として有罪、可能じゃなかろうか。
ただ、都合が悪いことがある。
心の病気で万引きをくり返す者がいる。ついに病識を持ち、ようやく治療を始めることがある。
しかし! 量刑相場的に懲役の実刑なら、治療を断ち切って刑務所へぶち込む。
出所した病者はすぐにまた万引きを、ということがある。
また、刑務所は「徹底した矯正教育を行なう矯正施設」という建前になっている。検察官は法廷でいつもそのように言う。
ところが、刑務所を出て再犯に至る者が多いことは、広く知られているとおりだ。
治療すべき義務を怠った、そこを問題にしては、いろいろ不都合が生じてしまう…。
傍聴席でそんなことも思ったりなんかしている傍聴人は、私だけじゃないですよね? ねっ?
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