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カテゴリー「刑事/窃盗」の149件の記事

2024年10月22日 (火)

ソープ嬢の売り上げの15%が「スカウトバック」

 最近傍聴したのをまた少し。

 

 「覚醒剤取締法違反」、判決。

 事件番号的に、2022年のGW明け頃の起訴のはず。今頃判決ってことは、違法収集証拠だとかで徹底的にテッテテキに争った?
 でも開廷表では10分間の枠。なんだそれ、意味わかんない。傍聴してみた。
 被告人は身柄(拘置所)。大柄で、タトゥーが目立つ。

裁判官 「主文。被告人を懲役1年2月に処する。主文は以上です」

 事件は、2022年4月、都内の大手ンコスロ店(※)における、覚醒剤の注射使用。トイレで、かな。 ※パチンコ・パチスロ店の私独自の略語
 「詐欺」で懲役4年4月を服役し、刑の終了から1年ほどでの犯行だという。
 被告人氏名でのネット検索によれば、アダルトサイト料金に係る巨額の架空請求詐欺らしい。

 だからってなんで2022年の事件が今頃判決?

裁判官 「保釈中…長期間…逃亡した…」

 あーっ。保釈被告人の不出頭罪は、2023年11月施行。本件被告人が「刑事訴訟法違反」に問われてないってことは、逃亡はそれ以前だったわけだ。

 

 「建造物侵入、窃盗」の判決。

 被告人は非身柄。長身で黒スーツ、40歳前後か。

裁判官 「主文。被告人を懲役1年6月に処する。この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する」

 裁判所が証拠により罪と認めた事実は、店舗へ侵入しての「××1本」の窃盗だという。なんだそれ! ※申し訳ないけど××は伏せる。普通は無価値と思えるようなもの

裁判官 「以前、ドアが開いているのを見て…(鍵がある場所を知っていたので)…親切心で…(施錠し)…コレクションとするため…(合鍵をつくり、本件当日)…応援していたキャストの…誕生日のブロマイドが見たい…(合鍵で侵入したがブロマイドは見つからず)…キャストの写真貼付の××を見たい…持って外へ…物音がしたのでそのまま立ち去った…」

 キャスト、誕生日のブロマイド、写真貼付の××、もしや地下アイドルがらみ? いや分かりません。

 

 「職業安定法違反、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反」、新件。

 被告人は非身柄。黒スーツに、安そうなネクタイ。なんかちょっと朴訥な感じの若者だ。

 新宿歌舞伎町の路上で、ホストが19歳女性に声をかけ、店へ。
 女性は店へ通い、売掛金…ツケ払い…支払に窮し…。

 「女性客の売春収入を受けた疑い、ホストら逮捕 スカウトバック初摘発」と8月5日付け朝日新聞。この報道の被疑者らの1人が本件被告人だ。

 スカウトバックは女性の稼ぎの15%。顧問料として1日の稼働につき2千円、半日なら千円、なのだそうだ。
 毎月送金されてきて、上掲報道の被疑者らで適宜分けたという。

 ホストからすれば、スカウトバックは目的ではなく、ホストクラブへ来て金を遣ってくれることが最大の目的だったという。

 求刑は懲役2年及び罰金50万円。検察官の雰囲気からして、執行猶予は間違いなさそう。

 

 本日、裁判所を出る際、ふと思いついて某警察(ってなんだよ。笑)へ架電。えーっ、マジですか、ありがとうございますとなり、直ちにその某警察へ向かった。いろんなことがありますね。

2024年8月27日 (火)

重い病気と認識しながら病気と認めない、裁判所こそが病気か

 最近ちょーっと忙しくて。
 キャパを超えることをやってて、何かがこぼれ落ちざるを得ない、というか。

 

 昨日(8月26日、月曜)、東京地裁で10時から「常習累犯窃盗」の審理。

 この被告人(女性)の氏名は2014年、2016年、2019年に東京簡裁の開廷表に「窃盗」の被告人としてあった。私は一度も傍聴せず、超絶マニアックデータに入力し続けてきた.
 いくらなんでも、もう傍聴しなければ。

 ただ、体力的にやばい。“計画寝坊”をして10時30分頃、法廷へ行った。

 

 被告人(どうだろ、40歳ぐらいの女性)を法廷中央、証言台のところに座らせ、裁判官が壇上から、まさに責め抜いている最中だった!

 要するに、被告人は病気(私が言うところの万引き病)であり、しかもだいぶ重く、がっつり治療しなければならなかったのに、

  ・専門の医療機関へ行かず、
  ・治すには5年、10年かかると言われていたのに、
  ・自助グループへの参加を3年半ほどで止(や)めてしまった、

 なんで止めたのか、裁判官は執拗に責めるんである。

  ・専門の医療機関は少なく、1年、1年半先でないと予約が入れられないと言われた。
  ・3年で、あるいは1年で回復した人もいたと聞き、自分はもう治ったと思ってしまった。

 と被告人は言うのだが、聞く耳を持たず、執拗に責めるんである。
 万引き病は、専門医による長期間の徹底治療が必要な、めっちゃ重い病気である、そこを前提としていることがもうありありと明らか!

 

 ところが、万引きという犯罪につながるそんな重い病気、の治療を、完全に本人に丸投げ、国は手を貸さないどころか、そもそもそんな病気と認めないのである。
 言ってること、わかりますかね。

 クレプトマニア(窃盗症。私が言う万引き病。以下同)と認めるための、アメリカの精神医学会とかの診断基準、のひとつに「有用でなく金銭的価値もないモノを盗む」というのがある。
 スーパーやコンビニに、金銭的価値もないモノは陳列されていない。
 よって被告人はクレプトマニアではない、とされるんである。

 裁判所、狂ってるよねえ。裁判所こそ重い病気だろ、と私はいつも思う。

 

 求刑は懲役3年。
 弁護人(ちょっとアイドル風な若め女性)は執行猶予判決を求めた。
 裁判官は、法律上執行猶予は無理と言い、検察官は、刑法第25条1項を見てもらえばわかると言い、弁護人は退かない、というシーンがあった。
 以下はその第25条第1項だ。

第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
 一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
 二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

 本件被告人は、前刑の終了から5年経ってないのかな。

 次回判決。懲役1年6月か1年10月ではないかと私は予想する。

 

 それが10時57分に終わり、私はそばの非常階段をかけあがって「常習累犯窃盗、覚醒剤取締法違反、刑事訴訟法違反」の審理(11時~12時)へ。

 保釈中の不出頭という、マニアからすれば超重要な事件だが、事件名に「わいせつ」「性交」「性的姿態」などの文字がない。被告人は男性氏名。しかも新件じゃなく審理の期日。不人気に決まってる。傍聴席は52席、楽勝だな(笑)。

 と思ったら、ドアの前に数人いて、覗き窓から中を覗いてる。どしたんだ? 私はドアを開けて入った。
 なんと、がーん、ほぼ満席!

 

 かろうじて3席ほど空いており、私は傍聴できた。
 なかなかに見応えのある期日だったが、また今度。

2024年8月21日 (水)

病的窃盗、病的ギャンブル、摂食障害への対応!

 9月14日(土)、「条件反射制御法学会 第13回学術集会」というのがある。

 

 条件反射制御法、なにそれ? な方が多いだろう。
 私は、もう何年前になるか、万引き病の女性の裁判で知った。

 

 万引き病とは、私独自の呼び方だ。本人はどんなに万引きしたくないと思っても、まさに悪霊に取り憑かれたように万引きをやらかしてしまう、そういうビョーキだ。
 一般には窃盗症とかクレプトマニアとかいう。

 万引きで2回ほど罰金刑(だいたい20~40万円)を受け、それでも万引きをやって執行猶予付き懲役刑に、その猶予中にまた万引きをやって実刑判決をくらい、「どうか再度の執行猶予を」と(高裁へ)控訴し、その控訴審の途中でまた万引きをやらかす、刑務所へ堕ち、出所してすぐまた同じスーパーで万引きを…。
 信じられないほど“念入り”な病者も、私が知る限りでさえ何人もいる。

 病気なんだから、治療しなければならないんだが、検察も裁判官もそこはNoケアー、ひたすら量刑相場の階段を上らせるだけ、上りきったら何度でも刑務所へ落とすだけ。
 この人たちもまた明らかにビョーキだな、と私は傍聴席で思う。

 

 ある万引き病の女性の裁判に、独立行政法人国立病院機構 下総精神医療センターの平井愼二医師が証人出廷した。
 その証言、条件反射制御法についての“講義”を聞いて(2事件で傍聴した)私は「なるほどぉー!」と、ま、大感動したのね。
 専門家の貴重な講義をただで聴ける、傍聴マニアの役得というか。

 平井医師は言わないけど、報道などから、あの有名芸能人、あの有名スポーツ選手の治療もやったでしょ、私はそうにらんでる。

 それでだ、そんな条件反射制御法のイベントが9月14日にあるわけ。

 平井医師の「ご挨拶」はこうだ
 当日のプログラムはこうだ
 非常ぉ~に興味深い、面白そう。

 

 しかし! 私は行けない。リモートにも参加できない。
 持病からくる特殊な生活習慣のせい、プラス、ちょっと自分的に追い詰められてることがありまして。
 今週の裁判所行き、月曜は涙を飲んで断念、明日木曜も断念する予定。このブログもだいぶ何日も休んでしまった。

 刑事弁護をやる弁護士さん、万引き病、違法薬物あるいは性犯罪の常習の方、またそのご家族の方、参加を考えてみたらいいと思いますよ。

2024年7月14日 (日)

被告人をあからさまに見下す弁護人

 最近傍聴した事件を少し。

 

 東京簡裁で「窃盗」の判決。

 開廷時刻、被告人だけがいない。
 弁護人(中堅男性だったかな、珍しく私は人着をメモってない)が携帯電話を持って廊下へ。

 すぐに被告人とともに戻った。
 あれっ、汚れた感じの黒色半袖Tシャツで痩せたその被告人、10分ほど前から廊下にいましたけど?

 

 なぜか裁判官は人定質問をおこなった。
 生年月日からするに54歳。職業を尋ねられ…。

被告人 「仕事も、見つからない…とにかく病気(の治療)が先なんです。今、何てんですか、○○病、2週間に1回血液検査いかないと…」

 裁判官は遮り、判決を言い渡した。

裁判官 「主文。被告人を懲役10月に処する。次に理由を述べます」

 実刑だ。
 累犯となる前科も含め同種3犯。生活保護を受けていたが、タバコやスマホゲームの課金に費消して所持金が少なくなり、スーパーで万引きしたそうな。

 

 訴訟費用(国選弁護人の費用)は不負担。言い渡しが終わり、帰り支度をしながら弁護人が被告人に冷たく言った。

弁護人 「控訴します? 今回で私、任務終わりなんで、決めてください」
被告人 「だからどうしようか、困ってんです」

 累犯含め同種3犯では、控訴したってどうにもならんでしょ。下獄の日を先延ばしするだけでしょ。しかしそんな説明を弁護人は一切せず…。

弁護人 「(控訴を)しなければ収容されます」
被告人 「収容されると、困る…」
弁護人 「じゃ分かりました、不服申立しときます」

 そう言って弁護人はさっさと出て行った。
 私は傍聴ノートに、ペンの色を変えてこう書いた。

ノート 「なんだこの弁護人、ひっでーな、あからさに見下し、どうでもいい感、丸出し」

 こういうシーンをしっかり目撃し、必要に応じて報告する、それが裁判傍聴師の役割である。

 

 続いて「窃盗」の判決。

 2週間ほど前の前回期日を私は傍聴した。被告人は見た感じ80歳ぐらいの女性。万引きで執行猶予中の万引きだ。
 前回、何を問われても弾かれたように「もうしません!」「ハイしません!」と繰り返した。
 動脈硬化ならぬ思考硬化、あるいは、他者を拒絶する生き方なのか。
 求刑は懲役1年6月。無残に実刑判決となるのを見届けようと、私はこの法廷へ来たのだ。

 ところが、被告人が現れない。裁判官は10分待つという。たぶん来ないだろう。

 

 間もなく、東京地裁のほうの某法廷で「道路交通法違反」の判決が始まる。
 どうにも気になる理由があり、私はそっちへ急いだ。

 こっちの被告人は、現場仕事風の年配男性だ。

裁判官 「主文。被告人を懲役6月に処する。この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。訴訟費用は被告人に負担させない」

 相場的に無免許運転か、にしてはちょっと軽いな…。

 判決理由に驚愕の4文字があった。「一般原付」の無免許運転だという!

 

 2023年7月1日、いわゆる電動キックボードを道路交通法に取り入れ、「原動機付自転車」の定義(第2条第1項第10号)が変わった
 「一般原動機付自転車」と「特定小型原動機付自転車」に分かれ、従来の原付バイクは前者に、電動キックボードは後者に含まれることとなった。

 そうして今回、東京地裁の無免許運転の裁判で、「一般原付」という4文字を初めて私は耳にしたのである!
 この興奮、みんなわかってくれるよね、うんうん。 ←わっかんねーよっ(笑)

 

 このあと、原審無罪の「殺人」の控訴審を少し傍聴した。
 精神鑑定を行った医師(ハキハキと頭良さそうな中年女性)の尋問をやっていた。
 殺人の動機として被告人が語ること等々が、まあとんでもない内容だったりして、女医さんは何度も「正常な判断ができる状態ではなかった」と述べた。

 

 なんでもそうだが、はまる人、はまらない人がいる。
 裁判傍聴に、私ははまったね。

 今年6月20日、私は70歳になった。今の調子で傍聴できるのは、せいぜいあと10年か。
 いやいやもっと傍聴して、世界最高齢の裁判傍聴マニアとして世界傍聴マニア大会で記念講演をする、そこを目指そうじゃないか。

 そうしてある日、ルキノ・ヴィスコンティ監督の名画『ベニスに死す』のラストシーンをまね、傍聴席で静かに息を引き取る。

 なぬ、迷惑だから傍聴席で死ぬな? 裁判所の敷地を出て歩道で行き倒れろ?
 ま、それもいいよね。とにかく、長患いとかせず、ぽっくり死ねと、家人からきつく言われているのだ。

2024年3月 1日 (金)

病者が持ち始めた病識を、裁判官は捨てさせた!

2402094  細くて小柄な71歳のご婦人、を被告人とする「窃盗」の刑事裁判を、2020年3月10日発行のメルマガ第2381号「病識を持ち始めた病者に、裁判官は病識を捨てさせた!」でレポートした。

 

 東急ストアでの万引きだった。レンコン1袋等4点、販売価格合計1168円。

 自転車で来店し、買い物カゴに商品を入れてから銀色の手提げバッグに移し、会計せずに店外へ出て、自転車の前カゴにあった白色の手提げバッグに商品を移し…。
 それから銀色の手提げバッグを持って、隣接する100円ショップで飲料水3本を同様の手口で万引き。

 外へ出て自転車に乗ろうとした被告人に、一部始終を見ていた保安員が「またお母さんですか」と声をかけた。被告人は「あっ」と絶句してから「すいませんでした」と…。
 その商業施設で万引きするのは、被告人の供述によれば6回目なのだそうだ。

 同種罰金前科2犯、相場的に執行猶予付き懲役刑で決まりの事件だ。


 情状証人は被告人の夫だ。スーツにネクタイ、ずんぐりメタボなお年寄りで、とにかく迫力がある。途中でペロリ舌を出して笑うシーンもあった。

証人  「(関係は)はい、夫婦でございます! (自分は)無職でございます! (今回の件で)なんでこんなことをやるんだ! 叱り飛ばしました!」
弁護人 「これまで何度も万引きを…」
証人  「その都度、なんでやるんだと叱り飛ばしました! 病気じゃないのか! とは言いました!」
弁護人 「(万引きをくり返す)理由は病気と?」
証人  「はいっ!」

弁護人 「どんな病気と?」
証人  「盗むのをヤメようとしてもヤメられない! 分かっているのだけどやめられない! …盗ってくるものがあまり必要のないもの…たとえばネジです! なんでネジなんか! 明快な回答が得られない!」

 依存症についていろいろ情報を集めたが…。

証人  「本人に言ったら、私は病気じゃない! 正常だと怒りだしまして、怒りだしました! 私も体調が悪く、それ以上は言えませんでした!」

 なるほどねえ。自分はまともな人間だ、気味の悪い妙ちきりんな病気であるはずがない、意思の力でヤメられる、そもそもお金はあるし万引きなど本心からしたくない、二度と万引きしない、絶対しません…万引き病者は皆そこから頑なに動かないようだ。

 しかし、万引きできるシチュエーションになると、二度としないとの誓いはすかっと消え、悪霊に取り憑かれたかのようになり、多少キョロキョロするものの、天井の監視カメラのこととか全く気にせず、万引きをやる。
 悪霊どもは近年の監視カメラの性能を知らないのか、いや、知ってて万引きさせるのが悪霊ってものか。

 

 そして被告人質問。被告人は終始、うつむいて暗く固かった。

弁護人 「どうして万引きを」
被告人 「衝動的にやってしまいました…」

 ここで裁判官が、いかにも不愉快そうに介入した。

裁判官 「衝動的に? 何か目的があったんでしょ?」
被告人 「……………わけもなく(手提げバッグに)入れてしまいました…」
裁判官 「説明してください! ちゃんと記憶してるんでしょ?」
被告人 「……………病気だと思います…」
裁判官 「買い物に行ったんでしょ?」
被告人 「……欲しかったのは枝豆豆腐、だけです…」
裁判官 「枝豆豆腐も盗ってる」
被告人 「はい…」

 裁判官の意図が、私はよく分からなかった。「衝動的」という語に、反射的にムカついたように思われた。

弁護人 「(調書では)レジが混んでいたから(精算しなかった)と…」
被告人 「違います」
弁護人 「じゃなぜ調書に署名したのですか」
被告人 「本当の理由を言っても分からないと思いましたので、はいって返事してしまいました」

 じつは私自身、ずいぶん何度も調書を録取されたことがある(※)んで、その感じは分からないじゃない。  ※交通違反で複数回と、交通事故の被害者として1回、傷害事件の事件直前の様子の目撃者として1回。

弁護人 「衝動的にわけもなく盗ってしまう病気と、気づき始めたのは?」
被告人 「10年ぐらい前です…」
弁護人 「なぜこれまで(病院へ)行かなかったのですか?」
被告人 「病気と向き合うのが嫌だったんです」
弁護人 「病気と分かるのが怖かったんですか」
被告人 「はい」

 そうなんだよねえ。万引き病の裁判を私はだいぶ傍聴してきた。病気と向き合うのが嫌、病気と分かるのが怖い、その感じ、すごくよく分かる。
 裁判官はこうぶつけた。

裁判官 「さっきから…正面からあなた自身で責任に向き合っていないんじゃないか…衝動的、病気、しかしそれはあくまで傾向なんですよ…だけど結局、お店へ行って盗るのは、あなた自身の判断なんですよ。だから…向き合って、あなた自身が考える…そうしなければ…薬を飲めば治るようなもんじゃないんです」

 被告人は証言台のところに座り、ずーっと前屈みに固くうつむいている。

裁判官 「あなた自身、今回どういう責任があると思ってますか!?」

 被告人は前屈みに固くうつむいたまま、貝になった。 ※固く沈黙したという昭和の表現。
 どう答えりゃいいのか。「他人の財産権を侵害した刑事責任があると思います」とは、一般生活者には無理でしょ。
 固い沈黙のあと、被告人は答えた。

被告人 「病気のせいではありません。私自身の…」

 私は直ちに赤いペンで傍聴ノートに書いた。「あーあ、言っちゃったよ!」と。

 今回ようやく強く持ち始めただろう病識、ほんとは持ちたくなかった病識を、被告人は、裁判官という偉い絶対者のアドバイスに従って堂々と捨てたのだ!
 内心、晴れ晴れとした気持ちになったんじゃないか。

 私は思った。このご婦人、きっとまたやるだろう!
 そのように超絶マニアックデータの備考欄に書き、またやってまた法廷へ出てくるケースは、実際ときどきあるのだ。

 求刑は懲役1年。そこまで聞いたところで私は出た。あと数分で、「今日はこのために裁判所へ来た!」という裁判が別のフロアの法廷で始まるのでっ。
 判決を見届けてないが、鉄板で懲役1年、執行猶予3年だったはず。

 

 そうして2024年2月29日、東京地裁に、同姓同名の被告人の「窃盗」の第1回公判があった。
 傍聴できなかった。
 この4年間、どうお暮らしだったのか。あの個性的な夫氏はどうしたのか。次回を必ず傍聴しよう。

 私はねえ、有名芸能人の薬物事件より、こういう事件にこそ、こんな言い方をして何だが、惹かれるのだ。
 マイナー街道まっしぐら。ま、こんな奴もいて良かろうと。

 ←3日1日19時10分現在、週間INが110で2位。直近の1週間に11人もの方が、猫のバナーを? びっくりです、ありがとうございます~。

3月13日(水)追記: 判決を傍聴した。2020年3月に私が傍聴した「窃盗」は懲役1年、執行猶予3年だったという。本件「窃盗」は、その猶予が満了して約8カ月の万引き、とその10日後の万引き。本件判決は懲役8月。求刑は懲役1年6月だったかも。

 前刑のあと、ようやく持ち始めた病識をもとに、しかるべき専門医療機関へ通院していれば、本件万引きはなかった可能性がある。
 しかし、裁判官により病識を捨てさせられた。可哀想に。てか裁判官、悪いやっちゃな~!

 でもこんなこと誰も知らない。人間社会に理不尽は付きもの。そういうまとめでいいのか、、、

2023年11月 7日 (火)

東京地裁、法廷内の気温は30度か!

 今日は暑かったねえ、裁判所(東京高地簡裁合同庁舎。以下同)が!

 今日の東京の最高気温は27.5度だったという。
 あの観測は、私が知る限り、緑に囲まれた良い環境での測定らしい。

 

 東京地裁の法廷は、窓がない。
 北端と南端の法廷には窓があるが、閉めきりでぶ厚いカーテンに覆われている。
 なのでどの法廷も、暑いのなんの! 南端の法廷はまるで温室だ。
 廊下もだいぶ暑い。
 非常階段室へ入ると、若干涼しく感じる。

 てえことは、法廷は煖房を入れてるのか?
 かもね。

 

 この庁舎の冷暖房は、冷たい空気、暖かい空気がどこかからまとめて送られ、個々の部屋での調節はできないと、だいぶ前に聞いた。
 暑すぎるとき、寒すぎるとき、書記官が壁の装置で調節する、なんてのを見たことがない。

 地下深くに『千と千尋の神隠し』の「釜爺」みたいな御仁がいて、煖房炉にせっせと石炭を放り込んでいる。
 メディア発表の最高気温が27.5度、法廷内はもっと高い、とは誰も釜爺に教えない、のかもしれない。

 

 そんなファンタジーなことはなく、単に、暑くても冷房は使わない、ということにすぎないかも。

裁判官 「暑い寒いは人の感覚である。個人差もある。裁判所が法廷の暑い寒いを気にしなかったことに何ら落ち度はない。一方、11月は晩秋である。煖房の季節である。経費節減の観点から、煖房を控える場合もあるとしても、11月に冷房を使うなど論理則、経験則等に照らしてあり得ないというべきである。冷房を使わなかった手続きに瑕疵(かし)はない。よって傍聴人の請求を棄却する」

 そんな感じですかね。

 

 今日は朝から裁判所にいて、濃ゅいのをいいっぱい傍聴した。

 なのに「無罪」を見逃した。
 マニア氏によれば、事件は賽銭ドロ未遂。
 賽銭箱に針金を突っ込んでいたところを目撃、通報されて逮捕されたが…。
 否認して目撃者を証人尋問したところ、証言があいまい過ぎて無罪、とのこと。
 それ、第1回公判から傍聴したかったなあ!

 大事なものが指の間からぽろぽろと、さらさらとこぼれ落ちていく、それは仕方がない、手に残ったものを大事にしよう、そういう心構えでないと東京地裁の傍聴マニアは生きていけない。
 人生も同じだと気づく、そう、裁判傍聴は哲学なのだ、よし。

 ←11月7日21時30分現在、週間INが60で2位。

2023年10月 2日 (月)

FTD(Frontotemporal Dementia)と万引き


 「谷口恭の「その質問にホンネで答えます」」という無料のメールマガジンに私は登録している。毎号全部読むわけでは到底ないが。

 その「2023.10.2【Vol.124】」の「最近の医療情報」はこう始まっている。

9月24日(日)から10月1日(日)までの8日間が何の「週間」であったかをご存知でしょうか。答えは「世界FTD啓発週間」です。

 FTDとは「Frontotemporal Dementia」の略だそうだ。
 frontal lobe は前頭葉、temporal lobe は側頭葉、Dementiaは認知症。
 つまり前頭側頭型認知症。日本では昔「ピック病」と呼ばれた。

 谷口恭さんはこう書いている。

 FTDに罹患すると、たとえその人がつい最近まで仏のように穏やかな性格の持ち主で万人から愛される高い倫理観を持った人格者であったとしても、他人に見境なく失礼な暴言を吐き、まったく悪びれずに万引きや無銭飲食を繰り返し、ときには暴力や性暴力をふるうこともあります。「認知症」のひとつであるのにもかかわらず、記憶はさほど衰えず、よって家族や周囲の人たちもなかなか認知症だとは疑えません。

 

 以下、私もFTBと略称しよう、フロントテンポラル・ディメンシア。
 FTBなんてものを私が初めて知ったのは2015年10月、東京高裁の「窃盗」の控訴審でだった。
 万引きの執行猶予中にまた万引きをやり、実刑判決(懲役10月)を受け、どうか再度に執行猶予を、という事件だった。

 

 じつは同年7月、その被告人(50代か60歳前後ぐらいの女性)の、一審の判決を東京簡裁で私は傍聴していた。
 そのとき、FTBなんて話はぜんぜん出なかった。

 一審が終わる頃か、アメリカへ留学中(大学3年生)の娘が帰国した。
 その娘を、控訴審で尋問した。

 母親は明らかにおかしいと思った娘は、母親(保釈中)をクレプトマニア方面のクリニックへ連れて行った。
 どうも違う、認知症の疑いがあると言われ、そっちの専門医へ。
 すると、脳の側頭部に萎縮が見られ、FTBと診断された。

 放っておけば必ず万引きをくり返す!

 娘は警察に相談。警察官は真剣に相談にのってくれた。
 娘は行政の福祉担当にも相談。母親が勝手に外出してしまった場合に備え、近隣の商店をまわって母親の病気のことを伝えた。
 なんという行動力、こんな娘はいねえよ! と私は感動した。

 万引きを防ぐ態勢が完全に整う前、一審判決から控訴審第1回の前にかけて、母親は3度万引きした。
 しかし、商店側はわかってくれて、事件にはならなかった。

 

 「情状に特に酌量すべきものがあるとき」は再度の執行猶予を付すことができる(刑法第25条第2項)。
 本件ほどに、特に酌量すべき事情があるケースは、滅多にないよ、そう思えた。

 

 ところが…。
 私は当時のメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」で2号にわたりレポートした。
 結局、日本の司法は、

犯行を病気のせいにしてはならない。
事情はどうあれ、やったことの責任は取ってもらう(行為責任主義)。

 この縛りから逃れられない、逃れたくない、しがみつきたい、ということのようだと傍聴席からはしみじみ感じる。
 そんな統治の仕方もあるのだろう。
 谷口恭さんによると、「世界FTD啓発週間」のこと、日本の報道は見当たらないそうだ。

 メルマガのあのレポート、どこかに再掲したいのだが…。

2023年8月21日 (月)

検察官が立証に失敗した、ただそれだけです!

 最近、すごいのを傍聴した。

 第1回は2022年9月20日。気になっていたのだが、たまたま1度も傍聴できず、今年8月某日、論告・弁論の期日を傍聴した。

 

 罪名は「窃盗」。被告人は身柄(拘置所)。40歳代だろうか。
 同種懲役前科3犯。うち2犯は本件と累犯関係。
 釣具店で、ルアーを大量万引きして懲役1年。出所して約4カ月後…。

 都内某所の有名釣具店でルアーを大量万引き。
 すぐに近所の、やはり有名な中古釣具店へ行き、転売。
 店内の監視カメラ(通称防犯カメラ)等々により犯罪事実は明らかなんだという。
 求刑は懲役2年6月。

 

 すごかったのは、弁護人による最終弁論だ。
 なんというか、犯罪事実は明らかなんだけども、法律手続き上、検察官は立証に失敗していると、法廷中央、証言台のところに出てきて、ようくとおる大声で、ろうろうと語るのだった。
 そんな弁護人を、被告人が被告人席で、ぽかーん、という感じで見上げているのが印象的だった。

 弁護人は最後をこう結んだ。

弁護人 「最後に…弁護人には今回の事件の歴史的な(そう聞こえた)事実に興味ありません。検察官が立証に失敗した、ただそれだけです!」

 判決期日を決めるに当たり、こんなやりとりがあった。

裁判官 「10月×日…」
弁護人 「遠すぎませんか!」
裁判官 「検討をする…」
弁護人 「いいじゃないですか、無罪判決書けばいい!」

 

 私は審理の期日を1回も傍聴してない。今回の期日を傍聴しただけ、での率直な印象を言わせてもらえば、こんな弁護人、見たことない、双極性障害みたいなやつの、ハイな時期なのでは? もしそうだとすれば、ローな時期に自殺へ傾かないか、心配だ…。

 まさか、そんな、外れだよね、と思いつつ、率直な印象を記録する、そのやり方なのだ、私の場合。
 審理が始まれば人定質問で被告人の年齢は分かるんだけども、入廷したときの見た目の年齢を、私は記録する、外れることもある、そゆこと。

 10月の判決を傍聴しよう。

2023年4月19日 (水)

「盗める!」と思ったらもう

Img_1201  「「万引きしたらネットで拡散」相次ぐ窃盗被害にSNSで対抗の店も 防犯カメラに一部始終 少額支払い男も…狙われる無人販売店」と4月14日付け北海道放送(YAHOO!ニュース)。

 コロナ禍で無人の販売店が増えた。
 無人ゆえ監視カメラ(俗称防犯カメラ)がしっかりある。
 でも盗みは絶えない。
 同種の窃盗事件が続々と報道される。

 

 主に刑事裁判を1万事件以上も傍聴してきた者として、これはもう防げないと思う。

 1万人に何人か、500人か200人か、そこは分からないけれども、

1、「盗める!」と思ったらもう、ほかのことは目に入らない。監視カメラは意識から消える。

2、店の被害、相手の痛みに対する想像力がない。自分が捕まるかもという想像力もない。

3、簡単に盗(と)れるのに盗らないのは損でしょ。べつに要らなくても取るでしょ(笑)。

 そういう人が、あるシチュエーションで頭の中がそうなってしまう人が、んもうこれは確実に存在する。
 続々と刑事裁判の法廷へ出てくる、被告人として。

 

 人格の偏りが度を超したモンスターも、ある割合で必ず社会に混じっている。
 そんなことも刑事裁判の傍聴からは学べる。今回、オチはないです。

 ←4月19日6時10分現在、週間INが502位。

2021年9月 7日 (火)

最高裁、約55分前に満員御礼とは!

20210907  今日は最高裁へ行ってきたよ。
 最高裁の開廷期日情報にある、「窃盗」の判決を傍聴に。

 たかが「窃盗」で最高裁がなんで判決期日をもうけるのか。
 最高裁が「傍聴人の皆様へ 最高裁判所広報課 窃盗被告事件について」という文書をアップしている。

 この被告人の、なんというか本件前の「窃盗」を私は傍聴している。メルマガ第2156号「骨格標本のような万引き病女性、22kg!」でレポートした。尋常じゃないのである。
 だからどうしても傍聴したかったのだ。

20210907-1  開廷は13時30分。私は東京地裁での傍聴が11時40分頃に終わり、「おいしい昼食のおにぎり(正しくはおにぎらず)を、じゃあ最高裁で食べようか」と12時04分に着いた。

 それから続々と傍聴人が来て、12時35分頃には傍聴席数に達した。
 約55分前に満員御礼とは、私は想像もしなかった。世の中どうなってるんだ!

 20年ほど前は、傍聴人なんてほとんどいなかった。
 法廷に入ると書記官から「被告人の方ですか?」と言われる、それは何度もあった。

 ところが今や…。
 そこんとこ、気象災害とあわせて破滅論的に語りたいんだが、また今度(笑)。

 ←9月7日22時20分現在、週間INが30で3位。

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