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カテゴリー「刑事/窃盗」の143件の記事

2023年10月 2日 (月)

FTD(Frontotemporal Dementia)と万引き

23080110_20231002124601
 「谷口恭の「その質問にホンネで答えます」」という無料のメールマガジンに私は登録している。毎号全部読むわけでは到底ないが。

 その「2023.10.2【Vol.124】」の「最近の医療情報」はこう始まっている。

9月24日(日)から10月1日(日)までの8日間が何の「週間」であったかをご存知でしょうか。答えは「世界FTD啓発週間」です。

 FTDとは「Frontotemporal Dementia」の略だそうだ。
 frontal lobe は前頭葉、temporal lobe は側頭葉、Dementiaは認知症。
 つまり前頭側頭型認知症。日本では昔「ピック病」と呼ばれた。

 谷口恭さんはこう書いている。

 FTDに罹患すると、たとえその人がつい最近まで仏のように穏やかな性格の持ち主で万人から愛される高い倫理観を持った人格者であったとしても、他人に見境なく失礼な暴言を吐き、まったく悪びれずに万引きや無銭飲食を繰り返し、ときには暴力や性暴力をふるうこともあります。「認知症」のひとつであるのにもかかわらず、記憶はさほど衰えず、よって家族や周囲の人たちもなかなか認知症だとは疑えません。

 

 以下、私もFTBと略称しよう、フロントテンポラル・ディメンシア。
 FTBなんてものを私が初めて知ったのは2015年10月、東京高裁の「窃盗」の控訴審でだった。
 万引きの執行猶予中にまた万引きをやり、実刑判決(懲役10月)を受け、どうか再度に執行猶予を、という事件だった。

 

 じつは同年7月、その被告人(50代か60歳前後ぐらいの女性)の、一審の判決を東京簡裁で私は傍聴していた。
 そのとき、FTBなんて話はぜんぜん出なかった。

 一審が終わる頃か、アメリカへ留学中(大学3年生)の娘が帰国した。
 その娘を、控訴審で尋問した。

 母親は明らかにおかしいと思った娘は、母親(保釈中)をクレプトマニア方面のクリニックへ連れて行った。
 どうも違う、認知症の疑いがあると言われ、そっちの専門医へ。
 すると、脳の側頭部に萎縮が見られ、FTBと診断された。

 放っておけば必ず万引きをくり返す!

 娘は警察に相談。警察官は真剣に相談にのってくれた。
 娘は行政の福祉担当にも相談。母親が勝手に外出してしまった場合に備え、近隣の商店をまわって母親の病気のことを伝えた。
 なんという行動力、こんな娘はいねえよ! と私は感動した。

 万引きを防ぐ態勢が完全に整う前、一審判決から控訴審第1回の前にかけて、母親は3度万引きした。
 しかし、商店側はわかってくれて、事件にはならなかった。

 

 「情状に特に酌量すべきものがあるとき」は再度の執行猶予を付すことができる(刑法第25条第2項)。
 本件ほどに、特に酌量すべき事情があるケースは、滅多にないよ、そう思えた。

 

 ところが…。
 私は当時のメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」で2号にわたりレポートした。
 結局、日本の司法は、

犯行を病気のせいにしてはならない。
事情はどうあれ、やったことの責任は取ってもらう(行為責任主義)。

 この縛りから逃れられない、逃れたくない、しがみつきたい、ということのようだと傍聴席からはしみじみ感じる。
 そんな統治の仕方もあるのだろう。
 谷口恭さんによると、「世界FTD啓発週間」のこと、日本の報道は見当たらないそうだ。

 メルマガのあのレポート、どこかに再掲したいのだが…。

 ←10月2日12時40分現在、週間INが402位。

2023年8月21日 (月)

検察官が立証に失敗した、ただそれだけです!

23080113  最近、すごいのを傍聴した。

 第1回は2022年9月20日。気になっていたのだが、たまたま1度も傍聴できず、今年8月某日、論告・弁論の期日を傍聴した。

※ 画像は、普段あんまり見ない角度からの、東京高地簡裁合同庁舎。窓がほぼない階がだいぶある。4~8階が、いわゆる法廷階だ。

 

 罪名は「窃盗」。被告人は身柄(拘置所)。40歳代だろうか。
 同種懲役前科3犯。うち2犯は本件と累犯関係。
 釣具店で、ルアーを大量万引きして懲役1年。出所して約4カ月後…。

 都内某所の有名釣具店でルアーを大量万引き。
 すぐに近所の、やはり有名な中古釣具店へ行き、転売。
 店内の監視カメラ(通称防犯カメラ)等々により犯罪事実は明らかなんだという。
 求刑は懲役2年6月。

 

 すごかったのは、弁護人による最終弁論だ。
 なんというか、犯罪事実は明らかなんだけども、法律手続き上、検察官は立証に失敗していると、法廷中央、証言台のところに出てきて、ようくとおる大声で、ろうろうと語るのだった。
 そんな弁護人を、被告人が被告人席で、ぽかーん、という感じで見上げているのが印象的だった。

 弁護人は最後をこう結んだ。

弁護人 「最後に…弁護人には今回の事件の歴史的な(そう聞こえた)事実に興味ありません。検察官が立証に失敗した、ただそれだけです!」

 判決期日を決めるに当たり、こんなやりとりがあった。

裁判官 「10月×日…」
弁護人 「遠すぎませんか!」
裁判官 「検討をする…」
弁護人 「いいじゃないですか、無罪判決書けばいい!」

 

 私は審理の期日を1回も傍聴してない。今回の期日を傍聴しただけ、での率直な印象を言わせてもらえば、こんな弁護人、見たことない、双極性障害みたいなやつの、ハイな時期なのでは? もしそうだとすれば、ローな時期に自殺へ傾かないか、心配だ…。

 まさか、そんな、外れだよね、と思いつつ、率直な印象を記録する、そのやり方なのだ、私の場合。
 審理が始まれば人定質問で被告人の年齢は分かるんだけども、入廷したときの見た目の年齢を、私は記録する、外れることもある、そゆこと。

 10月の判決を傍聴しよう。

 ←8月21日20時20分現在、週間INが602位。

2023年4月19日 (水)

「盗める!」と思ったらもう

Img_1201  「「万引きしたらネットで拡散」相次ぐ窃盗被害にSNSで対抗の店も 防犯カメラに一部始終 少額支払い男も…狙われる無人販売店」と4月14日付け北海道放送(YAHOO!ニュース)。

 コロナ禍で無人の販売店が増えた。
 無人ゆえ監視カメラ(俗称防犯カメラ)がしっかりある。
 でも盗みは絶えない。
 同種の窃盗事件が続々と報道される。

 

 主に刑事裁判を1万事件以上も傍聴してきた者として、これはもう防げないと思う。

 1万人に何人か、500人か200人か、そこは分からないけれども、

1、「盗める!」と思ったらもう、ほかのことは目に入らない。監視カメラは意識から消える。

2、店の被害、相手の痛みに対する想像力がない。自分が捕まるかもという想像力もない。

3、簡単に盗(と)れるのに盗らないのは損でしょ。べつに要らなくても取るでしょ(笑)。

 そういう人が、あるシチュエーションで頭の中がそうなってしまう人が、んもうこれは確実に存在する。
 続々と刑事裁判の法廷へ出てくる、被告人として。

 

 人格の偏りが度を超したモンスターも、ある割合で必ず社会に混じっている。
 そんなことも刑事裁判の傍聴からは学べる。今回、オチはないです。

 ←4月19日6時10分現在、週間INが502位。

2021年9月 7日 (火)

最高裁、約55分前に満員御礼とは!

20210907  今日は最高裁へ行ってきたよ。
 最高裁の開廷期日情報にある、「窃盗」の判決を傍聴に。

 たかが「窃盗」で最高裁がなんで判決期日をもうけるのか。
 最高裁が「傍聴人の皆様へ 最高裁判所広報課 窃盗被告事件について」という文書をアップしている。

 この被告人の、なんというか本件前の「窃盗」を私は傍聴している。メルマガ第2156号「骨格標本のような万引き病女性、22kg!」でレポートした。尋常じゃないのである。
 だからどうしても傍聴したかったのだ。

20210907-1  開廷は13時30分。私は東京地裁での傍聴が11時40分頃に終わり、「おいしい昼食のおにぎり(正しくはおにぎらず)を、じゃあ最高裁で食べようか」と12時04分に着いた。

 それから続々と傍聴人が来て、12時35分頃には傍聴席数に達した。
 約55分前に満員御礼とは、私は想像もしなかった。世の中どうなってるんだ!

 20年ほど前は、傍聴人なんてほとんどいなかった。
 法廷に入ると書記官から「被告人の方ですか?」と言われる、それは何度もあった。

 ところが今や…。
 そこんとこ、気象災害とあわせて破滅論的に語りたいんだが、また今度(笑)。

 ←9月7日22時20分現在、週間INが30で3位。

2020年10月19日 (月)

行ってきました前橋簡裁!

 10月19日(月)、午前6時頃に起きて原稿を仕上げ、送信した。1週間前に書き始めていた、ものすごーく長くなりそうな原稿を、削りに削るのに四苦八苦、ようやく「えいやっ」と完成させたのだ。

20101915  その原稿が「ベテラン警部補が速度データ偽造を繰り返して逮捕…レーザーパトカー「LSM-100」の実績を上げるため?」としていつアップされたのか、私は知らない。
 送信後、すぐに着替えて出かけ、前橋簡裁へ向かったのだ。

 前橋へ行くのは私は3度目だ。1度目と2度目は2015年、地裁のほうへ、大報道されたあの事件を傍聴に行ったのだ。メルマガ第1557号「オービス3回YouTubeに投稿事件、前編!」等でレポートした。

 1度目のときは早朝に自家用車で出かけ2時間ほどで着いた。今回は電車で出かけ、前橋駅から県庁前(裁判所のすぐ近く)までバスに乗った。3時間半ほどかかった。バス内で、少女漫画で使えそうなシチュエーションで素敵なご婦人と言葉を交わし、交流しちゃった(笑)。

 いやはや興味深い裁判を傍聴した。
 メルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」で、傍聴席のことも含めレポートするが、重要な部分は伏せて書こうと思う。伏せても十分に興味深い裁判だった。まさかこんな展開になるとは思わなかった。

 帰りは電車が遅れたり乗換の待ち時間が長かったり、帰宅は19時頃になってしまった。東京は冷たい雨が降っていた。 ※画像は前橋の裁判所。

 ←10月19日22時00分現在、週間INが90で3位~!

2020年6月15日 (月)

88歳爺ちゃんの万引き、統治者に都合の良い勘違いへ導く報道

 烏賀陽弘道さんのTweetで知った、昨年10月9日付けの徳島新聞の以下の記事を。■は私。

88歳無職の男、スーパーで卵1パックを盗み懲役1年の実刑/徳島地裁
 徳島地裁は8日、徳島市■■■■、無職の男(88)に窃盗罪で懲役1年(求刑同1年6月)の判決を下した。7月30日午後4時45分ごろ、徳島市下助任町1のスーパーで卵1パック(販売価格245円)を盗んだ。

 なんちゅう短報。読者にいったい何を伝えたいのだろう(笑)。
 裁判傍聴マニア、裁判傍聴師として以下コメントしてみよう。

200612c  万引きは、イッパツで懲役の実刑とはならない。
 微罪処分、起訴猶予をそれぞれ1回乃至複数回 → 略式で罰金20万円か30万円 → 罰金40万円か50万円 → 公判請求(正式な裁判への起訴)をされて執行猶予付き懲役刑 → 懲役刑の実刑、というふうに階段をのぼっていく、通常は。
 以下、万引き以外に前科・前歴がないものとして考えてみる。

 卵1パック(販売価格245円)の万引きで、初めての公判請求で求刑1年6月ってことは普通ない。
 本件は、執行猶予付きかどうか、懲役前科があったのだろう、とストレートには推認される。

 前刑の執行猶予が取り消されてダブルで服役、かつ初めての服役であれば、懲役10月か8月まで下げておかしくない。
 88歳なのに懲役1年までしか下げなかったってことは、服役前科があるのかも。 

 昔から手癖が悪くて万引きをくり返してきたなら、求刑1年6月、判決1年ってこたぁない。だいぶ高齢になってから万引きをくり返したのかなぁ、とまぁ大雑把には推認される。
 だとすれば、なぜ?

 加齢に伴う脳の萎縮により、自己コントロール能力に問題が生じた、のかもしれない。
 孤立、孤独の境遇で、万引きで得たドキドキ感、達成感が、衰えた脳に焼き付き、病みつきになってしまったのかもしれない。

 しかし、そういうことは考えず、外形的な事実(前科・前歴も含む)により量刑相場の階段をのぼらせる、それが刑事司法だ。

 そして記者クラブメディアにとって、前科・前歴はタブーらしい。
 何も知らない読者、裁判傍聴マニアじゃない読者は、「卵1パックで刑務所行きかぁ!」とだけ印象するだろう。
 でもそれは、国家の治安的には好ましい勘違いといえる。万引きを軽く考えている多くの国民らが、勘違いでびびってくれたら、素晴らしいじゃないか。
 上掲徳島新聞の記事は、その勘違いを導くためだけの報道、といえるんじゃないか。

 私はなぜそんなことに気づいたのか、じつはそのへんを今月下旬に発売となる『ラジオライフ』に書いたのだ、可搬式オービスにからむ話として。
 可搬式オービスや、「反則金払わず逮捕」と読める報道など、私はそっちが専門だから見破る。万引きについても分かる。だが、専門外のジャンルでは、私もだいぶ勘違いへ導かれてるんじゃなかろうか、という話。

 画像は、最近ドラッグストアで買った、いわば携帯式小型人力扇風機だ。198円+税。音はうるさいし両手がふさがるが、けっこう強力だ。この夏、だいぶ流行るかもねっ。

 今回の爺ちゃん、死なずに刑務所を出れば、また万引きをやるんじゃないかと私は見る。でも大丈夫、そのときはまた刑務所へぶち込みますから?

 ←6月15日21時50分現在、週間INが90で3位~!

2020年4月 5日 (日)

懲役4月、司法の良心!

 クレプトマニアの女性に対し家令和典裁判官が懲役4月の判決を言い渡したと、3月3日、東京地裁にいたマニア氏からメールあり。
 翌4日、朝日新聞が「独自」としてこう報じた。以下は一部だ。

保釈中の万引き、異例の減刑 窃盗症による心神耗弱認定
 万引き事件の保釈中に再び万引きをしたとして窃盗罪に問われた無職の女(53)に対し、東京地裁は3日、懲役4カ月(求刑懲役1年6カ月)の判決を言い渡した。家令和典裁判官は女が犯行時、重度の「窃盗症」(クレプトマニア)による心神耗弱状態にあったと認め、減刑する異例の判断を示した。

 マニア氏のメールには被告人氏名があった。私はぶっ飛んだね。
 メルマガ第2156号「骨格標本のような万引き病女性、22kg!」でレポートしたあの女性ではないか!
 勾留中に体重が22キロまで落ち、救急搬送されたのだそうだ。
 ヘアも、黒を基調とした服装もお洒落なのだが、顔は骸骨、体躯(たいく)は骨格標本というか。「ガリ痩せっ! よく生きてるねっ!」と私は傍聴ノートに書いた。

 万引きで執行猶予判決 → その執行猶予中に万引き → 懲役10月(求刑1年6月。※これを私は傍聴した) → 控訴 → 控訴棄却 → 上告。

 その上告中にまた万引きしたのが今回の事件なのだ。
 懲役4月は、異例どころか前代未聞のはず。私が知る限り、最高に下げても懲役8月だ。
 滅多に見られない、精一杯の「司法の良心」を、マニア氏と朝日新聞の記者、根津弥さんは目撃したわけだ。

2003311-2  朝日新聞の記事には赤い文字で「独自」とある。裁判所内で林大悟弁護士を見かけて傍聴してみたら、とかいうことかもしれない。
 なんであれ、記者発表を垂れ流すのではなく独自に取材し、記事を打つ。素晴らしい! 「弥」1文字はどう読むのだろう。わたるさん?

※ 新型コロナウイルス(COVID-19)でみなさん家飲みへ移行したのか、安い酎ハイが消えているスーパーもあった。
 画像は、ある日の私の家飲みの酒肴(というか夕食)だ。鰹のたたき、ほうれん草のごまかけ、鯖の竜田揚げ、白菜の漬け物、すき焼き煮、しめ鯖、わかめときうりの酢の物。鯖の味噌煮と鰯の甘辛煮。全部は食べきれず、少し翌日の酒肴になった。

 ←4月5日11時30分現在、週間INが60で4位~。

2020年1月21日 (火)

昭和のあのトップモデルがまた法廷へ出てきた!

 朝一で、普段は裁判所へ行く時刻に、今日は都心の眼科医へ行った。なぜ行き、どんな診断を受けたか、その話は、申し訳ない、メルマガの編集後記に書く。近々眼科へ行くとメルマガのほうで言っていたので。

 午後、裁判所(東京高地簡裁合同庁舎)へ行った。
 この日傍聴予定だった2件がなんと2件とも期日がなかった。がっくり~!

 だがっ! おかげでとんでもない事件を見つけ、傍聴することができた。
 昭和の時代、テレビでカラーのCMをやり始めた時代にトップモデルだった女性の事件だ。
 しかし女性はその後、私が言うところの万引き病、窃盗症に罹患し、カネは十二分にあるのに刑務所を出たり入ったり。
 今回、「常習累犯窃盗」の被告人として開廷表に氏名を見つけたのだ!

 その女性の過去の万引き「窃盗」を、メルマガ第853号、第1264号でレポートしてきた。
 当時は、さすが昔のトップモデル! という面影があったのだが、今回はぜんぜん違っていた。うわぁ、なんてこった! という話はメルマガ次号、第2360号か以降の号でレポートさせてもらいたい。

 この日、ほかに興味深いことがあった。
 ちょっと時間が空いたので、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反」の新件を傍聴しようと、早々並んで傍聴席を確保したのね。
 だが、現れた被告人はヤクザ系に見えた。こりゃあ、客引きか?
 私はしばし考え、出て、別の法廷へ急いだ。
 じつは迷惑条例違反は、けっこうディープなところがある。客引きとは限らないかも。失敗したか? と後悔しつつ別の法廷へ急いだ。

 別の法廷で、「道路交通道法違反」の新件を傍聴した。ななっ、なんと! あっちを抜けたおかげでこんなのに当たるとは!

Dsc_0748-2  そうしてまた警察庁へ寄り…。
 画像は警察庁が入る合同庁舎2号館。そこに秘密の喫煙所があることを発見! 私は禁煙中なのだが、秘密の場所へは行かねばならないじゃないか、ねぇ。喫煙者のふりをして一服しました~(笑)。

 さぁメルマガ次号を書かねば。じゃねっ。

 ←1月21日21時30分現在、週間INが90で3~。

2019年1月27日 (日)

万引き裁判、まさかの判決、高知にすごい男がおったぜよ!

 原稿書きに疲れてなにげにTwitterを見てたら、高橋ユキさんのtweetに「ぬわにいぃぃ~~~っ!!!」となった。以下は1月24日付け朝日新聞、の一部。

窃盗症を理由に「常習性」認めず 「異例」の地裁判決
 万引きを繰り返したとして常習累犯窃盗罪に問われた高知市の無職女性(33)の判決公判が24日、高知地裁であった。山田裕文裁判長は窃盗症(クレプトマニア)を理由に「常習性」を認めず、窃盗罪として懲役1年2カ月(求刑懲役4年)の判決を言い渡した。
 女性は2016年、高知市内のスーパーマーケットなどで歯ブラシなど日用品計19点を盗んだ上、過去にも窃盗の前科があったとして、常習累犯窃盗罪で翌年起訴された。
 判決は複数の診断書などから女性が当時、衝動的に窃盗を繰り返す窃盗症だったと認定。繰り返された万引きは窃盗症による行動制御能力の低下が原因で、性格や意思などを要件とする「常習性」には当たらないとして、より法定刑の軽い窃盗罪を適用した。

 この判決がどんだけすげぇか、よろしい、クレプトマニア、万引き病の裁判を何年も注目し興奮しメルマガでレポートし続けてきた裁判傍聴師、裁判傍聴ジャーナリストの私が簡単に説明しましょう。

1901242_2 まず前提として、「窃盗」と「常習累犯窃盗」の違い。
 「窃盗」で6月以上の懲役前科が10年間に3回(その数え方は省略)以上あるのにまたやると、事件名が「窃盗」ではなく「常習累犯窃盗」とされる。「窃盗」の法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金だが、「常習累犯窃盗」は「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」により3年以上の懲役とされる。
 10年以下より軽い? とんでもない。
 3年以上ってことは罰金刑はもちろん3年未満の懲役刑に処されることもないのだ。んで懲役刑の上限は20年。格段に重くなるのである。ま、「常習累犯窃盗」になるのが初めてなら酌量減軽により3年未満に下げられるのが普通だけども。

 それでだ、すげぇのは「窃盗症だったと認定」ってとこだ。
 うざいかもしれないが、ここでも前提を説明しとこう。
 窃盗症、クレプトマニア、私がいうところの万引き病、とりあえず窃盗症で統一しようか。どこからが窃盗症か、線引きは困難かと私は思う。
 ただ、窃盗症といえる状態は定義できる。
3190124_2
 窃盗症者は、どんだけ固く「万引きはもう二度としません」と誓っても、今度やれば実刑、刑務所行き、前刑の執行猶予は取り消される、ここまで支えてくれた親、子ども、夫等を激しく裏切ることになる、愛想を尽かされることになると重々承知なのに、また財布には何万円もあるのに、人によっては貯金が何千万円もあったり家賃収入で悠々自適だったりするのに、たかが数百円のものを万引きしてしまうのである。それも、いちおうキョロキョロはするのだけれど、コンビニやスーパーに付きものの監視カメラ(通称防犯カメラ)をまったく気にせず。

 昔、『うしろの百太郎』『恐怖新聞』という漫画があった。低級動物霊に憑依され狂ったように人を殺傷したり自殺したり、という話が出てきた。窃盗症者は、尻尾が9本、口が耳まで裂けた恐ろしい低級動物霊に取り憑かれて万引き、そうイメージするとしっくりくる。

 私が主に東京簡裁、東京地裁、東京高裁で何年も注目して傍聴してきたところによれば、検察官も裁判官も窃盗症を絶対に認めない。
 万引きの裁判の役割は、法廷へ出てきた被告人(マスコミ報道では被告)に前例通りの刑を貸すこと、量刑相場の階段をのぼらせることにほかならない。世間では「裁判は真実を明らかにする場」とか根拠なく思われているようだが、とんでもない。

 窃盗症を認めないための切り札がある。それは、アメリカの診断基準、DSM-5だ。窃盗症の診断基準としてAからEまであり、Aにこう掲げられている。

 個人的に用いるためでもなく、またはその金銭的価値のためでもなく、物を盗ろうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される。

 そもそもコンビニやスーパーに「金銭的価値」のないものは陳列されていない。歯ブラシは、たとえ歯がなくてもお掃除に用いたりできる。
 この部分を拾って検察官、裁判官は、「DSM-5に合致しないから窃盗症ではない」とするのである。「物を盗ろうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される」の部分は捨てるのである。そういう裁判を私はもうどんだけ傍聴してきたか。

 ところが今回、高知地裁の山田裕文裁判長は、窃盗症を認めた! しかもっ、検察官(いわば日々の裁判の同僚)が「常習累犯窃盗」で起訴しているのに、認定罪名を「窃盗」としたらしい。あり得ない、とんでもないことだ!

 求刑が懲役4年ってことは、この33歳の女性は「常習累犯窃盗」で起訴されるのは初めてじゃなかったはず。33歳でそこまで量刑相場の階段をのぼるとは、すさまじい万引きぶり、すさまじい窃盗症だったのだろう。新聞的には書けないだろうけど、いわゆる精神障害、知的障害がだいぶ重いのかも。

 窃盗症と認定するには医師の診断があったはず。証人出廷してすごい証言をしたのかも。誰?
 思い浮かぶのは条件反射制御法の平井愼二医師だ。平井さんの証言を私は何度か傍聴してきた。んまぁ、びっくりしますょ。

 朝日新聞の記事の先を読むと、弁護人はなんと林大悟弁護士だという。林さんは窃盗症の裁判をよくやっている。マラソンの原裕美子さんの弁護人も林さんだ。
 そういえば、万引きGメンの伊東ゆうさんから、香川大学が万引き問題に深く取り組んでいると聞いたっけ。そのへんも関係しているのか。

1901243_2 山田裕文裁判長は、途中退官の前後、長く東京高裁で陪席裁判官をやっていた。裁判長は、矢村宏さん、角田正紀さん、藤井敏明さんと代わった。そうして高知地裁の部総括判事へ移動したのだ。
 今回のような判決を書いたら、同僚である検察官が検察組織につるし上げられることは承知のはず。検察組織が控訴し、高松高裁はひっくり返すだろうと普通は想像できる。それでも書いた! 覚悟を決めているのだろう。高知にすごい男がおったぜよ、となるのか。

 いまネット検索してみると、この判決の報道は朝日新聞のこの記事しかないようだ。
 司法記者クラブには半分傍聴マニアのような人がどうやらおいでだ。この記事は、半分マニアな記者氏が自分の興味で傍聴して、だったのかな。頼もしい!
 東京へおいでの節はどうぞ私にご連絡ください、銀座か赤羽か大島(おおじま、都営新宿線)のせんべろでマニア談義をやりましょう! 楽しみだな~。

※画像は赤羽のいこい。上の画像の色の濃いのは身欠きニシンだ。隣は山芋とネギのぬた。ほかコハダにげそわさ。熱燗の酒肴にぴったりだ。いずれもだいたい180~200円。

 ←1月27日1時20分現在、週間INが120で3位~。

2018年7月25日 (水)

万引き病、人間脳と動物脳

180724 万引きは絶対しない! したくない!
 どんなに固くそう誓っても、いわば低級動物霊に憑依されたかのように、まっしぐらに万引きしてしまう人たちがいる。摂食障害(食べ吐き)の女性に多いようだ。
 窃盗症、クレプトマニア、私は万引き病と呼んでいる。

 その病気のメカニズムを解明し、治療法を見つけ、実際に多くの患者を治療してきた医師がいる。
 ある万引き裁判にその医師が証人出廷した。私は傍聴し、メルマガ第1906号「「DSM-5は間違っています」ときっぱり!」、第1907号「天敵の多いジャングルに育った小動物の脳」でレポートした。
 その一部を今回ここに、少し加筆等したうえで転載したい。

 被告人は小柄で若めの女性。既婚、1歳の子あり。重度の摂食障害(食べ吐き)。万引きで執行猶予中の万引き、量刑相場的には実刑間違いなしの事件だ。

 私は非常階段をワンフロア下り、10時から東京地裁722号法廷(52席、齊藤啓昭裁判官)で「窃盗」の審理。

 検察官から被告人質問の続きが少し行われた。
 被告人は赤城高原ホスピタルに入院していたことがあり、退院後はグループミーティングに通い、万引きは収まってたのだという。
 ところが、かなり遠方の実家へ帰って再び万引きが始まった! うわぁ、実家の親との関係がすべての原因なんだな?
 被告人はこんな凄まじいことを言うのだった。

被告人 「万引き衝動と過食嘔吐の生活になってから、1人の時間を万引きと過食嘔吐に使おうという考えになってしまって」

 東京へ戻っても万引きは止まらず、ついにまた捕まり、それから「今の病院」へ通い始めたのだという。

 10時06分、証人尋問が始まった。
 スリム系の、メガネの年配男性だ。良い色合いの夏のスーツ、あれは高いでしょ。
 弁護人は証人を「ヒライ先生」と呼んだ。独立行政法人国立病院機構下総精神医療センターの薬物依存治療部長で条件反射制御法学会の会長、平井愼二医師なのだ。

弁護人 「■■さん(被告人)を、病的窃盗、摂食障害と診断されましたね」
証人   「はい」
弁護人 「まず、病的窃盗、食べ吐きのメカニズムを…」
証人   「では図をご覧下さい」

 壁の大型モニターに、弁護人のノートパソコンを通じて図が映し出された。
 脳の断面の略図で、中心部が青色、外側がオレンジ色になってる。

証人   「真ん中の青いところが第1信号系、犬も猿も持っています。オレンジの外側、第2信号系、考える脳です」

 そして…。

証人   「第1信号系、全く考えません! 刺激が入ると、出る、反応は1つです。動物は、生まれた瞬間から、守る、食べる、セックスする…全く考えずに同じ行動をしてしまうシステム…このシステムが動物を適応させ、進化させてきました…」

 ほ~、なるほど。

証人   「第2信号系は、人だけが持つ、思考する脳です。思考して動作をつかさどる、動作だけをつかさどります。自律神経はつかさどりません。動作を引っ張る…未来のための行動をつくる、50年とか未来のために働こうとする、考える、巧妙な脳です…2つの脳をしっかり持っている。通常の精神科医師とか法曹は、たった1つの脳で考えて行動していると思っていますが、それは大間違いです…2つの脳はときに協調して、一方が優勢になり、一方が抑制され、人の行動がつくられる…」

 大型モニターの図は2枚目になった。

証人   「38億年前に生物が…10億年前に動物が生まれた…動物は、防御、摂食、生殖、この3つを第1信号系がつかさどります…(図を示し)刺激が入ると、短い行動の神経群がドミノのようにつながって、一連の行動を起こします…成功すれば定着させる効果を生む、これを報酬というんですが…10億年前から我々の行動はパターン化されていた…男は女の裸を見ると考えずに興奮してしまう、逆らえないのです。刺激がなければ静かです」

 弁護人は、今の話をまとめようとした。まとめて「こう聞いてよろしいですね?」とか確認する、いつものパターンだ。
 しかし裁判官は、理論的なところは論文で分かるので「できるだけ被告人に即したところを…」と仕切った。

弁護人 「では■■さんの病的窃盗…DSM-5の診断基準の1つ、個人的に用いるものでなく金銭的価値ではなく…この要件に反するから病的窃盗じゃないと…」

 そうなのである! アメリカの診断基準というかマニュアルでは、万引きしたのが無用で無価値なものでなければ、病的とは認めないである。
 検察官は喜々としてこれを引用し、どう見ても明らかに病気だろ、と思える者を刑務所へ送るのである。有能な警察官はそこが分かってるから、資産家のおばさんが財布に数万円ありながら数百円のものを万引きすると「老後を考えて少しでも節約したかった」とか上手に調書を取るのである。

 そういうやり方に、私はいっつもムカついてた。平井医師は、よく通る低い声で、ゆっくりときっぱり言うのだった。

証人   「DSM-5は間違っています。私のように言う精神科医はけっこういます」
弁護人 「全く自分のために用いない人はいますか?」
証人   「ゼロ%です。全くいません! 食べるものを盗る人はみんな食べています」

 私はスカッとしたね~(笑)。
 さぁ、そして、被告人の摂食障害、万引きは、脳のどのようなシステムにより生じたのか、どうヤメさせられるのか、ま~、私は今回凄いのを傍聴したょ、興奮したょ。
 ちょと長くなりそうなので、申し訳ない、次号へ続くっ!

 次号とは第1907号だ。万引き病の女性が万引きをするとき、第2次信号系(人間脳)はすっ飛び、第1次信号系(動物脳)だけで動いてしまうのだという。
 人間脳の智恵がはたらかず、動物脳で動くから、いちおうはキョロキョロ警戒するものの天井の監視カメラは気にせず、簡単に捕まってしまう、そういうことなのかも。低級動物霊に憑依されたかに感じられるのも、そういうことなのかも。
 万引きGメンの伊東ゆうさんと話したなかに、可愛い女性なのに万引きの瞬間はいやらしい悪人顔になる、という趣旨の部分があったと記憶するが、それは動物脳に支配された動物顔なのかも。

 平井医師のこの本は東京地裁の地下の書店にあるかと。

 画像は、農家の直売所で買った茄子。長いのは3本で100円ぽっきり。丸々太いのも3本で100円ぽっきり。これを切ってフライパンで焼き、おろし生姜と醤油で食べる、ほぼ毎日食べている。旨いのだよぅ。ここで一曲おかけしましょう、「恋は茄子色」。あなたはわたしのポリフェノール、傷だらけの心にナスニンが多く含まれるの♪ しぇーっ(笑)。

 ←7月25日14時10分現在、週間INが140で2位~。

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